(2019.12.8)

 

  

 





名残り尽きない奥ユタ地域(DUD)の周遊を終えて、次の目的地の「ブライスキャニオン国立公園」(Bryce Canyon National Park)へ向けて、高速道路70号(I-70)を一路西進します。

 
この辺りは最高速度が80マイル(約130km)ですが、通行量が多くないので煽られる心配はありません(笑)。

このように広い中央分離帯を挟んで上り線と下り線が大きく離れているところが多く、広大なアメリカならではの景観でとても開放感があります。

ところどころに「休憩所」(Rest Area)もありますが、日本のPASAのように充実した施設ではなく、トイレと自販機があるだけ(それすらない所もある)です。

というのは、アメリカでは主要なインターチェンジの近くには、ガソリンスタンド、コンビニ、飲食店、宿泊施設などが揃っていて、かつ高速道路自体が原則無料のため、必要があればいったん高速を下りて、用を済ませてからまた高速に入るというスタイルなので、日本のように高速道路内のPASAで給油や飲食をするといったことがありません。

ちなみに、ここの自販機は盗難防止のためか厳重な檻に入っていましたが、慣れないと買い難そうです(笑)。


したがって、休憩所はインターチェンジすらない山越え区間などに設置されていることが多く、その結果、ここのように観光地顔負けの絶景を眼前にすることがあります。


キャニオンランズ国立公園から約300マイル(約480km)、約5時間半(途中の休憩、給油やフォトストップを含む)走ってブライスキャニオン国立公園へやって来ました。

この地域の周遊では、どうしてもこのように「ほぼ移動日」という日ができてしまい、DUDにツアーが入りにくい理由の一つでもあります。今回管理人は寄る年波から(笑)「一日の走行距離を300マイル以内」にしましたが、いくら元気でも観光とのバランスを考えると最大でも400マイル以内に収めないと、一日中ドライブばかりということになりかねません。

…と、例によって脱線しそうなのでブライスキャニオン国立公園に戻ります。


全米の国立/国定公園を所管しているのが内務省傘下の国立公園局(National Park Service)で、毎年、各公園の来訪者数を公表しています。

それによると、ブライスキャニオンは約270万人(12位)でベスト10入りを逃していますが、お隣にある「ザイオン国立公園」(Zion National Park)は約430万人(4位)で約1.5倍の来訪者があります。

両公園は道路距離で約70マイル(約110km)、約1.5時間とさほど離れているわけではありませんが、ザイオンからグランドキャニオンやモニュメントバレーへ向かうグランドサークル周遊の「メインルート」からみると、方向的に脇へ逸れる格好になって日程を圧迫することから、近くにありながら来訪者数が大きく異なる結果になっています。

何を隠そう管理人も、前回(2014/10)はまさにそうした理由からブライスキャニオンを割愛した一人ですが、それだけに今回は、(中編でご覧いただいた)アーチーズ国立公園とならぶ「もうひとつの目玉」として日程を組み立てました。



グレートスモーキーマウンテン国立公園というほとんど聞いたことがない公園がダントツ1位になっていますが、ここは入場料が要らないようなのでちょっと別格です。



公園近くのブライス(Bryce)という町がゲートウェイで、今回はここのRuby's Innという老舗モーテルに2連泊しました。

オールドアメリカンをフィーチャーした大きな施設で、公園入口まで車で2分という超至近な場所にあって、飲食はもとよりお土産から雑貨まで何でも揃う便利で快適なモーテルでした。

ブライスキャニオンでは、雨水や降雪による浸食や氷結が石灰岩を削り取って出来たギザギザの「フードゥー」(Hoodoo)と呼ばれる尖塔の形をした岩柱群が、肩を寄せ合うように立ち並んで谷を埋め尽くしている奇観が見どころです。

公園は南北に細長い形をしていて、岩柱群は東側の谷に集中しています。

とくに公園中部の東側には、馬蹄形に浸食された谷に、オレンジ、白、ピンクといった様々な地層の色彩を纏った岩柱が櫛比し、その様子から「ブライス円形劇場」(Bryce Amphitheater)と称されています。

ここをクリックすると大きなパノラマ写真が開くのでご覧下さい → panorama

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ここは公園の南端にある「レインボーポイント」(Rainbow Point)という展望台で、公園入口から17マイル(27km)、約30分かかります。
延々と連なるブライスキャニオンの東壁を一望することができます。

ここでは岩柱の生成過程を目の当たりにすることができます。
崖が雨水や氷結で浸食されて細長く突き出したフィン(Fin)と呼ばれる薄い崖をつくりだし、それらが更に浸食され削られて尖塔の形をした岩柱になるといわれています。最終的にはそれも崩壊して土塊になるのですが、現地の絶妙な気象環境(Delicate Climatic Balance)により生成と崩壊が休むことなく繰り返されています。
したがって、ここはグランドキャニオンのように河川の浸食がつくり出した景観ではありません。

ちなみに、ここは標高が高い(2,4002,700m)ため、10月に入ると朝夕は氷点下になる日もあることから、雨水の氷結やそれによる膨張も岩柱生成に大きく作用しているようです。

レインボーポイントからブライス円形劇場のある公園中央部へ戻る途中の道端にアスペン(ポプラの一種)が早くも黄葉していました。
ここは「ナチュラルブリッジ」(Natural Bridge)という展望台で、ブリッジの頭頂部はいずれ崩落して、両側が岩柱になるものと思われます。

「インスピレーションポイント」(Inspiration Point)から岩柱が密集する谷を右に見下ろしながら、崖沿いの道(Rim Trail)を「サンセットポイント」(Sunset Point)へ向かって1時間ほど歩きます。

どこまで行っても岩柱が立ち並ぶばかりですが、進むにつれて風景の表情がどんどん変化して、いつまでも見飽きることがありません。



サンセットポイントからは岩柱群が立ち並ぶ谷底へ下りる「ナバホループ・トレイル」(Navajo Loop Trail)という一周約2kmの人気のトレッキングコースがあって、約1.5時間(途中の休憩やフォトストップを含む)かけて歩きました。

谷底へ向かって550フィート(約170m)下ります。
グランドキャニオンでも谷底へ下りるトレイルがありますが、一日がかりの大変タフなコースなのに対して、ここは2時間(谷底での休憩時間を含む)もあれば一周できます。
「雷神のハンマー」(Thor's Hammer)という名の奇岩で、ブライスキャニオンのマスコットです。
更にドンドン下ります。

これは「Two Bridges」と呼ばれているところで、岩の間に上下2段のナチュラルブリッジが懸かっています。


谷底は意外に開けていて明るい日差しが溢れていました。

ダグラスファー(Douglas Fir)というサワラの一種が、日光を求めて谷底からたくましく伸びています。


再び550フィート(約170m)を急登してサンセットポイントへ戻ります。

サンセットポイントへ戻ってきました。画面中央下に「雷神のハンマー」が岩壁に影を落としています。


サンセットポイントから、今度は谷を左に見下ろしながら、インスピレーションポイントへ戻ります。
少し日が傾いてきただけですが、往路とは違った表情を楽しむことができます。


最後にインスピレーションポイントの展望台から岩柱群で埋まった谷を見納めてブライスキャニオンをお仕舞いにしました。

ここをクリックすると大きなパノラマ写真が開くので是非是非ご覧ください 矢印左 panorama 矢印右


…ということで、今日は早朝から日没まで、ブライスキャニオン国立公園を堪能した一日でした。



最終日の今日はブライスキャニオンを発って、「ザイオン国立公園」に立ち寄ってから、ゴールのラスベガスを目指します。

ブライスキャニオンからザイオンへ向かうUT-12(ユタ州道12)は景観道路(Scenic Byway)と呼ばれていて、沿道の両側にナチュラルブリッジや奇岩の数々を間近に眺めることができます。
ナチュラルブリッジのトンネル(!?)です。




ザイオン国立公園へやって来ました。

ザイオン国立公園は前回(2014/10)も訪れたところですが、その際に見落とした「キャニオンオーバールック」(Canyon Overlook)という展望台だけ、ラスベガスへの「行き掛けの駄賃」として、立ち寄ることにしました。

道路脇のトレイルヘッドからいきなり急登が始まりますが、片道30分ほどで展望台に到着します。

展望台からはザイオン国立公園に至る渓谷を見下ろすことができます。

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公園は正面の谷の突き当たりから右の方へ伸びる谷に沿って広がっています。


…ということで、5年前の宿題を無事に片付けてザイオンを切り上げることにしました。


思えば、ザイオン国立公園は管理人がアメリカを回り始めた最初の訪問地で、そこで見た圧倒的な絶景に惹きつけられて延べ25箇所の国立/国定/州立公園等を巡ってきました。 今回、その完結編ともいうべきSeason5の最後が再びザイオン国立公園というのも、何か不思議な偶然を感じています。



無事にラスベガスへゴールし、8日間、約1,300マイル(2,100km)の撮影行が終了しました。



ラスベガスも5年前にザッと「見物」(笑)しましたが、そのとき強風で中止になったベラージオホテル(Bellagio Las Vegas)の噴水ショーだけ撮り直しておきました。


ラスベガスはさすがにカジノの街だけあって、空港の中までスロットマシーンが並んでいます()


ラスベガスからシアトルへはアラスカ航空(AS-1775)で移動します。

シアトルに近づくにつれてレーニア山(Mt. Rainier、4,392m)が雲上に遠望されます。その優美な姿から地元日系人からは「タコマ富士」と呼ばれて親しまれています。

シアトルは上空から眺めても水と緑が豊かな美しい街で、一週間赤茶けた風景ばかり眺めてきただけにとても新鮮に映りました。


シアトル発祥のスターバックスで軽く腹ごしらえをして、日本航空(JL-67)で帰国の途につきました。



これにて3回にわたりご覧いただきました「アメリカ感動の旅 Season5」を終わります。

最後までご覧いただき有り難うございました。