(2016.10.30)

 

 

 

今年も各地の紅葉情報を耳にする季節となりましたが、今回は一足早い秋を求めて錦秋のみちのく路を周遊してきました。

今号では「前編」として八甲田山の様子を、次号では「後編」として奥入瀬渓流と八幡平の様子をご覧いただきます。

全体の行程は右の地図を参照願いますが、青森駅を起点に、八甲田山→奥入瀬渓流→十和田湖→八幡平と周回し、秋田の大館能代空港から帰京しました。

取材時点(10/11〜13)での紅葉の様子は、八甲田は中腹で見頃、山麓で色づき始め、奥入瀬渓流、十和田湖はあと1週間から10日で見頃、八幡平は岩手県側も秋田県側も見頃でした。


今回は朝一番から現地で行動を開始したかったので、青森まで高速夜行バスを利用しました。東京駅から青森駅までJRバス東北が直行便を運行していて、東京駅八重洲南口のバスターミナルから22:30に出発します。八重洲南口はいつ行っても工事中のイメージしかなかったですが、すっかりキレイに整備されて見違えるようになっています。
青森駅へは翌朝の8時に到着し、さっそく八甲田山へ向かいます。八甲田山は青森市街から意外に近くて、ロープウェイの山麓駅まで車で45分ほどです。

101人乗りのゴンドラで山頂公園駅(1,320m)まで、標高差約650mを10分ほどで上ります。

山頂公園駅は田茂萢(たもやち)岳(1,324m)の頂上近くにあって、眼下には青森市街や陸奥湾などがうっすらと遠望されます。
ちなみに、「萢(やち)」という珍しい字は湿地帯を意味する方言です。

山頂一帯には散策路があって、約1時間で一周することができます。
ちなみに、この散策路は8の字のひょうたん(Gourd)形をしているところから、「八甲田ゴードライン」という名前がついています。

八甲田の山頂付近は、アオモリトドマツやハイマツなどの常緑針葉樹が中心で紅葉する木が少ないため、ナナカマドの赤い実がひときわ鮮やかに輝いて見えます。
田茂萢湿原も草紅葉が輝いてすっかり秋の装いです。
散策路はよく整備されているので、防寒(10月上/中旬で晴れていても10℃以下)にさえ留意すれば、足元は軽装でも十分楽しめますが、登山道へ入る場合はそれなりの拵えが要ります。

今回、管理人は酸ヶ湯(すかゆ)温泉へ下るコースを歩きましたが、途中、雨水や雪解け水が登山路に流入して、ひどいぬかるみ状態になっている箇所があって難渋しました。
いよいよ、ここから散策路を離れて酸ヶ湯温泉への下山路に入ります。

ぬかるみばかりに気をとられていると急坂でバランスを崩しやすいので、(登山靴より)ドンドンぬかるみに踏み込める長靴を強くお薦めします。もし行かれる方がおられましたらですが…(笑)。
このモコモコとした枝はアオモリトドマツで、厳冬期にはビッシリと樹氷が付着します。

「ぬかるみ地獄」と格闘すること約一時間、ようやく上毛無岱(かみけなしたい)というところへ出てきました。

「毛無」という気になる(笑)地名は、樹木がまったく無い=「木無し」からきている山岳地名(という説が有力)で、各地で類名を見ることができます。ちなみに、「岱(たい)」とのは山の奥の平らな所を意味する方言です。

デッキでひと息入れます。

東方(↑)には八甲田連峰の主峰、大岳(1,584m)、その左には井戸岳(1,550m)、赤倉岳(1,548m)が、北方(↓)にはロープウェイの山頂公園駅がある田茂萢岳(1,324m)といった峰々が毛無岱を見下ろすように取り囲んでいます。
 ちなみに、「八甲田山」というのは、大岳を主峰とする火山群の総称で、八甲田山という名の単独峰は存在しません。
大岳の山頂には、昨日(10/10)降った初冠雪が眺められます。

毛無岱は、上毛無岱と下毛無岱の2段に別れている広大な湿原で、上下の湿原を結ぶ階段から見下ろす下毛無岱は八甲田の白眉ともいうべき絶景です。
とくに毎年(若干の前後はありますが)10月10日頃には湿原全体が草紅葉で黄金色に輝き、そのなかに点在する池塘(ちとう)が青空を映して、「錦秋という言葉はこの景観のためにこそある」と思える豪華絢爛な眺めに息をのみます。
 
さっきまでの「ぬかるみ地獄」での苦闘も吹き飛んで、「来てよかったぁ…」としみじみ思う一瞬です。
下毛無岱へ下りてきました。
下ってきた上毛無岱方向を振り返ります。
大岳に見送られて、名残が尽きない毛無岱を後に、ゴールの酸ヶ湯温泉へ向けて下ります。

酸ヶ湯温泉の手前にも湯坂という急坂があって気が抜けません。
この辺りもあと数日で紅葉のピークを迎えます。

ロープウェイ山頂駅から、休憩やフォトストップを含めて、4時間かけて下りてきました。へとへと、ドロドロになりながら、しかし妙な充足感に浸りながら…。

酸ヶ湯温泉は古くからの湯治場で、大きな一軒宿があって総ヒバ造りの大浴場「ヒバ千人風呂」が有名です。
今回は時間がなくて立ち寄れませんでしたが、雪の頃にでも再訪してみたい風情のあるところでした。



次号では「後編」として奥入瀬渓流と八幡平の様子をご覧いただきます。
11月20日の更新を予定していますので、ぜひお立ち寄りのうえご笑覧ください。