(2023.5.28)

   

 

今回は埼玉県越谷市にある「花田苑」という日本庭園を取材してきたのでその様子をご覧いただきます。

あまりに立派な庭園なので、県の施設か素封家の持ち物かと思っていたら、越谷市の市立公園と知ってビックリ。市の公園といったら芝生広場や遊具をイメージしますが、一体どうしてこんな異色なことになったのか、さっそくネット情報を繰ってみると…

もともとは畑地だったこの場所の区画整理事業に伴って公園化の計画が持ち上がり、昭和を代表する造園家の中島健氏により1988(昭和63)年から約3年かけて作庭された本格的な池泉回遊式庭園で、約2.1ha(約6,500坪)の園内には約14,000本の花木が植栽され、四季折々の風情を楽しむことができる。

とあります。花田第六公園(別名)が「平成の大名庭園」となったについては、バブル期の申し子と言えなくもありませんが、今こうして身近に本格の日本庭園を楽しめることを思えば、あながち徒(あだ)な時代だったとばかりも言えない気がします。

…と、前置きはこれくらいにしてさっそく園内に入ってみます。
正門は当地の大名主だった宇田家の長屋門を復元したものです。


園内には中央の池を巡るかたちで遊歩道が設けられていて、築山、菖蒲田、橋、舟舎、茶室、四阿などが絶妙に配置されて見事に調和しているため、実際の広さ以上の拡がりを感じることができます。


「日本の庭園100選」にも選ばれただけあって手入れが行き届いていて、この日はサツキやスイレンが園内を彩っていました。
兼六園の「琴柱(ことじ)灯籠」に似た意匠です。
画面奥に見える建物は「こしがや能楽堂」で花田苑と一体で整備されました。


舟舎には趣ある和船が舫ってあります。
園内の茶室では折々に催事も企画されているようです。


中の島へ架かる3つの橋と太鼓橋を一望できる見どころのひとつで、それぞれの橋が独特のリズム感をもって景観に奥行きを醸し出しています。


このあたりはイロハモミジの樹林になっていて、秋の紅葉がさぞかしと思われます。


豪快な石組みを3段になって流れ落ちる滝にサツキが彩りを添えています。
背景の竹林が深山の趣を醸し出して見事です。


築山の裏手には孟宗竹の美しい小径が続いています。
清々しい五月晴れの一日を、ウエディングの前撮りやスケッチを楽しまれるグループなどに交じって、心ゆくまで撮影することができました。
隣接する「こしがや能楽堂」の正門(↑)です。あいにく休館日(毎週水曜日)だったため、(行儀の悪いことながら)塀の隙間から手入れの行き届いた内部(↓)をチラッとだけ拝見し他日を期して引き上げました。