(2015.1.1)

 

 


新年明けましておめでとうございます。
本年も引き続きお立ち寄りのうえご高覧を願い上げます。

今回は「アメリカ感動の旅」の中編として、モニュメントバレー周辺の様子をご覧いただきます。
前編でご覧いただいたアンテロープキャニオンや、ホースシューベンドがあったペイジから、AZ-98を一路東進します。ちなみに、「AZ」など州の略号がついているのは「州道」で、AZ-98は「アリゾナ州道98号」ということになりますが、日本の「県道」よりはずっと長いので、かつての「二級国道」(3桁の路線番号)といったところです。
このあたりまでやって来ると、交通量もぐっと疎らになって、自車のほかには前にも後にも車はなく、ひたすら逃げ水だけを追いかけてゆく、といった念願の体験もすることができました。

ペイジから約120マイル(約200km)、2.5時間ほど走ってくると、前方にモニュメントバレーの特徴的な景観が現れてきますが、後ほどゆっくりご覧いただくことにして、ひとまずUS-163(一般国道163号)をそのまま東進します。

モニュメントバレーを通り越して、30マイル(約50km)ほど行ったところに、メキシカンハットという小さな町があります。近くには町の名の由来にもなったソンブレロ(Sombrero)の形をした奇岩があり異彩を放っています。

メキシカンハットを過ぎると町らしい町もなくなり、ところどころに自生する低木以外は、赤茶けた荒野にビュートが孤塁のように点在し、見上げれば雲ひとつない青空と猛烈に眩しい太陽…、といったアメリカ西部の「原風景」がとこまでも続いています。

US-163から州道(UT-261 → UT-316)を分け入った終端に「グースネック州立公園」があります。ここはユタ州の「州立」公園ですが、ゲートもなければビジターセンターもなく、プレハブ小屋のような簡易トイレがあるだけです。

ここは眼下にサンファン川(San Juan River)を見下ろす崖の上で、この辺りで川が「ガチョウの首」(Gooseneck)のように大きく湾曲していることからその名前がついたのは、前編でご覧いただいたホースシューベンド(Horseshoe Bend)と同じ理屈です。

ちなみに、サンファン川は4,000m級の山々が連なるコロラド州のサンファン山地に源を発し、グレンキャニオン・ダムのパウエル湖(前編ご参照)でコロラド川に合流します。

河床からの高さも300mほどで、ホースシューベンドと同じですが、大きなナイフでザックリと削ったような岩相や、一木一草も見当たらない荒涼とした眺めは、訪れる人が疎らなこともあって、雲ひとつない晴天なのに、どこか蕭条とした雰囲気さえ感じられる不思議な景観です。

今回の旅行では、あちこちで想像をはるかに超える絶景に遭遇しましたが、とはいえ、それらはテレビやガイドブックなどで見たことがある風景で、実物を目の前にした感動が想像を大きく上回っていたということで、「想像外」のものではありませんでした。

しかし、ここの風景は今まで(あまり)紹介されたことがないため、管理人にとってはかつて見たどんな範疇にも属さない景色で、およそ「地球上の景観とは思えない…」というのが正直な実感でした。

さらに驚くのは、ホースシューベンドの場合は川が目の前で180度方向転換をしているだけですが、ここはそれが何と3つも連続しているのです。

要するに、ギリシア文字のΩ(オメガ)を交互に3個連続した形に大蛇行しているのです。この結果、直線距離なら2kmのところ、川の延長は実に9kmに及んでいます。

想像を絶する奇観に戸惑うばかりで、見渡す限り人工物が何もない巨大な風景に視点が定まらず、「空間酔い」(という言葉があるかどうか知りませんが…)のような気分に陥りました。

現場は崖の上のだだっ広い場所のため、なかなか全体を俯瞰できるような高台もなく、かつカメラのフレームに収まりきるはずもなく、結局、5枚の写真を合成したのが上(↑)の写真です。川は画面の左奥から流れてきて、目の前で3回方向転換をして、右奥へ流れていきます。

これでもまだよく分からないかと思うので、最後の手段として(笑)、
Google Earth(下の写真)の出馬を仰ぐことにします(注釈は管理人付記)。


このほかにも、この辺り一帯は、ツアーでは滅多に立ち寄らない奇景/珍景の宝庫で、「予習」をシッカリして行かないと、通り過ぎて見逃してしまうポイントがたくさんあります。

上(↑)の写真もそうした"must-see"のひとつで、通称「フォレストガンプポイント」といわれている場所です。

映画「フォレストガンプ」(1994年、パラマウント映画)で、主人公(トム・ハンクス)が振り返って走るのをやめるポイントで、メキシカンハットの町からモニュメントバレーへ向かって約10マイル(約16km)、10分ほど西進した所です。

モニュメントバレーへ向かって、道路(US-163)が一直線にダイブする光景は、今回の旅行の中で最も印象に残った絶景の一つです。

「フォレストガンプポイント」などという看板があるわけでもなく、モニュメントバレーから東進してくる場合は、気がつかないで行き過ぎてしまいがちなので、路肩に打たれたマイルマーカー(右の写真ご参照)を目印にします。

「13マイルポイント」とも通称されていて、若干ですが駐車スペースもあります。モニュメントバレーから約20分です。

ただし、ここは午後には逆光になってしまうため、午前中がお薦めです。上(↑)の写真も翌朝に再訪して撮り直したものですが、個人旅行の場合はこうした自由が臨機に利くのが魅力です。

さて、日も傾きかけてきたので、本題のモニュメントバレーへ急ぐことにしますが、その途中の沿道にもこうした(↑↓)奇岩が続々と現れて、そのつど車を止めて撮影するため、なかなか前へ進めません(笑)。
モニュメントバレーというのは、アリゾナ州の北東部とユタ州の南東部にまたがる景勝地で、荒涼とした大地がどこまでも拡がるなかに、風化や浸食によってできたメサ(卓状大地)やビュート(残丘)が点在し、あたかもモニュメント(記念碑や遺跡)が並んでいるように見えることからその名がついたといわれています。(Wikipediaより)

ナバホ族の居留区域にあって、「モニュメントバレー・ナバホ・トライバル・パーク (
Monument Valley Navajo Tribal Park)」というのが正式名称で、連邦政府の管理からは独立して、ナバホ族により運営されています。

したがって、国立公園ではないので、「国立公園共通年間パス(US$80/1台)」は使えません。ちなみに、モニュメントバレーの入園料は乗用車1台(4人まで)US$20ですが、国立公園(1週間有効)と違って、有効期間は当日限りなので、園外に宿泊して翌日再訪する場合には、あらためて買い直す必要があります。
ビジターセンターの前にある駐車場の端っこが展望台になっています。ここは定番のビューポイントで、ガイドブックなどで必ず見かける風景ですが、やはり現場で目の当たりにする大迫力は、想像をはるかに超えるものがありました。
それぞれの岩山には(当然)名前が付いていて、左から、レフトミトン(Left Mitten)<左手袋>、ライトミトン(Right Mitten)<右手袋>、メリックビュート(Merrick Butte)<メリックというのは人名>といい、「ミトンズビュー」(Mittens View)と総称されています。
ここからの眺めだけでも十分に圧倒されますが、この奥にさらに絶景が拡がっていて、全長17マイル(約27km)の探勝道路が通じています。

上(↑)の写真の手前に写っているのがその道路で、1930年代にジョン・フォード監督が「駅馬車」や「黄色いリボン」といった一連の西部劇をここで撮影する際に拓いたものです。

探勝道路を巡る方法は2つあって、ナバホ族が催行する「バレーツアー」に参加するか、自車で乗り入れるかです。

ナバホ族のバレーツアーは、ビジターセンター前の駐車場で客待ちをしている改造トラック(下の写真ご参照)で回りますが、砂塵もうもうとした未舗装路を「オープンカー」で行くので、頭の先からつま先まで砂まみれになる覚悟が要ります。とくに、コンタクトレンズを使用している人は要注意です。

一方、自車で乗り入れる場合はそのような心配はありませんが、砂だまりはスタックしやすいし、随所に顔を出している岩にお腹を擦らないよう、ここだけは慎重に「前車の轍を踏む」方が良さそうです(笑)。
また、ここは公道ではないため、(レンタカーの)自動車保険も免責になるので、雨上がりなどコンディションが悪いときは、おとなしくナバホ族のバレーツアー(US$60前後+Tip)に参加した方が無難です。

幸い今回は道路の状態も良好で、一般車もたくさん乗り入れていたので、管理人も自車で進入しましたが、周回を終えた車はまるでラリー車のように全身砂まみれでした。
写真を撮りながらですが、1.5時間ほどかけて一周しました。途中の説明は端折りますが、それぞれの岩山についている名前だけ記しておきますので、適宜読み飛ばされて下さい。
「メリックビュート」の近景

センティネル(Sentinel)<歩哨>メサ」と「レフトミトン」

こちら(↑↓)は「エレファントビュート」という名前が付いていますが、どう見るとゾウに見えるのか…。
これ(↑)は「キャメルビュート」という名前で、そう言われればラクダがこちらを向いているような…

レイン・ゴッド・メサ」の南縁
ここ(↑)は「トーテムポールポイント」(高さ250m)で、探勝道路の一番奥にあたります。

「アーチストポイント」といって、大平原の彼方に巨岩群を眺めるポイントです。
「ノースウィンドウ」といって、メサの間からミトンズビューを遠望するポイントです。

日中の景色もさることながら、陽が落ちるにつれてビュートが夕闇に沈んでゆく様子も感動的です。
今回はビジターセンターに隣接するホテルに泊まりました。その名も「ザ・ビューホテル(The View Hotel)」という2008年末にオープンした新しいホテルです。
全室のベランダからモニュメントバレーの夕景や日の出を居ながらにして眺めることができるため、ハイシーズンは1年前から予約が埋まるほどの人気ですが、今回は10月下旬というシーズン終了間際だったので、ネットでスンナリと予約できました。

ちなみに、グランドサークルの「ハイシーズン」は夏場ですが、40度近い猛暑のなかを回るよりは、10月頃の方がちょうど良い季候で、混雑もなく快適に観光できます。このあたりのことは、次回、後編の最後でまとめてご報告する予定です。

建物のデザインや色調も周囲の景観を損なわないよう配慮されています。というか、周囲の景色が雄大すぎて気にならないというのが正直なところですが、それでももしここが「国立公園」であれば、公園のど真ん中にホテルを建てるというのは絶対にあり得ないことかと思います。
ホテルの館内は、ネイティブアメリカンテイストの内装や調度品で統一されていて、全員がナバホ族のスタッフもとてもフレンドリーで、なんとも居心地の良いホテルでした。

ここで「ナバホ族」のことを少し触れておきます。ナバホ族は、アメリカ・インディアンの中で最大の部族で、約30万の人口を擁し、その居留区域は日本の東北6県の総面積に匹敵します。

ナバホ族の居留区域には高度の自治が認められていて、独自の大統領、評議会(議会)、法律、国旗、学校、大学、警察に準ずる組織を有し、彼らの「
Navajo Nation(ナバホ・ネーション)」という呼称にも、その自負と気概を伺うことができます。

また、先の大戦において、彼らの独自の言語が対日戦の暗号として利用されたのは有名な話で、我が国とも意外な「縁」のある部族です。

ちなみに、ナバホ居留区域では一切の飲酒とアルコールの類の販売が禁じられていて、観光客相手のホテルやレストランであっても飲むことができません。
上(↑)の写真は、ホテルのベランダから撮った夜景で、1時間の露出をかけたものです。肉眼ではさほどの星数も見えませんでしたが、写真を見てみるとやはり満天の星空で、日本から重い三脚を担いでいった甲斐がありました。

翌朝は、夜明け前に部屋を抜け出して、ミトンズビューで日の出を待ちました。日の出は7:41(山岳部夏時間)で、メリックビュートの右側から朝日が昇ってきました。昨日から雲ひとつない快晴のため、贅沢をいえばもう少し空の表情がほしいところですが、それでも神々しい「アリゾナのご来光」を拝むことができて大満足でした。

早朝の風景を少し撮ってから、名残が尽きないモニュメントバレーをあとに、グランドキャニオンへ向かいました。

グランドキャニオン周辺の様子は、次回(1月18日更新予定)の「後編(最終回)」で詳しくご覧いただくことにします。
引き続きのお立ち寄りとご笑覧をお願いします。