(2017.8.13)

 

 

  

それでは、今号(中編)と次号(後編)の2回に分けて、本題の「ヨセミテ国立公園」の様子をご覧いただきます。

国内の場合は誰しも多少の「土地勘」があるので、撮影地についての余計な説明は無用ですが、今回のような海外の場合は、先ずはどういう場所にあってどういう地形をしているのか説明した方が分かりやすいと思い、少なからず苦心しています。

「写真が全てだ!」、「説明は邪道だ!」といえばその通りですが、それだけの技量を持ち合わせていないことと、周辺の情報も踏まえて眺めてもらえれば、より「立体的」に見ていただけると考えます。

ということで、既に現地をよくご存知の方には誠に「くどい」ことで申し訳ありませんが、本編へ入る前にヨセミテの場所、成り立ちとその地形や、おもなビューポイントの位置関係などをザッとおさらいしたいので少々お付き合い下さい。m(..)m
ロッキー山脈を越え、アリゾナ/ネバダの砂漠を横切ってやって来た西部開拓者や大陸横断鉄道にとって、西海岸に至る最後の障壁として立ちはだかったのがシエラネバダ山脈です。

全長は約650kmと、ロッキー山脈(約5,000km)と較べるべくもありませんが、高い標高(主峰は海抜4,418m)と固い岩盤のため、その山越えには多くの悲劇と犠牲が繰り返されました。

一方、海岸から約320km(約200マイル)の至近距離に位置することから、サンフランシスコやロサンゼルスの貴重な水源になっていて、その豊富な雪解け水は長大な導水路(Aqueduct)を通じて西海岸を潤しています。

ちなみに、「Sierra Nevada」というのはスペイン語で「積雪のある山脈」という意味です。
今回ご覧いただくヨセミテは、そのシエラネバダ山脈のほぼ中央の西麓、サンフランシスコから車で5時間ほどのところにあります。イエローストーンやグランドキャニオンとの位置関係は上の地図を参照願いますが、意外と離れていることに気づかれると思います。

実は管理人も一昨年の秋にイエローストーン方面を周遊した際、ヨセミテにも立ち寄るつもりでいたところ、よく調べてみると直線距離で約1,000km、道路距離で約1,500kmも離れていることを知り、とても「ついでに立ち寄る」ような距離でないことがわかり、今回あらためて出かけた次第です。


次に、ヨセミテの魅力のひとつであるその特異な地形についてです。
ヨセミテというのは、その中央を流れるマーセド川(Merced River)によって刻まれたV字谷が、氷河によってさらに削られて深いU字谷になったもので、要するに「渓谷」と、それを取り囲む「岩峰」と、そこから流れ落ちる「滝」が織りなす絶景、ということができます。

なかなか地図では上手く表現できないので、Google Earthの力を借りることにします。上の図は渓谷の南西上空、約6,000mから俯瞰した様子です。渓谷はほぼ東西の方向に伸びていて、西方向に開口しています。図の奥(東)が上流、手前(西)が下流方向になります。渓谷の両側は900~1,200mの絶壁になっています。

主なビューポイントをコメントしておいたので、折に触れてこの図を参照されながら個々の写真をご覧いただいて、ヨセミテの全体を少しでも「立体的」にイメージしてもらえれば幸いです。
…ということで、前講釈がすっかり長くなってしまったため、ウンザリして他所のサイトへ行ってしまった方も少なくないと思うので(笑)、おさらいはこれくらいにして先へ進めてゆくことにします。

サンフランシスコを発って、前編でご覧いただいたベイブリッジを渡り、高速道路I-580、I-205からカリフォルニア州道CA-120へ乗り継いで、5時間ほどひたすら東進します。

ちなみに、「I」の符号がつく高速道路はInterstate Highway(州間高速道路)のことで、米国の基幹高速道路網を構成しています。いわゆるフリーウェイです。

さらにちなみに、Interstate Highwayの下位には、US Highway(日本の基幹国道に相当)、State Highway(日本の地方国道に相当)、County Highway(日本の県道に相当)などがあります。

最高速度は州によって異なっていて、I-580は(たしか)65マイル(約104km)でしたが、北カリフォルニアで有数の渋滞路線らしくて、今回もあちこちで断続走行を余儀なくされました。

おっと、またまた脱線しそうになりました。失敬、失敬!


ヨセミテには4つの入口がありますが、サンフランシスコから来た場合は公園北西口の「Big Oak Flat Entrance」から入ります。

入園料は車1台30ドルで1週間有効と大変「良心的」です。
園内の広さが3,081km2(東京都の約1.4倍)あるため、入口から公園の中心部(ヨセミテビレッジ周辺)へ行くだけでも車で小一時間、約38km(24マイル)走ります。
途中、いくつかのビュースポットがあって、早くもヨセミテのシンボルともいうべき「ハーフドーム」が頭を覗かせ、心憎い演出にいやがうえにも期待が高まります。

公園南口から入園してカリフォルニア州道CA-41をやはり車で小一時間、40km(25マイル)ほど北上したところ(上(↑)の写真の左手奥すぐのところ)に、ワウォナトンネル(Wawona Tunnel)というトンネル(1,290m)があります。
このトンネルを抜けたところがヨセミテ渓谷を西端から俯瞰する高台になっていて、その名も「トンネルビュー」(Tunnnel View)と呼ばれています。
先にご覧いただいたGoogle Earthの図とほぼ同じアングルで、高度をもう少し下げたのがこの場所になります。
ここはヨセミテに数ある絶景ポイントのなかでも白眉というべき場所で、とくに暗いトンネルから抜けた途端にヨセミテ渓谷を見下ろす空中へ飛び出すような浮揚感は、ヨセミテ観光のオープニングとして申し分のない演出効果で、訪れる人を魅了して已みません。
ヨセミテ渓谷の巨大なU字型が一望のもとに見わたせて、人工物は何ひとつ目に入りません。
左手には「エルキャピタン」、右手には「ブライダルベール滝」、その奥には「カテドラルロック」、正面奥には「ハーフドーム」など、ヨセミテの主役達を一望することができるので、どんなに駆け足のツアーでもここだけは必ず立ち寄ります。
かつて、先住民を追ってこの地に達した騎兵隊が渓谷を一望したとき、誰もが「天国の入口」へ来たと思い静かに銃を置いて祈りを捧げたといわれ、ヨセミテが「神々の遊ぶ庭」と呼ばれるのも頷ける神々しい眺めです。
あまりにも有名な場所なので、ここからの写真はいろんなところで何度も目にしてきましたが、実際にその場所に立ってみると言葉にならない感動に心が震えるのを覚えました。
今までの経験からして、こういう舞い上がっているときは、自分が撮っているというより、被写体(風景)に撮らされていることが多く、今回も果たしてどれだけ現場の臨場感を伝えられているか心許ない限りですが…。

トンネルビューの展望台から下って、ブライダルベール滝の下にやって来ました。
落差は189mとヨセミテ渓谷の滝のなかでは小さい方ですが、ヨセミテで最初に目にする滝のため、感動もひとしおです。
風に吹かれて舞い上がる飛沫(しぶき)が花嫁のベールに見えることからついた名前と言われています。
滝壺の近くまで寄れるのですが、飛沫がもの凄くてカメラを構えるのもひと苦労です。
アメリカ人が「So misty !」とはしゃいでいましたが、女性がこの飛沫を浴びると、近いうちに結婚できるとか…(笑)。

ここは渓谷の中心部、ヨセミテビレッジの近くにあるセンチネル橋(Sentinel Bridge)です。
ゆったりと流れるマーセド川の向こうにハーフドームが眺められるビューポイントです。

振り返ると駐車場の向こうにヨセミテ滝を見ることができます。

ヨセミテ滝は渓谷最大の滝で、落差が739m(ナイアガラの滝の約13倍)あり、全米第1位、全世界でも第9位にランクインしています。
滝は上段(Upper)の436m、中段(Cascade)の206m、下段(Lower)の97mの3段になっています。
ヨセミテの盟主に恥じない大迫力に圧倒されます。
下段滝(Lower Fall)のすぐ近くまで遊歩道が通じて、爆音を轟かせて落ちてくる様子を間近で眺められます。
大量の飛沫が強い風に乗って容赦なく叩きつけてきます。ブライダルベール滝のそれは「Misty」でしたが、ここは「Splash」といったところです。
近くにマーセド川を渡る可愛い木橋があって、そこからも少し離れたヨセミテ滝を眺めることができます。このあたりは上高地や軽井沢を連想させる日本的な雰囲気です。
さらに、対岸の道路(Southside Drive)からも遠望することができます。

ヨセミテには百を超す滝があるといわれていますが、いずれも雪解け水が水源のため、8月に入ると水が涸れて滝は姿を消してしまいます。

上(↑)の写真は国立公園局(NPS)のライブカメラで見た様子ですが、ご覧のように日に日に心許ない細流になっています。
一方、5月以前はまだ除雪が済んでいない道路などもあって行動が制約されるため、「滝に限っていえば」ヨセミテの観光シーズンは6月と7月の僅か2ヶ月間(!)ということになります。
ここで問題になるのが宿泊(Lodging)です。園内の宿泊施設(高級ホテルからテントバンガローまで実に多彩)も相応の収容力があるのですが、6~7月のハイシーズンは予約の受付開始(1年前から)と同時にほぼ「即完状態」で、キャンセルもほとんど出ません。
一方、園外にも幾つか宿泊施設はありますが、何しろゲートから公園の中心部まで小一時間ですから(笑)、園外宿泊はあまり現実的とはいえません。
この結果、ヨセミテ観光は「1年前から日程を確定する」必要があり、管理人のように気ままな時間を自由にできる人はともかく、そうはいかない堅気の人(笑)にとっては、この点が悩ましいところで大きなネックになろうかと思います。ちなみに、ハイシーズンさえ外せば、さほどタイトではありません。

道路(Southside Drive)の脇に小さなチャペルがあって、雄大な風景のなかで恰好の点景になっています。
エル・キャピタン(El Capitan)の直下へやって来ました。
エル・キャピタンは世界最大の花崗岩の一枚岩(Monolith)で、標高は2,307m、地上からの標高差は1,095mあって、ロッククライマーの聖地ともいわれています。
屹立するその特異な岩峰は渓谷のどこからでも眺めることができ、ハーフドームと並んでヨセミテを代表する偉観です。

渓谷の東端、ハーフドーム直下の細い谷を渓流に沿って30分ほど遡ると、対岸の峰々を水面に映す静かな入り江に到着します。
ここはミラーレイク(Mirror Lake)というところで、文字通り鏡のように澄んだ水面に周囲の風景が映り込んで、何とも心安らぐヒーリングスポットです。
いい感じで鹿が現れましたが、とっさのことでレンズを交換する暇がなく残念でした。

渓流の対岸にも遊歩道がありますが、水面に映り込んだ景色を観賞したい場合は、渓流の「左岸(南側)」を「午前中」に散策するのがお奨めです。
また、ここは「レイク」といっても湖ではなく、渓流が淵(Pool)のようになっているだけなので、やはり8月になると干上がってしまいます。

6月はヨセミテが一年中で最も混雑する時期(多分)で、ランチの席取りや駐車場探しに苦労しますが、それも日中のひとときだけで、15時を過ぎると宿泊客以外は帰途につくので、ずっと動きやすくなることを学習しました。
また、ヨセミテ渓谷は西に向かって開口しているため、ほとんどのビュースポットは午後から夕方にかけてが順光になるので、実は15時以降がベストタイムということも知りました。これらの点からも、(予約は大変ですが)園内に宿泊されることを強くお奨めする次第です。

Northside Drive沿いの小さな駐車場から眺めた景色で、その名もバレービュー(Valley View)というところです。
ここはヨセミテ渓谷の西端(出口)に近い場所で、冒頭でご覧いただいたトンネルビューの直下といった位置になります。
マーセド川を前景にして、左手にエルキャピタン、右手にブライダルベール滝、その後ろにカテドラルロック(Cathedral Rock)、その左手奥にセンチネルロック(Sentinel Rock)が一望できる絶景ポイントです。



今号(中編)ではヨセミテ渓谷の谷床(Valley Floor)からの景観を中心にご覧いただきました。
次号(後編)では渓谷の南側の岩稜(South Rim)に登って上からの景観をご覧いただくことにします。
また、前号(前編)でお約束した北岸から俯瞰したゴールデンゲートブリッジも掲載します。

次回の更新は8月27日の予定です。

Don't miss it !! (笑)