(2015.5.24)

 

 

 


夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見ゆるは茶摘みじゃないか
茜襷(あかねだすき)に菅(すげ)の笠


ご存知「茶摘み」という文部省唱歌<1912(明治45)年初出>の一節ですが、みずみずしい日本の初夏を情感たっぷりに歌いあげる名曲で、「夏は来ぬ」(♪卯の花の匂う垣根に…)とともに、この時季になるといつも思い出す一曲です。

唱歌の歌詞というのは、見れば見るほどよく練られた文句で感心しますが、小学生には難しい言葉や、今となっては死語に近い言葉も多く、「茜襷」や「菅の笠」といわれても、大人でもピンとこない人が少なくないと思います(笑)。

…とういことで、今回は一番茶の摘み取りが最盛期を迎えている、静岡県富士市の茶畑を取材してきたので、その様子をご覧いただきます。
唱歌の歌詞にある「八十八夜」とは、立春から数えて88日目にあたる日で、今年は5月2日(来年は5月1日)がその日になります。八十八夜は春から夏に移る節目の日として、昔から種々の農作業の目安とされてきました。
茶畑においても、新芽が芽吹くこの時期に一番茶を摘み取るところが多いことから、八十八夜といえば茶摘みの代名詞のようになりました。
静岡県は日本茶の生産量が日本一で、荒茶ベースで我が国全体の約40%を生産しています。ちなみに、第2位は鹿児島県で同30%を生産し、以下、三重県、宮崎県、京都府と続きます。静岡県と鹿児島県だけでほぼ70%を生産していることになります。
静岡県では、牧ノ原台地とその周辺が最大の生産地で、新幹線で掛川のあたりを通過する際、両側の車窓に茶畑を見ることができますが、富士山麓の富士市や富士宮市にもたくさんの茶畑が広がっています。


管理人謹吟

なかでも、今回お邪魔した地区は、とくに景観の保存に力を入れておられて、電柱や防霜用の扇風機といったものが見当たらない(今となっては)貴重な一角のため、私たちも撮影にあたってはマナーを守って、地元の方々とも良好な関係を維持し、いつまでも大切にしたい写材です。


管理人謹吟

この時季、富士山の南面(静岡県側)は、海からの風が山体にぶつかって雲が湧き、昼前には「雲隠れ」してしまうことがほとんどですが、この日はめずらしく一日中その勇姿を拝むことができて幸運でした。

刈り取り前の茶畑は、かまぼこ形のこんもりした畝が続いていますが、刈り取ったあとは生垣のようにツルンとした平面になっていて、いささか興趣に欠けるため、撮影には連休前の4月下旬が適季ということになります。ちなみに、上(↑)の写真の一帯は刈り取り済です。

この日はたまたま茶摘み娘の撮影会に遭遇して、脇から撮らせてもらうことができました。「茜襷(あかねだすき)」は歌詞の通りですが、「菅(すげ)の笠」ではなく姉さんかぶりでした。ちなみに、これは撮影用に準備された衣裳で、(当たり前ですが)こんなコスプレのような格好(失礼!)で、今も手摘みされているわけではありません(笑)。

今は上(↑)の写真のようなエンジン駆動の機械で刈り取るのが一般のようです。摘み取られた茶葉は、機械に取り付けられている布の袋の中に溜まっていく仕掛けです。奥の少し濃い緑色の部分が刈り取り済の畝で、手前の明るい黄緑色がこれから摘み取られる新芽です。

広大な茶畑を刈り取るのは機械でも大変な作業と思われますが、こうして眺める分には何とも雄大で長閑な景色です。



管理人謹吟



帰途、富士本栖湖リゾートで開催されている「富士芝桜まつり」へ立ち寄りました。新聞、雑誌、テレビなどでも報道されているのでご存知の方も多いと思いますが、こちらも好天に恵まれて、平日というのに大変な混雑でした。
前号でも書きましたが、富士山の稜線の優美さは(静岡側より)やはり山梨側に軍配を上げます。

会場は自撮り棒と中国語の嵐(笑)でしたが、皆さんお目当ての富士山を堪能されて大喜びでした。