(2017.9.17)

 

 

  

奈良についてはN's TOWNでも今までに何度か採り上げてきましたが、今回はすこし趣向を変えて夕景から夜景の模様を取材してきました。

毎年この時期は「ライトアッププロムナード・奈良」と称して主要な社寺等でライトアップが行われています。これは1988(昭和63)年の「奈良・シルクロード博覧会」から始まったもので、今年は7/15から9/24まで開催されています。

ライトアップといっても、そこは何ごとにも控えめな奈良のことですから(笑)、レーザービームが飛びかうような仰々しいものではなく、古社や古刹の佇まいを乱すことのない、実に慎ましく好ましいものでした。

このほかにも、8月のお盆の頃には「万灯供養会」(東大寺)や「なら燈花祭」(奈良公園一帯)といった行事もありますが、三脚の使用も禁止されるほどの混雑ぶりで、(管理人としては)あまり芝居がかったイベントは奈良には似つかわしくないような気がします。
美しい芝生が緩やかにうねる「飛火野(とびひの)園地」は、たくさんの観光客が鹿と交流を楽しむ広場ですが、この日は夕暮れとともに上弦の月が南天に懸かり、公園は早や初秋の気配でした。


飛火野園地からバス通り(県道)を渡ったところが鷺池で、そこに「浮見堂」という六角形の檜皮葺のお堂が建っていて、春日山を背景にして優美な姿を水面に映しています。
奈良国立博物館の「なら仏像館」です。1894(明治27)年の竣工で、「旧帝国奈良博物館本館」として国の重要文化財に指定されています。
興福寺の五重塔です。現在の建物は室町時代に再建されたもので、国宝に指定されています。
ライトアップされると緻密な木組みの様子が一段と際立ちます。


東大寺南大門の金剛力士像も昼間とは違った迫力があります。ちなみに、南大門も金剛力士像も国宝です。
大仏殿の前では「国民文化祭・障害者文化祭」のオープニングイベント(9/2)のリハーサルが行われていました。
それにしても、奈良の夜景を撮影してみてあらためて気づくのは人通りのなさです。撮影にはとても好都合なのですが、まだ19時、20時という宵の口にもかかわらず、東大寺や興福寺の周辺は昼間の雑踏がウソのように人影が疎らでした。
森閑とした境内に遠くから読経が聞こえ、足音に驚いて振り返ると鹿がいた、という昔と少しも変わらない奈良が今もそこにあって、少し嬉しい気分になったものです。


これは奈良に宿泊する観光客が相変わらず少ないことが一因ですが、どれくらい少ないのか調べてみると、京都や大阪に較べて少ないというだけではなく、全国47都道府県中46位(2016年実績、観光庁調べ)という驚くべき状況でした。

ちなみに、最下位の47位は僅差で徳島県でしたが、奈良県が最下位になる年もあるようで、国内トップクラスの観光資源を有する奈良県が、徳島県と最下位争いを続けているというのは、にわかには信じがたいところです。
これにはいくつかの理由があるようで、奈良市内の厳しい建築規制(とくに高さ制限)のため、高層ホテルが建てられないからという説がありますが、これは京都も同じことですから理由にはなりません。

もう一つの理由として、いわゆる「大仏商法」といわれる奈良県人独特の商売気質が言われます。大仏商法というのは、大仏に参詣する客が立ち寄るのを待つだけで、進んで集客努力をしない奈良商人の消極性を指摘した言葉で、これは少なからず当たっている気がします(笑)。
しかし見方を変えれば、奈良には神社仏閣や古い町並でひと儲けしようというような世知辛い人が少なかったということで、その結果、むやみに観光客擦れすることなく、何処か大陸的な面影すら残す落ち着いた佇まいを今日まで保つことができたといえるし、いろんな人と話をしていると、そういう奈良に魅力を感じている人も実は少なくありません。
奈良は管理人の郷里のため、どうしても肩入れしてしまいますが(笑)、時代の流れがますます速くなるなかで、変わらないことの大切さがもっと理解されて、奈良だけはいつまでも「偉大なる田舎町」であってほしいと(我が儘な希望ですが)願って已みません。

奈良の魅力については、「ならまち散歩」(2016/1/17号)でも(例によって)くどくどと書いているので(笑)、ご興味のある方は参照されてください。