(2006.2.12)


   

 

    

 

前号は寒々しい氷瀑の写真ばかりで、見てるだけで風邪を引いてしまった」という話も聞きませんが(←そんな人が居られたら管理人冥利に尽きますが…)、今回は陽光きらめく伊豆半島を一周して参りましたのでご覧いただきます。

周遊経路と取材ポイントは右の衛星写真をご参照願いますが、熱海から東伊豆(R135)を南下して石廊崎に至り、更に西海岸(R136)を北上して土肥・修善寺を経て沼津に抜ける、という右回りのコースを辿りました。

最初に立ち寄ったのは下田の少し北方(下田市白浜板戸一色地区)にある「アロエの里」です。そうです、健康食品として人気の高いあの「アロエ」です。温暖なこの一帯に古くから自生していたそうですが、20年ほど前から観光資源として整備され、今では3万本もの「アロエの里」になったとのことです。

ここのアロエは「キダチアロエ」といって、木のように立ち上がった中心茎の先に朱赤色の筒状の花が紡錘状について、(この辺りでは)12月〜2月にかけて下の花房からから順に開花します。私たちが庭先で見かけるアロエとは姿かたちが少し異なりますが、こちらの方が在来種のようです。

ここ(国道135号)から長い階段で海岸へ下ります。しかし、何んでこんな所にブランコが……。

アロエは海岸沿いの斜面や、海沿いの遊歩道、家々の石垣など、いたるところに植栽され群生しています。群青色の海に朱赤色のアロエの花が映えて、ちょっと「南国気分」に浸ることができます。

毎年、花季にあわせて「アロエ祭り」(今年は11/19〜翌年1/31)が開催され、この時ばかりは鄙びた漁師村も朱赤色の花で華やぎ、お隣の爪木崎の「スイセン祭り」と相俟って、大勢の観光客で賑わいます。


爪木崎は下田の北方、須崎半島の東南端にあたり、一帯は自然公園として整備されていて1年中花の絶えない所です。また、近くには昭和天皇が海洋生物の研究に勤しまれた須崎御用邸もあります。

岬の先端が野生スイセンの群生地で、12月中旬〜1月下旬にかけて300万本のスイセンが咲き乱れ、毎年12/20から翌年1/31まで「スイセン祭り」が開催されます。

ここのスイセンはニホンスイセンが中心で、よく見かけるラッパスイセンと比較すると、ラッパ形の黄色い副冠が短いのが特徴です。

岬の先端にある爪木埼灯台です。1937年(昭和12)の設置で、海抜38メートルの高さから相模灘に出入りする船舶の安全を守っています。

なお、(余談ながら)地名は爪木「崎」と書きますが灯台は爪木「埼」と書きます。ちなみに、下でご紹介する石廊崎も灯台は「埼」と書きます。なぜかどこの灯台もすべて「埼」と書きます。(←久し振りに蘊蓄を垂れてみました)
スイセン群生地の裏側(南西側)には奇岩が連なる荒磯が拡がっています。爪木崎は500万年前に火山の溶岩が海中に沈み込んだ所で、火成岩が急激に冷却されてできる見事な柱状節理を見ることができます。可憐なスイセンと荒々しい海岸線という自然の巧まざる演出には感嘆するばかりです。


石廊崎(いろうざき)は相模灘と遠州灘を分ける伊豆半島最南端の岬です。海抜60メートルの断崖が紺碧の海にせり出し、遙か沖合には伊豆諸島を望むという、胸が空くような雄大このうえない景観を欲しいままにできます。

岬の先端には石廊「埼」灯台があります。海抜があるため灯塔自体は高さ9メートルと小振りですが、設置は1871年(明治4)で当初は木造(!)という由緒ある灯台で、石廊崎が古くから海上交通の要衝だったことが伺われます。

かつては岬の近くに「ジャングルパーク(熱帯植物園)」などの集客施設もありましたが、それも閉園(2003/9)してしまった今はすっかり「枯れた観光地(地元の方ゴメンナサイ)」といった佇まいで、それだけに昔と変わらない自然の雄大さに感動を新たにしました。(←フォローになってますでしょうか?)

(右の写真は巨大な廃墟と化した現在のジャングルパーク)

石廊崎を後に、暮れなずむ西海岸に沿ってR136を一路北上し、今回の最後の撮影ポイントである黄金崎(こがねざき)に向かいました。

西伊豆は夕陽の素晴らしいポイントが随所にあって、地元でも展望台を作ったりして観光開発に力を入れています。とくに土肥温泉(伊豆市)周辺が熱心で、恋人岬とか旅人岬といった凝った(関西弁で言うところの「いちびった」)名前をつけて集客に余念がありません。(←地元の方、再び、ゴメンナサイ)

そうした西伊豆の数ある「夕陽スポット」のなかでも、管理人のイチオシがここ黄金崎です。だいたいの場所は上の地図をご覧いただきたいと思いますが、ここのポイントは岬の突端部に切り立った岩壁です。これは風化した安山岩が黄褐色に変化したプロピライトという地質で、落日の光線によって岩肌が黄金色に輝くことから「黄金崎」の名前がついたと言われています。ちなみに、ここは1988年(昭和63)に静岡県の天然記念物に指定されています。

岬全体が自然公園として整備されていて、遊歩道も完備されているので、駐車場も含めてアクセス上の問題はありませんが、撮影できる場所が狭いためシーズンには大勢のカメラファンで混雑します。夕陽そのものより夕陽に輝く岩肌を見るポイントというべきです。

残照に輝く岩肌、夕凪の駿河湾、その向こうに遠慮がちに頭を覗かせている富士山……、いつまでも去りがたい余韻に浸りながら帰路につきました。

……と、キレイにまとまったので(笑)、今回はこれにておしまいです。ご高覧ありがとうございました。次回更新は3月12日の予定です。またのお立ち寄りをお待ちしています。