(2017.8.27)

 

 

  

今回は、前号に続き「アメリカ感動の旅 Season4」の後編(完結編)として、ヨセミテ国立公園の様子(後半)を中心にご覧いただきます。

ヨセミテは概ね東西に延びる深い渓谷で、北側と南側から900~1,200mの岩壁に挟まれていますが、今回はそのうち南側の岩稜(South Rim)に登って、上からの景観をご覧いただくことにします。
「登る」といっても岩登りをするわけではなく(笑)、上の地図の通り岩稜の背後を回る格好で「グレイシャーポイント道路」(Glacier Point Road)が通じていて、頂部の近くまで車で行くことができます。

ヨセミテ渓谷(ヨセミテビレッジ)から終点のグレイシャーポイントまでは約50km(31マイル)あって、1時間強で到着します。

ちなみに、この道路は毎年秋口から翌年の春先まで積雪のため通行止めになりますが、昨冬はとくに雪が深かったようで、除雪が完了したのは5月11日でした。

さらにちなみに、公園の北部を東西に横断するタイオガ道路(Tioga Road)はさらに雪が深くて、今年の開通は6月29日(!)でした。いずれの道路も11月の中旬には再び冬季通行止めになります。

上の図は例によってGoogle Earthから拝借したもので、グレイシャーポイント道路の上空から俯瞰したところです。

South Rimにはグレイシャーポイントの他にもいくつかのビューポイントがあって、そのうちの一つ「タフトポイント」(Taft Point)というところへ立ち寄りました。
タフトポイントへは、グレイシャーポイント道路から林間のトレイルを約1.8km(1.1マイル)40分ほど歩きますが、グレイシャーポイントほど混雑していなくて、ゆっくりと散策することができました。
林を抜けると広い岩の上に出てきますが、その先が断崖になってスパッと切れ落ちています。
United States Geological Survey(米国地質調査所、我が国の国土地理院に相当)のメダルが埋め込んであります。日本の三角点にある柱石のようなものかと思いますが、海抜7,503フィート(2,287m)とあります。ヨセミテ渓谷が海抜約1,200mですから、断崖の比高は約1,100mということになります。
そこからの眺望はグレイシャーポイントに勝るとも劣らない絶景で、ハーフドームこそ見えませんが、ヨセミテバレーを眼下に見下ろす高度感はSouth Rim随一といっても過言ではありません。
ヨセミテ滝が眼下に遠望できます。その奥に白銀をいただくのは標高10,850フィート(3,307m)のホフマン山(Mt.Hoffman)です。
ヨセミテ滝が3段になっている様子がよく分かります。

眼下の森はヨセミテビレッジやヨセミテロッジなどがある渓谷の中心部です。

手すりがあるのはこの一角だけで、そのほかは柵やフェンスといった人工物は何もないので、足元にはくれぐれも注意が必要です。

アメリカでは自然景観の維持と保全を最優先にする観点から、「できるだけ環境に手を加えない」といった考えが徹底していて、日本ではちょっとありえないことですが、ここに限らず安全設備はほとんど設置されていません。
これは、「安全より環境が優先」ということではなく、「すべては自己責任」という米国流の考え方と解すべきでしょう。
ちなみに、道路もよほど危険な場所以外はガードレールがありません。逆の見方をすれば、ガードレールのある場所は「本当に危険な場所」(笑)なので、かえってメリハリがついて分かりやすいです。

エル・キャピタンを正面に見ます。
ヨセミテ渓谷の西口方向を望みます。

次に、「ワッシュバーンポイント」(Washburn Point)というところへ立ち寄りました。
ここはグレイシャーポイントの少し手前にあって、ハーフドームを真横から間近に眺めることができます。
ハーフドームの標高は海抜8,836フィート(約2,700m)、麓からの高さは4,734フィート(1,443m)あります。
ハーフドームは半球状の岩塊の北西側半分が切れ落ちていて、正しくは「クオータードーム」というべきかもしれませんが(笑)、その独特の形状からヨセミテを代表する景観になっています。
成因については、氷河によって削られたとする説が有力ですが、凍結作用によって剥落し崩落したとする説もあります。
アウトドア用品のノースフェイス社(The North Face, Inc.)のロゴマークも、そのフォルムはハーフドームに由来するといわれています。ちなみに、3本の線は世界3大北壁(アイガー、マッターホルン、グランドジョラス)をイメージしているとのことです。
(TM) The North Face, Inc.
ここから眺めるハーフドームは、ベールを被ったマリア像に見えます。

ここは駐車場の横が展望台になっているのでトレイルを歩く必要がありません。
ここからはヨセミテ滝やエル・キャピタンは見えませんが、ハーフドームの裏手(画面右手)にある「ネバダ滝」(Nevada Fall)や「バーナル滝」(Vernal Fall)がよく見えます。
上段がネバダ滝(181m)、下段がバーナル滝(97m)です。
終点のグレイシャーポイント駐車場です。ハイシーズンにはこの駐車場が混雑してマイカー規制がかかり、途中からシャトルバスへ乗り換えになることもあるようですが、この日は幸いここまでマイカー(レンタカーですが(笑))で来ることができました。
ここも駐車場のすぐ先が展望台になっていて、車を降りるとハーフドームが視界に飛び込んできます。

ハーフドーム、ヨセミテ滝、ヨセミテ渓谷など、ヨセミテで見るべきものの全てが一望のもとに眺められる唯一の場所かと思います。
ヨセミテのなかでも、前号でご覧いただいたトンネルビューと双璧をなす展望スポットといえます。
ここからの眺めはもう多言を要しません。圧巻とか壮観とか絶景とかいう言葉が無力に思える景観です。
壮大なスケールに圧倒されて、ワーとかキャーとかいった声もなく、皆さんひたすら見入っています。
管理人もしばらく静かにして余計な講釈を控えます。

ここをクリックすると大きなパノラマ写真が開くので是非ご覧ください

ここにもUSGS(米国地質調査所)のメダルが埋め込んであって、海抜7,214フィート(約2,199m)とあります(百位の「2」が消えかけていますが…)。麓からの高さは約3,200フィート(約980m)になります。

ここからのハーフドームは小鳥のヒナのような形に見えます。

グレイシャーポイントの絶景を1時間半ほど堪能して、ヨセミテ渓谷へ下る途中に件のトンネルビューを通るので、もう一度立ち寄ってみました。
すると、ちょうどブライダルベール滝の飛沫に虹が架かっているところを見ることができました。
「午後の遅い時間に虹がでることがある」ということは知っていましたが、どういう季節の何時ごろのことなのか分からなかっただけに、偶然の出会いに感動もひとしおでした。
ちなみに、時刻は16:30頃から20分間ほどの出来事でした。
太陽が低くなるにつれて虹が滝の上の方へ移動してゆくように見受けました。

ヨセミテでの日程を全て終了して山を下ります。

ここは道路(Northside Drive)沿いの名も無い場所(笑)で、早朝のこともあって誰もいませんでしたが、正面の「カセドラルロック」(Cathedral Rock)が朝日に映えて、マーセド川の淵にその勇姿を静かに映しています。
いよいよヨセミテを去るという間際にこういう景色が現れるとますます名残が尽きません(笑)。
公園出口へ向かう途中にある「トゥオルミグローブ」(Tuolumne Grove)へ立ち寄りました。
ここは巨木で知られるジャイアントセコイア(Giant Sequoia)が見られるところです。
ジャイアントセコイアは古代の巨木の生き残りといわれ、今ではシエラネバダ山脈の西斜面の高地、ヨセミテ国立公園や南隣りのセコイア&キングスキャニオン国立公園に僅かに残るのみです。
樹高は80m以上、根元の直径は10m以上、樹齢は1,000年以上と、文字通りジャイアントです。
国立公園局(National Park Service)のシンボルマークにもジャイアントセコイアがデザインされています。

ヨセミテには公園南部のマリポサグローブ(Mariposa Grove)というところにもっと本格的な巨木の森がありますが、今秋まで改修工事のため閉鎖されています。
現在では希少種として保護されているジャイアントセコイアですが、19世紀にはこうして根元に穴を開けられてトンネルツリーになった樹がいくつかあって、この樹もトンネルの所為か、落雷にでも遭ったのか、上部は既に朽ちてしまっています。
リスはいたるところで普通に見かけました。これはカリフォルニア・ジリス(California Ground Squirrel)といって、リスは樹上で生活するのが多いなか、この種類は地中に穴を掘って生活します。
あまり人を怖がりませんが、だからといって餌をやったり、触ったりするのは禁物です。

この黒焦げはどう見ても山火事のあとですが、こうした樹があちこちに見られます。セコイアは樹皮が黒焦げになっていても全然平気のようで、むしろ森林の再生を促して植物の生長を助ける観点から、自然の山火事はあえて消火せず、「Management Fire」として延焼範囲を管理するに止めることがあるようです。




…ということで、いよいよヨセミテを後にして、往路と同じルートを辿ってサンフランシスコへ戻ってきました。
ベイブリッジを渡り、夕方の渋滞が始まりかけたダウンタウンを抜けて、ゴールデンゲートブリッジも渡って、ついに北岸のサウサリート(Sausalito)側へやって来ました!上(↑)の写真は北岸側の取り付け部ですが、武骨なトラス構造の橋脚に時代を感じます。

ここが前編でお約束したゴールデンゲートブリッジの北岸、「バッテリースペンサー」(Battery Spencer)という所です。
小高い丘の上に古い要塞の跡があって、そこからサンフランシスコの街並みをバックに、ゴールデンゲートブリッジを俯瞰することができます。
午後がほぼ順光になります。
前編でご覧いただいた対岸(南岸)からの写真(→)と較べると、かなり趣が異なるのがお分かりいただけると思います。
ベイクルーズの観光船がひっきりなしにやってきます。
今日のように晴天の午後も申し分ないですが、霧の日に橋塔だけが頭を覗かせている景色や、夕景や夜景も素晴らしいようです。


念願の「北岸からのゴールデンゲートブリッジ」をカメラに収めて、今回の旅行の締めくくりとしました。このあと、ゴールデンゲートブリッジを渡って空港方面へ向かいましたが、車窓からその様子をビデオ(2分50秒)に撮ったので、下(↓)のをクリックしてご覧ください。
例によって「助手」が車内から手持ちで撮影した映像のため、画面が不安定でお見苦しい点はご容赦願います。 また、旅の最終日のためフロントガラスも汚くて申し訳ありません。m(..)m


全ての日程を終了して、往路の折返し便、JAL-001で帰国します。「001便」の由来(笑)は前編で触れているので、よろしかったらご参照ください。

機材はB777-300ERです。B777-300ERB747-400の後継機として設計開発された長距離(Extended Range)タイプで、JALがローンチカスタマー(Launch Customer)になった機種です。
この機体はB777-300ERの初号機として導入された2機のうちの1機で、2003/2に初飛行ののち、1年余の試験飛行を経て、2004/7から就航しているので、機齢は早や14年を超えています。


これにて3回にわたりご覧いただきました「アメリカ感動の旅 Season4」を終わります。
長々とご覧いただき有り難うございました。


本編では少しでも読みやすくするため細かい現地情報はかなり端折ったので、サンフランシスコ、ヨセミテ方面の周遊をご検討中でこうした情報をお探しの方は、管理人までご遠慮なくご照会ください。お役に立てるかも知れません。