(2015.1.18)

 

 


今回は「アメリカ感動の旅」の後編(最終回)として、グランドキャニオン周辺の様子をご覧いただきます。


名残が尽きないモニュメントバレーを後にグランドキャニオンへ向かいます。昨日、ペイジから来たときに通ったUS-160を途中まで戻る格好になりますが、今日はさらにそのまま西進します。
途中、チューバシティ(Tuba City)という町を抜けると、間もなく小さな峠(のような場所)があって、US-160は雄大なSカーブを描いて下っていきます。

とくに名のある観光地でもないので、ガイドブックやネットをさらっても何の情報も見つかりませんが、あまりに胸の空くような景観だったので、近くの台地に乗り入れてすこし撮りました。

正面に見えるのは、この辺りに特有の「ペインティッドデザート」(Painted Desert)という地形で、鉱物を含んだカラフルな地層が幾重にも積層している様子をくっきりと見ることができます。左手がモニュメントバレー方面、右手がグランドキャニオン方面です。

ペインティッドデザートを下ってくるとUS-89に突き当たります。ここはT字路になっていて、右へ行けばグランドキャニオンの北縁(North Rim)へ、左へ行けば南縁(South Rim)へ向かいます。
グランドキャニオンは、コロラド川によって刻まれた長さ446km、幅6km〜29kmに及ぶ文字通り「大渓谷」で、東西に横たわる渓谷の南北両岸に観光ポイントがあって、それぞれノースリム(北縁)とサウスリム(南縁)と呼ばれています。
そのうち、観光の中心となるのはサウスリムで、園内外の交通の便や、宿泊施設、ショップなどが充実していて、大部分の観光客が訪れます。一方のノースリムは、標高が約2,500mとサウスリムより500mほど高いため、冬期(10月中旬〜翌年5月中旬)は積雪により閉鎖されます。

私たちはUS-89からAZ-64を経て公園東口から入園しました。モニュメントバレーから200マイル(約320km)ほど走ってきたことになりますが、公園東口からビジターセンターがある公園中心部までさらに約40km(!)もあって、「園内」という次元を超えた途方もない広さに驚きます。

上(↑)の写真はGoogle Earthから拝借したもので、サウスリムの中心部を北東方向から南西方向へ向けて見下ろしたところです。この辺りで標高は2,150m、断崖の深さは約1,200mあります。

断崖の縁に沿って遊歩道(リムトレイル)が通じていて、要所要所に展望ポイントが設けられています。ヤキポイント、マーザーポイント、ヤバパイポイント、ホピポイントなどがそれらで、そのほかにも遊歩道の随所から雄大な景観をほしいままにすることができます。

ちなみに、グランドキャニオンは1979(昭和54)年にユネスコの世界自然遺産に登録されています。アメリカにはこのほかにも21の世界遺産がありますが、それを謳った案内や看板の類はほとんど見かけませんでした。我が国では、毎年、世界遺産の登録をめぐって大騒ぎになりますが、世界に冠たる国立公園システムを自認するアメリカとしては、世界遺産はあまり眼中にないように見受けました。

夕暮れも迫っていたので、先ずはヤバパイポイントですこし撮ります。
グランドキャニオンには2泊3日滞在したので、このあと、2日目の夕景と3日目の夜明けも撮影を予定していたので、今日のところはロケハンを兼ねて「小手調べ」(笑)といったところです。
2日目の午前中はビジターセンターの周辺、ヤバパイポイントやマーザーポイントを中心に撮りました。
遊歩道は車椅子でも散策できるくらいシッカリと整備されていて、沿道の至るところから大渓谷を眺めることができます。
いくつかの展望ポイントには頑丈な手すりが設置されていますが、そのほかは手すりやフェンスといった安全設備はなく、例によって「ありのままで〜」(♪Let It GoLet It Go!)なので、足元には十分気をつける必要があります。

コロラド川の河床まで下るブライトエンジェル・トレイルがうっすらと見えています。右(→)の写真にトレースしておいたので参照されてください。

下り6時間、上り10時間を要する一泊二日の「地獄のトレイル」ですが、途中に何箇所か折返しポイントがあるので、体力と日程にあわせて「雰囲気」だけ体験してみることもできるようです。

上(↑)の写真は、ヤバパイポイントの近くにある展望台を兼ねた博物館で、ガラス越しに180度のパノラマを楽しむことができます。

ここはマーザーポイントで、足場が良く(ビジターセンターの至近)、手すりなどの安全設備も完備しているため、ツアーなどで立ち寄るポイントです。
マーザーポイントというのは、初代の米国立公園局長、Stephen T. Matherに因んで名づけられたもので、「マザーポイント」(Mother Point)ではありません。

午後から遊覧飛行で念願の「空撮」を行いました。

飛行場は公園から4マイルほど南にあります。
この空港はB737などの中型ジェットも離着陸できる9,000フィート(約2,700m)の滑走路を有し、単発機4機、双発機4機、ヘリコプター30機が常駐する観光地にしては本格的な空港で、ラスベガスからのツアー便が毎日乗り入れているほか、現地発着の遊覧飛行を3社(固定翼1社、ヘリコプター2社)が運航しています。

管理人はScenic Airlines(固定翼)の遊覧飛行に参加しました。
機材はセスナ208BグランドキャラバンEXという10人乗りの中型機で、単発ながらP&W社製のターボプロップエンジン(867hp)を搭載し、最高速度185ノット(343km)、航続距離912海里(1,689km)の能力があります。
また、最新の電子航法機器(Avionics)を装備し、遊覧飛行といいながら、離着陸以外は自動操縦のため、パイロットは退屈そうでした(笑)。

グランドキャニオンの遊覧飛行も、かつては各機が自由気儘に飛んでいたようですが、(当然ながら)事故も発生したことから、現在では厳格な飛行ルートが定められていて、勝手にコースから外れることはできません。
固定翼のコースは概ね上(↑)の地図の通りで、今回は反時計回りに周回しましたが、風向きによっては時計回りに飛行するのかも知れません(←未確認)。
サウスリムの上空は飛行禁止になっているため、渓谷上空を航過するのは主にサウスリムの東部と、リトルコロラド川との合流部ということになります。

約45分の飛行時間もあっという間に過ぎて空港へ帰投します。

2日目の夕景はサウスリムの西部、ホピポイントで撮ることにしました。一般に、夕景は西部、日の出は東部の展望ポイントが狙い目のようです。

3日目は早起きをして日の出を撮りました。足元の暗いうちから待機するので、安全設備の整ったマーザーポイントにしましたが、やはりたくさんの人が詰めかけていました。ちなみに、この日の日の出時刻は6:50(山岳部標準時)でした。

グランドキャニオンも夕景と夜明けが感動的ですが、あまりにもいろんなところで紹介されて見聞きしていることと、「予習」(事前の情報収集)のし過ぎ(笑)などで、どうしても既視感(deja vu)が拭いきれず、現場での臨場感が減殺されてしまったことは否めません。
また、中編でご覧いただいたモニュメントバレーやグースネック州立公園といった「とんでもないもの」を先に見てしまったことも、感動を希釈した一因かと思われますが、一方では、風景に圧倒されて浮き足立つことなく、落ち着いてカメラを構えることができたともいえます。

これにてグランドキャニオンを切り上げて、ゴールのラスベガスへ向かいますが、「帰りがけの駄賃」として、「ルート66」の旧道をすこし覗いてみることにしました。
US-66はシカゴからカリフォルニア州のサンタモニカを結ぶ2,448マイル(約4,000km)の幹線道路で、大陸横断の大動脈としてアメリカの成長と繁栄を支えてきました。

60年代にはアメリカの人気テレビ番組「ルート66」が日本でも放映され、最近では映画「カーズ」(2006年、ディズニー・ピクサー)の舞台にもなったことから、我が国でも何かと馴染みの深い名前です。

その後は、インターステート(州間高速道路)の整備により1985(昭和60)年に廃線となりましたが、沿道市民の支援により一部の区間が「ヒストリックルート66(
Historic Route 66)」として残り、景観道路(National Scenic Byway)に指定されています。

グランドキャニオンからAZ-64を60マイル(約100km)ほど南下してくるとウィリアムズ(Williams)という町にぶつかります。この辺りも、かつてはルート66が通じていたところで、「古き良きアメリカ」をテーマに町おこしをしています。
ウィリアムズからは観光鉄道がグランドキャニオンへ通じていて、毎日運行(所要約2時間)されています。また、ウィリアムズの郊外にはアムトラックの接続駅があり、ロサンゼルスから夜行列車(Southwest-Chief)でやって来て、ウィリアムズで観光鉄道に乗り換えてグランドキャニオンへ向かう、という行程も時間があれば興味深いと思います。

(C) Williams GC Newspapers, Inc.

(C) Williams GC Newspapers, Inc.
ウィリアムズの西にセリグマン(Seligman)という町があり、ガイドブックによれば、さらに往時の面影を残しているとのことで立ち寄ってみましたが、(失礼ながら)どう見てもガラクタを無造作に羅列しただけで、早々に退散しました。
ちなみに、この小屋(↑)はトイレです…。

セリグマンからはルート66旧道に並行するI-40をキングマンまで西進し、そこからUS-93をゴールのラスベガスへ向けてひた走りました。

US-93はフーバーダムから南下するコロラド川の左岸をひたすら北上する路線で、途中に35マイル(約56km)の直線区間があって、ほぼ30分間ずっとハンドルを切らない(!)という体験をしました。アメリカの最長直線道路がどこにあるのか知りませんが、キーウエスト(フロリダ)の「セブンマイルブリッジ」でも7マイルですから、35マイルというのはかなり上位にランクインすると思われます。

ちなみに、我が国の最長直線道路は、国道12号の北海道美唄市〜滝川市の29.2km(約18マイル)です。
グランドキャニオンから300マイル弱(約480km)走って、1週間ぶりにラスベガスへ帰ってきました。
折角なので、すこし中心街の夜景を撮りましたが、有名なベラージオホテル(下の写真)の噴水ショーは、あいにく強風のため中止でした。


以上で、グランドサークルの周遊は終わりましたが、最後にいくつか気がついたことを書き足してお仕舞いにします。
本編でも書きましたが、グランドサークルは公共交通機関といったものがない地域なので、レンタカーで回るに限ります。管理人も出発前は不安でしたが、半日も運転していると右側通行に慣れますし、マイル表記もつどkmに換算していたのが、気がつけばマイルのまま認識していました。

総走行距離は1,063マイル(約1,700km)になりましたが、日程の関係でいくつかの場所を割愛したため、グランドサークルの周遊距離としては平均以下だったと思います。一日あたりの走行距離については、観光とのバランスを考えると400マイル以内(できれば300マイル以内)に収めないと、一日中ドライブばかりということになります。

ガイドブックによれば、夏場がハイシーズンのように書いてありますが、猛暑と混雑を考えると、シーズン終盤の10月というのも意外に適季かも知れません。ただし、11月に入ってしまうと、グランドキャニオンのように標高の高い場所は、降雪に見舞われることもあるようなので、控えた方が良いと思います。

ロングドライブになる区間もあるため、レンタカーは一回り大きいサイズにすればよかったと思います。ガソリンは合計で25.2ガロン(約95リットル)給油しましたが、1ガロン約3.5ドル(10月下旬実勢)と安いので気になりません。
日米のガソリン代を比較してみましたが、右(→)の図の通りガソリン税さえなければ日米ほとんど等価ということになります。

尤も、原料の「原油」は国際商品なので、よほど為替が歪まない限り、ガソリン代が内外で等価というのは自明ですが…。

ちなみに、日本のガソリン税は既に一般財源化されて課税根拠が消滅しているだけに、今更ながら釈然としないものがあります。
現地の周遊をご検討中で詳しい情報がご入用の方は、管理人までご遠慮なくご照会ください。お役に立てるかも知れません。


以上、序章から4回にわたりご覧いただきました「アメリカ感動の旅」を終わります。

長々とご覧いただき有り難うございました。