(2019.7.21)

 

  

前回から「初夏の北海道 Season2」をご覧いただいていますが、今号では主題の利尻島/礼文島の様子をお目にかけることにします。

利尻島、礼文島の回り方は目的や日程に応じて色んな組み合わせがありますが、個人旅行の場合はフェリーや路線バスの時刻の制約から、おのずといくつかのパターンに絞られます。

今回、管理人は礼文島での撮影をメインにしたので、先ずは利尻島へ渡ってザッと島を一周してから、昼過ぎのフェリーで礼文島へ渡ることにしました。

利尻島で半日、礼文島で一日半、両島あわせて2日(正確には2泊3日)という日程になります。

現在、利尻礼文航路はハートランドフェリー社により運航されていて、ハイシーズンのこの時期は稚内/利尻島/礼文島へ毎日3便が設定されています。
稚内7:15発の利尻島行き始発便に乗ります。
今日の船は「ボレアース宗谷」(3,578トン)といって、2等船室が床席になっていて、早朝から観光客や商務の人で賑わっています。
ちなみに、3年前に稚内から礼文島へ渡ったときもこの船で、その時は足も伸ばせないくらいの大混雑で、悪天だったこともあり、どことなく険しい雰囲気でしたが、今日は好天に恵まれてとても長閑で平和な船内です♪。(笑)
定刻に稚内港を出航して利尻島の鴛泊(おしどまり)港へ向かいます。
ノシャップ岬(赤白燈台がある所)を交わすと早くも利尻富士(1,721m)が洋上に姿を現します。

利尻島までは1時間40分の船旅です。

近づくにつれてどんどん島影が大きくなり、いやがうえにも期待が高まります。

鴛泊港8:30発の稚内行き始発便が出航していきます。

フェリーの到着にあわせて定期観光バスの午前便が接続していますが、あいにく満席だったのでレンタカーを借りて島内を時計回りに一周することにし、観光バスのあとをつける格好で()先ず「姫沼」に立ち寄りました。

名物の「逆さ利尻富士」を見るには光線や湖面のコンディションが良い早朝が狙い目のようです。

姫沼は1923(大正12)年に沢水を堰き止めてできた人造湖で、周囲800mの湖畔には木道が整備されていて、20分ほどで一周することができます。
散策路をふさいだ倒木には何とステップが刻まれていて、ご丁寧に滑り止めの模様までついています(→)。
「ミヤマキンポウゲ」が湖畔に咲いていました。
ここは「オタトマリ沼」といって、「島内屈指の景勝地」だけあって、観光バスがひっきりなしに発着して観光客の絶えることがなく、2軒のレストハウスは大賑わいです。
近くにウミネコのコロニーがあるらしくて、しきりに飛来してきます。

オタトマリ沼から島周道路(道道108)を挟んだ「沼浦展望台」からは利尻富士の荒々しい姿を間近に望むことができます。

ここから見える利尻富士が北海道の銘菓「白い恋人」のパッケージにデザインされたとかで、「白い恋人の丘」という標識が立っています。ちなみに、この展望台は石屋製菓の協力で整備されたそうです。

ここは島の南端にある「仙法志御崎公園」というところです。

利尻富士が噴火した際に海に流れ込んだ溶岩が奇岩・奇石の荒磯をつくっています。
名産の利尻昆布やウニの姿を間近に見ることができます。
ウニは昆布を食べて育つことを知りました。どうりで旨いはずです(笑)。
公園内にはアザラシが囲われている一角があり、餌やり体験ができるので人なつっこく寄ってきますが、餌がもらえないと分かると二度と近づいてくれません(笑)。
島の西端にある「沓形岬公園」です。この辺りは利尻町の中心で、沓形港〜香深港(礼文島)には一日1便ですがフェリーも運航されています。
今回利尻島を訪れて初めて知ったのですが、西半分の利尻町と東半分の利尻富士町の2つに分かれています。ちなみに、礼文島は礼文町のみです。
人口は利尻町も利尻富士町も約2千人といったところですから、よく「平成の大合併」で生き残ったと思いますが、調べてみると北海道の市町村合併件数は意外に少なくて、もっと調べればいろんなことが見えてきそうですが、寄り道ばかりしていると前に進めないので(笑)この先は別の機会に譲りたいと思います。
約3時間半で島内を一周し、鴛泊港13:05発のフェリーで礼文島の香深(かぶか)港へ向かいます。
こんな駆け足で利尻島を観光したことにするなんて地元の方に叱られそうですが、このあと礼文島でも定期観光バスの午後便が接続していて、島内を周遊してからフェリーの最終便でその日のうちに稚内へ戻るという超弾丸ツアー(笑)も「技術的には」可能です。
礼文島と利尻島は礼文水道を挟んで僅か10km足らずの至近距離にありながら、その成り立ちや形をはじめ、植生も生態系も大きく異なり、ひいては歴史や文化の違いとなって今に至っています。ちょうど、種子島と屋久島の関係に相似しているとよく言われます。

礼文島は南北約25km、東西約8kmの「カニの爪」のような形をした島で、島の東海岸は道路が通じて集落が点在しているのに対し、西海岸は切り立った断崖が連続して地形が険しく、冬場には北西の季節風が体当たりしてくるため、人を寄せつけない厳しい自然が手つかずのまま残されていて、それがまた訪れる人を惹きつけて已みません。

ちなみに、礼文島は(北方四島を除くと)我が国最北の有人島になります。

そんな礼文島には主なものだけで7つのトレッキングコースがあり、それらのほとんどが自然豊かな島の西側に集中しているのもうなずけます。

今回はその中でも人気の「桃岩展望台コース」と「岬めぐりコース」を歩いてきたのでその様子をご覧いただくことにします。

(C) 礼文島観光協会 (以下、同様)
利尻島から礼文島へ到着し、さっそく「桃岩展望台コース」へ出発します。香深のフェリーターミナルから歩き始めるのが本来ですが、コース終点からの戻りのバス時刻の関係から、香深から桃岩展望台の近くまでタクシーを利用しました。

ちなみに、普段はマイカーで気ままに移動しているため、(それでなくても本数が少ない)路線バスの時刻を意識しながら行動するのはけっこう気疲れします。
桃岩展望台から北方向を眺めたところで、右手が香深港になります。
反対の南方向を眺めたところで、午前中、駆け足で周遊した利尻島が望めます。
礼文島で一番よく見かけた「オオカサモチ」です。シシウドの仲間です。
「レブンキンバイソウ」です。
「イブキトラノオ」です。
「チシマフウロ」です。
「レブンシオガマ」です。
ちなみに、名前の頭に「レブン」がつく植物は、礼文島の固有種で利尻島にはありません。
レブンシオガマはこのあとも至るところで目にするのでよく覚えておいて下さい。
これ、試験に出ます(笑)。
このコースは距離も所要時間も難易度も適度なことから、たくさんのツアーグループが歩いておられました。
一般に本州中部の森林限界は2,5002,800m、北海道の屋根といわれる大雪山で約1,500m、お隣の利尻島でも約500mといわれますが、礼文島ではハイマツや笹が地表を覆うばかりで、森林というようなものは見当たりません。
これは緯度や気温だけでなく、地質や地形も影響してのことと思われますが、こうした「森林限界が海抜0m」という特異な環境が独特の植生を育み、礼文島が「花の浮島」と呼ばれる所以でもあります。
眼下に見える赤い屋根の建物は「桃岩荘ユースホステル」で、かつての鰊番屋を改造したものです。1967(昭和42)年の開設で、(管理人もそうですが)若かりし頃にお世話になった方も多いのではないでしょうか。
タクシーでズルして(笑)桃岩展望台からスタートしたので、約4.5kmの行程を写真を撮りながら約2時間半で歩いたことになりますが、大きなアップダウンもなく楽ちんなコースで、明日の「岬めぐりコース」へ向けてまたとない足慣らしになりました。
コース終点の知床バス停です。このバス停も仮眠ができるくらい立派な建物です(笑)。ここから香深までバスで戻り3日目の日程を終了しました。


今日はいよいよ今回のメインイベントともいうべき「岬めぐりコース」を歩きます。

このコースは、途中のゴロタ山(岬)と澄海岬に180m100mのアップダウンがあるのと、何より長距離(12.4km)のため、管理人が知る限りでは(現地ガイドによるトレッキングは別にして)ここを歩き通すツアーはありません。

コース北端のスコトン岬周辺と、コース南端の澄海(すかい)岬は、定期観光バスもツアーも必ず立ち寄る定番の景勝地ですが、

その途中の区間こそがこのコースの見どころ、というか礼文島トレッキングコースのハイライトともいうべきポイントのため、3年前も今回もこのコースを歩くために礼文島までやって来ました。

…、ということで歩き出す前からずいぶん入れ込んでいますが(笑)、先ずは路線バスでスコトン岬までやって来ました。
昨日まで続いた好天もついに息切れしたようで、今日は西から気圧の谷が接近していて、残念ながら厚い雲に覆われてしまいました。

しかし天気予報によれば何とか今日一日はもちそうで、雲量はさほどでもなくて空も十分に明るく、写真を撮るには不足ないコンディションと判断し、歩き始めることにしました。

スタート地点のスコトン岬が遠望できます。こうして眺めてみると、礼文島が太古に海底が隆起してできた島ということがうなずけます。ちなみに、利尻島は海底火山の活動によりできた島です。
崖下の道路は島の東海岸を南北に縦断する道道40号です。
これは「エゾノシシウド」と思いますが…(自信ありません)。桃岩でたくさん見かけた「オオカサモチ」かも…。
この辺りは「江戸屋山道」というところで、「レブンシオガマ」が群生しています。
「チシマフウロ」(↑)や「ハマナス」(↓)も草原に彩りを添えています。
ゴロタ山への登りにさしかかります。
右側は海に切れ落ちた崖になっていますが、そのあたりに海鳥の巣があるらしく親鳥がしきりに飛びかって警戒しています。
「センダイハギ」です。マメ科の植物です。
panorama
見渡すかぎりの草原をエゾノシシウドの白色が覆い尽くして見事です。
押し寄せては流れてゆく海霧が「最果ての花畑」をより印象深いものにしていました。


ここをクリックすると大きなパノラマ写真が開くので是非是非ご覧ください 矢印左 panorama 矢印右



登りきったところが日本海へ向かって突きだした岬になっていてゴロタ岬と言います。
スタート地点のスコトン岬が遠望されます。
ゴロタ岬を振り返ります。
「エゾカンゾウ」がハイカーを見送ります。
ここから長い階段をゴロタ浜へ向かって下っていきます。
きれいな砂浜が続く向こうにいま下ってきたゴロタ岬を望むことができます。
この海岸では小さな穴があいた貝殻がたくさん見つかります。これは別の貝が穴をあけて捕食したあとだそうです。
海岸を彩る「ハマナス」です。
ゴロタ浜を過ぎて澄海岬への登りにかかります。
花に励まされて最後の急登を頑張ります。
 
 澄海岬の手前にある西上泊漁港です。
澄海岬は断崖に抱かれた美しい入り江が広がる岬で、礼文島きっての絶景ポイントです。
アイヌ語が由来の地名が多い北海道で「澄海岬」ってずいぶん和風な地名だなと思っていたら、かつては「西上泊園地」といっていたものを1990年頃に現在の地名に変更されたようです。
ここへは浜中から立派なバス道路が通じているので、観光バスがひっきりなしにやってきて手軽に展望台に立つことができます。
3年前のHPを読み返してみると、「最果て感のスコトン岬、秘境感の澄海岬」などと生意気なことを書いていますが、今あらためてここに立ってみると、2度目なので落ち着いて景色を眺めるからか、さっき見たゴロタ山の景色が鮮烈だったからか、「秘境」というのはちょっと言い過ぎだったような…(笑)。


澄海岬からゴールの浜中バス停までは2車線のバス道路をひたすら歩くだけ…、と思っていたらサプライズがありました。
礼文島には「レブンアツモリソウ」という大きな白い袋状の花弁をつける可愛い植物があります。礼文島にだけ自生する固有種で、澄海岬と浜中のほぼ中間にある群生地でのみ見ることができるため、一帯は北海道の天然記念物に指定され大切に保護されています。
レブンアツモリソウは礼文島の花々よりひとあし早く咲くため、既に今年の花季は終わっていたので諦めていましたが、群生地脇の駐車場に観光タクシーが停まっているので行ってみると、なんと2輪が咲き残っていて撮り納めることができました!


15:45にゴールの浜中バス停へ到着しました。スコトン岬をスタートしたのが9:15ですから、6時間半かけて歩いたことになります。

パンフレットなどではコースタイムは5時間40分とありますから、その差は写真を撮ったり、休憩したり、お弁当を食べたりした時間ということになります。

管理人は普段から運動不足のうえ、機材を背負って5時間も6時間も歩けるか不安でしたが、絶景に目を奪われながら、何より花々に励まされながら、気がつけば歩き通せていたというのが実感で、

歩き終わってみると「やはり歩かないと出会えない景色だったな…」という充実感がじわじわと沸きあがってくるのを感じました。

あいにく青空を仰ぐことは叶いませんでしたが、何とかお天気は持ち堪えてくれ、写真も満足ゆく撮れ高を得て、昨日の利尻島を含め、(「倍返し」とまではいきませんでしたが)3年前のリベンジは果たせたかと思います。

Yes, I did it !! (笑)

最後に浜中から香深まで路線バスで戻り4日目の日程を終了しました。

このバス停はトレッキングコースのスタート/ゴールになっているため一段と立派です!


【お断り】

利尻島/礼文島から稚内へ戻ったあと宗谷丘陵を少し周遊し、最終日には小樽近郊も観光しました。それらの様子も今号に収めて「後編」として完結させる予定でしたが、利尻島/礼文島が思いのほか嵩張ってしまったので(汗)、今号はここまでにして、宗谷丘陵以降は「後編」として次号へ繰り越させていただくことにしました。
次回、「後編」(完結編)は8月4日に更新の予定です。

「北海道はもうお腹いっぱ〜い!」という声が聞こえてきますが(笑)、どうかもう少しだけお付き合い下さい。m(..)m


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