(2010.10.31)


   

 

 

 

八ヶ岳北麓を横断する国道299号のうち、八千穂高原から麦草峠を越えて蓼科高原の茅野へ至る約40qの区間は「メルヘン街道」と呼ばれていて、標高が1,500〜2,000mの高原を抜けるため、9月末から10月の上旬にかけて、蓼科・八ヶ岳地域では最も早い紅葉の見頃を迎えます。

ちなみに、最高地点の麦草峠は標高が2,127mあって、国道の中にある峠としては、志賀草津道路の渋峠(2,172m)に次いで、二番目に高いことで知られています。このため、11月の中旬から翌年の4月までは、積雪のため閉鎖されるので通行できません。

更にちなみに、麦草峠を挟んで、西麓と東麓では林相が異なり、西麓の蓼科高原側は、どちらかというとカラマツなどの落葉松樹林が多いのに対し、東麓の八千穂高原側は白樺やダケカンバといった広葉樹林が多く、この時期は見事な黄葉を見ることができます。

N's TOWNでは、ちょうど昨年の今頃、八千穂高原を中心に取材し、2009.11.22号でご覧いただきましたが、今回はそこから更に麦草峠方向へ登ったところにある、白駒池の紅葉を取材して参りましたのでご覧いただきます。

白駒池は標高2,115mの高地にあり、周囲1.3q、水深は最大8.6m、標高2,000mを越える山地にある池としては日本最大といわれています。

池の周囲はツガやトウヒの原生林に囲まれ、苔むした倒木が折り重なる昼なお暗い神秘の森……なのですが、紅葉のこの時期ばかりは、早朝から大勢の観光客でごった返し、メルヘン街道は「路駐街道」と化して通過もままならない有様です。
さほどメジャーとも思えない、しかも都心からも遠く、「手軽な観光地」とはいえないこんな場所に、(酔狂なカメラマンならいざ知らず)子供連れからお年寄りまで、紅葉のピークを目指して押しかけるとは、まさに「インターネット恐るべし…」と言う他ありません。

…と、生意気なことを言っていますが、真っ赤に色づいたドウダンツツジや、黄金色に輝くダケカンバが彩る湖畔は、早朝の清々しさと相俟って、訪れるものを魅了せずにはおきません。

湖畔には散策路(木道)が整備されていて、一周約40分で周遊することができます。とくに、南岸の一帯は林間を覆う苔が見事で、さながら「もののけ姫」の世界です。

帰途、昨年取材した八千穂高原も立ち寄りました。ここは白駒池より500mほど標高が低いこともあり、白樺の黄葉のピークにはあと一週間といったところでしたが、カエデ・ウルシ・モミジなどは一足早く見頃を迎えて、秋の木漏れ日に輝いていました。