(2019.11.17)

 

  

 

前号ではセドナからモニュメントバレー、さらにUT-261(ユタ州道261号)を北上して、険路(モキダグウェイ)をよじ登り、絶景に息をのんだところまでご覧いただきました。

今号はいよいよ奥ユタ地域(Deep Utah DistrictDUD)の核心部に分け入って、コロラド川が刻んだ大峡谷と奇岩怪石の数々をご覧いただくことにします。

それでは「アメリカ感動の旅 Season5」の「中編」へどうぞ。
 





モキダグウェイを登りきったところは、シーダーメサ(Cedar Mesa)という標高約2,000mの卓状台地(Plateau)になっていて、そこをさらに50kmほど北へ走ったところに「ナチュラルブリッジ国定公園」(Natural Bridges National Monument)があります。


Sipapu Bridge

「ナチュラルブリッジ」というのは、風化や河川の浸食や雨水の氷結など、様々な成因で岩盤に穴が空いて、あたかも天空に懸かる橋のようになった地形をいいます。

規模や成因や形状によって「アーチ」や「ウィンドウ」と呼ばれるものもあります。

黄色い線は川の流路を示します。

ここをクリックすると大きなパノラマ写真が開くのでご覧下さい → panorama


今号では、「場所柄」パノラマ写真がしつこく出てくるので、「是非ご覧下さい」とお願いしてあるもの以外は適宜パスされても結構です。(笑)
もちろんご覧いただければ嬉しいですが…。



Kachina Bridge
DUDでは、その独特の地質(地中の岩塩層のうえに砂岩層が堆積した構造)から、こうした地形を多数見ることができます。

ナチュラルブリッジ国定公園では、園内の周回道路(一周約15km)を回りながら、いくつかの展望スポットに立ち寄ったり、(ミニ)トレッキングを楽しんだりして観光します。

今回はここを含めて5箇所の国立公園/国定公園を巡るため共通パスを購入しました。このパスは80ドルなので3箇所以上回ればモトがとれることになります。

また、このパスで運転手と同乗者全員が入園でき、かつ有効期間が1年間(1年以内に再訪することは多分ないが…)という優れものです。
園内にはコロラド川の支流が2本貫流していて、それらの渓谷に世界最大級のナチュラルブリッジが3本懸かっています。これはそのうちの一つ、「オワチョモブリッジ」(Owachomo Bridge)です。谷床からの高さが32m、長さが55mと、3つのナチュラルブリッジのなかでは最も小さいですが、橋の厚みは最も薄くて僅か2.7m(!)しかないため、いちばん「写真映え」(笑)します。

これは、ナチュラルブリッジ国定公園を切り上げて、次の目的地の「アーチーズ国立公園」(Arches National Park)へ向かう途中で見かけたアーチです。

一応、Wilson Archという名前はついていますが、ガイドブックに載っているわけでもなく、こういうのが道路脇に突然、そして普通に、現れるあたりがさすがDUDです()


ここからは「今回の旅行の目玉のひとつ」ともいうべきアーチーズ国立公園になります。

ここはアメリカの国立公園のなかでも間違いなく屈指の辺鄙な場所にあると思います。

といっても、とくに人里離れた山奥にあるわけではなく、近く(公園入口から車で約10分)にはモアブ(Moab)という町があり、公園散策や野外活動の拠点として何でも揃う便利な町で、管理人も今回ここでとても快適に2連泊しました。

ではなぜ辺鄙かというと、冒頭の地図をご覧いただいて分かるように、有名地が集中しているグランドサークルのなかで、ここだけがポツンと離れた場所にあり、距離的にも交通手段的にも日程的にも、なかなか立ち寄りにくい場所にあるからです。

そのため、前回(2014/10)の周遊でも割愛せざるをえなかったし、ツアーなどで「アメリカ西部大周遊」とうたっていても、ここまで立ち寄るツアーはとても少ないです。

というか、たいていのツアーはグランドキャニオン、モニュメントバレー、アンテロープキャニオンなどアリゾナ州の有名どころをサラッとかすめるだけで、管理人の大好きなユタ州に立ち入るのはあまり見かけません。

今回、現地でも日本からの旅行者をたまに見かけましたが、皆さん個人旅行、家族旅行、グループ旅行といった方々ばかりでした。


…と、思わず脱線しそうになりましたが、アーチーズ国立公園に戻ります。 
モアブからUS-191を北上してコロラド川を渡り、ヘアピンカーブを何度か繰り返しながら登ったところが公園出入口です。
ゲートはここ一箇所だけで、ここから園内道路が北へ向かって通じていて、その途中にある展望ポイントに立ち寄ったり、トレッキングを楽しんだりして観光します。

先ずは園内道路の終端にある「ランドスケープアーチ」(Landscape Arch)を目指します。 園内は309平方キロ(東京23区の約半分)の広さがあるため、園内道路(約30km)を走りきるだけで40分ほどかかります。

まだ早朝だったので難なく駐車できましたが、ハイシーズンや週末は混雑するため、(とくに人気のポイントは)朝イチで訪問することをお奨めします。

駐車場から30分ほど歩きます。
ランドスケープアーチは長さが88.4mあり、世界のアーチ/ブリッジのなかで最長です。

長さもさることながら、とくに異彩を放っているのはその「細さ」で、最も細い部分は1.8mしかありません。

アーチーズ国立公園のシンボルともいえるアーチで、TVや写真で何度も目にしたことがありますが、実際にこれだけのアーチが天空を横切って、頭上にのしかかってくるのを眼前にすると、その存在に畏れすら感じます。

実際、1991(平成3)年と1995(平成7)年にはその一部が剥落し、以後、アーチ直下のトレールは閉鎖されています。

ちなみに、右の写真は1950年(1991年の剥落前)の姿で、白い円で囲まれた部分(の一部)が剥落して崩落しました。

上の写真と比較すると、確かにそれらしき痕跡も見受けられます。


(C) National Park Service

このあといつまでその姿を見られるか分からない、あす崩落するかも知れないといった脆さや儚さ、崩れゆく奇跡、滅びの美学、といったものが私たちを惹きつけて已まない所以かも知れません。



次に「デリケートアーチ」(Delicate Arch)へ回ります。ここは、駐車場近くにあるウォルフランチ(Wolfe Ranch)というところで、案内板によれば、1800年代の後半に南北戦争の傷痍軍人が息子とともにここに定住して牧場を経営していた跡で、風雨にさらされた丸太小屋が残されています。

また近くには先住民が描いたヒツジ(Bighorn Sheep)の岩絵なども保存されていて、歴史的にも由緒のある場所のようです。


デリケートアーチへは駐車場から往復で2~3時間(現場での滞在時間を含む)を要します。
日陰がないため40℃近くに達する夏場の日中は避けた方がいいと思いますし、この時期でも紫外線が強いので、サングラスと日焼け止めは必需品です。

この写真(↑)「NORTH FACE」か「Patagonia」の宣材に使ってくれないかなぁ(笑)。

最後の難所、崖っぷちの細路を回り込むと…、


円形劇場のようなすり鉢型地形の奥にデリケートアーチが忽然と姿を現して、自然の巧まざる演出とはいえ、ドラマティックな場面展開に思わず息をのみます。

公園のシンボル、ユタ州のランドマークとして、管理人もいろんなところで何度も目にしたことがありますが、現実にその場に立った感動は全く別次元のものでした。
いつも思うのですが、写真はカメラのフレームで風景の一部を切り取ったものですが、現実の風景はフレームの外にも、さらにカメラの背後にも広がっているわけですから、写っていない部分の景観や現場の空気感まで、一枚の写真でイメージさせるというのは、管理人のような素人には絶望するくらい難しくて、圧倒的な絶景を前に手も足も出ませんでした。
いま写真を整理しながら、「こんなものじゃなかったな」とあらためて痛感しています。
このデリケートアーチの凄いところは、ほかのアーチやブリッジは岩盤や渓谷の一部として存在しているのに対し、詳しい成因は知りませんが、まるで台地から掘りだされた<「彫りだされた」と書くべきかも知れませんが>かのように独立して、自立していることです。

資料によれば、開口部の大きさは高さ46フィート(15m)、幅32フィート(10m)とありますが、近くに立っている人物と較べるともっと大きいように見えます。


記念撮影の順番待ちの列ができていました。


ここは夕景が人気のスポットですが、スケジュールの都合で正午過ぎになったので、ご覧のように逆光になってしまいました。アーチの向こう側へ回れば順光で撮れるのですが、崖になっていたように思います(間違っていたらゴメンナサイ)。

次に「ウインドウズセクション」(Windows Section)というところへ回ります。

ここは岩壁に穴が空いたウインドウという地形が密集しているところで、「穴」自体もたくさんありますが、穴に至る前の侵食途上の地形もたくさんあって、ウインドウ形成の過程を目の当たりにすることできます。

とくに有名なのが二つの窓が並んでいるところで、向かって右が「南窓」(South Window)、左が「北窓」(North Window)という名前がついています。正面から見ると中央の岩が象の鼻のようにも見えるし、両窓がメガネのようにも見えます。

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こちらは両窓の対面にある「ターレットアーチ」(Turret Arch)で、両窓の恰好の展望台になっています。

ちなみに、ターレットとは小塔とか、砲塔とかいった意味です。


近くには「バランスロック」(Balanced Rock)という奇岩があります。

大きな岩が今にも転げ落ちそうな格好で乗っかっています。

ちなみに、上に乗っかっている岩だけでスクールバス3台分の大きさがあります。


そろそろ日が傾いてきたので、沿道の景観を眺めながら公園出入口へ向けて戻りますが、こういった奇岩や絶景が次から次へと現れて、そのつど車を止めては写真を撮るので、なかなか前へ進めません(笑)。

この辺りは映画「インディージョーンズ最後の聖戦」のロケ地だそうです。
ここは公園出入口の近くにある「パークアベニュー」(Park Avenue)というところで、巨石群が集まって立ち並んでいる様子を、摩天楼が建ち並ぶマンハッタン(NY)のパークアベニューに見立ててその名前がついたとあります。
…ということで、今日は早朝から日没まで、アーチーズ国立公園を堪能した一日でした。



今日は「デッドホースポイント州立公園」(Dead Horse Point State Park)と「キャニオンランズ国立公園」(Canyonlands National Park)を巡ります。

両公園とも、コロラド川やその支流のグリーンリバーが刻んだ大渓谷を眺めるところで、(規模は違いますが)グランドキャニオンと似た観光スタイルになります。

昨日訪れたアーチーズ国立公園に近接(右地図ご参照)していながら、こちらはコロラド川由来の地形のため、景観の様相は大きく異なります。

先ずはデッドホースポイント州立公園に立ち寄ります。当園は州立公園のため、先にご紹介した国立公園の年パスは使えません。

ここはコロラド川の浸食によって形成された半島のような地形で、その先端にある展望台から大きく蛇行するコロラド川や荒々しく削られた岩壁を一望することができます。

アンテロープキャニオンの近くに「ホースシューベンド」(Horseshoe Bend)というコロラド川が馬蹄形に湾曲した観光スポットがありますが、さらに上流部にあたるこの辺りの蛇行ぶりは、湾曲の数といい渓谷の規模といい、ホースシューベンドとは較べものになりません。

ここは展望台が南に向いているため日中は逆光になるので、早朝か夕方(どちらかというと夕方)がお奨めです。管理人は日程の関係で早朝に訪れたので、画面左手から朝日があたって、岩壁が長い影を引いています。

ここをクリックすると大きなパノラマ写真が開くので是非是非ご覧ください 矢印左 panorama 矢印右



次にキャニオンランズ国立公園へ回りました。

ここも園内をコロラド川とグリーン川が貫流し、園の南方で合流していて、園の北半分(その名も「天空の島」<Island in the Sky)は両河川に挟まれた大きな半島のような地形で、東側にはコロラド川が刻んだ大渓谷を、西側にはグリーン川が刻んだ大渓谷を眺めることができます。

ここはメサアーチ(Mesa Arch)というところです。断崖絶壁と大峡谷が売り物の当園ですが、「(場所柄)一応アーチもご用意しました」的な場所です(笑)。
とはいえ、アーチ越しに眺める朝日が有名なポイントで、日の出の時刻ともなると三脚が並ぶそうです。今回、管理人は「暗くなったら走らない」ことにしたので、夜明け前の移動は見合わせたため、日の出の写真はありません。

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アメリカを旅行しているとこういうキャンピングカーをいたるところで見かけます。現地ではRV(Recreational Vehicle)といって、駐車場にも専用区画が設けられているところが多く、とても人気があるのでマイカーかと思っていたらほとんどがレンタカーのようです。


ここはバックキャニオン展望台(Buck Canyon Overlook)というところで、コロラド川の方向を眺めています。

川が大地をどんどん浸食して、渓谷がつくられていく様子が分かります。
案内板によれば、谷底の道路は1950年代にウランや石油の探査が行われた際のものだそうです。
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ここはIsland in the Skyの南端にあるグランドビューポイント(Grand View Point)という展望台です。

標高は約2,000m(6,080フィート)あります。

この展望台も南に向いているため早朝か夕方がお奨めです。

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「展望台」といっても手すりやフェンスといった人工物は何もないので、足元にはくれぐれも注意が必要です。 

アメリカでは自然景観の維持と保全を最優先にする観点から、「できるだけ環境に手を加えない」といった考えが本当に徹底していて、日本ではちょっとありえないことですが、当園に限らず安全設備はほとんど設置されていません。

何事も「ありのままで~」( Let It Go Let It Go)というわけです()
これは、「安全より環境が優先」ということではなく、「すべては自己責任」と解すべき米国流の考え方かと思います。


ここでは眼下の谷底で4WDやジープでオフロードドライブを楽しむこともできます。
(画像の上にカーソルを移動すると谷底の車が見えます)

ここは、オレンジクリフ展望台(Orange Cliffs Overlook)というところで、オレンジ川の方向を眺めています。

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最後の方は駆け足になってしまいましたが、これで奥ユタ地域(DUD)を巡った中編を終わります。

最後までご覧いただき有り難うございました。


次回、後編(完結編)は12月8日にアップする予定です。
引き続きお立ち寄りのうえご笑覧をお願いします。