(2016.11.20)

 

 

 

今回は「錦秋のみちのく」の後編として、奥入瀬渓流、十和田湖、八幡平(はちまんたい)の様子をご覧いただきます。

奥入瀬渓流や十和田湖は、標高が八甲田に較べて1,000mほど低いため、紅葉の見頃も1週間から10日ほど遅く、ようやく「色づき始め」といったところでした。

奥入瀬川は十和田湖の東端にある子ノ口(ねのくち)から流出し、十和田市を経て八戸と三沢の間で太平洋に注ぐ全長63kmの短い河川ですが、このうち子ノ口から蔦川との合流部である焼山(やけやま)までの区間(14km)をとくに「奥入瀬渓流」と呼び、国の特別名勝・天然記念物に指定されています。

十和田の魅力を広く世に紹介した明治の紀行作家、大町桂月が「住まば日の本、遊ばば十和田、歩けや奥入瀬三里半」とうたっている通り、奥入瀬の魅力を堪能するためには渓流沿いを歩くにかぎります。

渓流といっても遊歩道がしっかり完備されているうえに、緩傾斜(全区間14kmで僅か200mの落差)なので、子供やお年寄りでも大丈夫です。なお、歩く方向としては、できるだけ上流に向かって、すなわち子ノ口に向かって、遡行する方がより景観を楽しめます。

全体は、滝が見どころの「上流部」(子ノ口〜雲井の滝)、渓流が見どころの「中流部」(雲井の滝〜石ヶ戸(いしげど))、森林が見どころの「下流部」(石ヶ戸〜焼山)の3つに分けることができます。

全行程を歩くと5時間かかるので、時間がない場合や、ハイライト区間を効率よく見たい場合は、上流部+中流部の石ヶ戸→子ノ口(9km)だけでも十分楽しめます。ちなみに、管理人はこの区間を写真を撮りながら4時間かけて歩きました。

もっと端折りたいという忙しい人には石ヶ戸→銚子大滝(7.3km・2時間強)や、更に端折りたいという我が儘な人には石ヶ戸→雲井の滝(2.6km・1時間)というのもあり、ツアー旅行などではこれらの短区間を歩くことが多く、実際、奥入瀬渓流のなかで一番「人通り」が多い区間です。

また、どうしても歩きたくない(!)という横着な人には、渓流に並行する国道102号を走るJRバスの車窓から鑑賞するという手もありますが…(笑)。

    八幡平へ
石ヶ戸にはビジターセンターもあって奥入瀬渓流散策の中間基地になっています。

誰が入れたのか樹の洞にトチの実がいっぱい。

子ノ口から休屋(やすみや)までは遊覧船を利用しましたが、ちょうどこの頃から日差しが出てきて、青空を映した紺碧の湖面と色づき始めた湖岸の景色を楽しむことができました
このあたりは、御倉半島と中山半島に挟まれた「中湖」(水深326.8m=十和田湖の最深部)とよばれるところで、比高200mの急峻な崖が切れ落ちていて、カルデラ湖ならではの景観を見ることができます。

崖の赤い岩は「五色岩」といわれるところで、かつての噴火によるものといわれています。

子ノ口から50分で休屋へ到着です。
休屋の脇を流れる細流が県境になっています。

十和田湖を取り囲む外輪山には多くの展望台があり、もっともポピュラーなのは、湖の南端にある「発荷峠(はっかとうげ)」ですが、そのほかにも「瞰湖台」(↑)や「紫明亭」(↓)といった絶景ポイントもあります。
とくに、「紫明亭」は発荷峠の西500mほどの高台にあって、標高(620m)も発荷峠の展望台より高く、中山半島や御倉半島の向こうには南八甲田の山々まで遠望できます。
観光バスがひっきりなしに出入りする発荷峠展望台に較べて、訪れる人も少なく静かに十和田湖を眺められる穴場スポットです。
八幡平は岩手県から秋田県にまたがってひろがる高原状の火山群で、前編でご覧いただいた八甲田から、奥入瀬渓流、十和田湖とひっくるめて「十和田八幡平国立公園」に指定されています。
見どころは八幡平を横断する「アスピーテライン」(全長26.4km)の沿道で、岩手県側も秋田県側もちょうど見頃を迎えていました。
岩手山(2,038m)の巨大な山体がひときわ辺りを払っています。

県境の見返峠から八幡平頂上を巡る遊歩道(約4km)が整備されていて、高原の沼や湿原を眺めながら1.5時間ほどで周回することができます。

途中の展望台からは、北秋田の山々を眺めることができます。

頂上付近には大小の火口沼が水を湛えています。
「八幡平」という名前からなだらかな丘状の地形を連想しますが、たしかに険しい独峰こそありませんが、標高は八甲田連峰より高い1,614mあり、八甲田と並ぶ樹氷の名所でもあります。
 
また、地形や気流の関係かと思われますが、冬の訪れが早いようで、アスピーテラインも11月4日から来春の4月21日(予定)まで、早々と冬季通行止めに入りました。
この日も麓では秋晴れのいいお天気でしたが、山頂部では白いものが舞っていて、アオモリトドマツの枝には昨夜来の氷雪が残ったままでした。
「錦秋のみちのく」と題しながら、最後は寒々しい景色で申し訳ありませんが、みちのくの短い秋の一コマとご覧いただければ幸いです。