(2023.2.26)

           

 

1月から2月にかけては関東地方の各地で富士山頂に夕日が沈む「ダイヤモンド富士」が見られ、N's TOWNでも何度か採り上げているのでご記憶の方もおられるかと思います。

拙宅(千葉県)の近くにも何箇所か観測スポットがありますが、今年は天候に恵まれないままずっと撮り逃がしてきました。

なにしろ、富士山まで直線距離で約100kmあるため、たとえ自分の周りは晴れていても、途中に雲が懸かったりすると見通すことができず、冬晴れの季節とはいえ、なかなか思い通りにはいきません。
そこで、今回は好天が期待できる日に狙いを定め、山中湖畔まで出向いてダイヤモンド富士を間近に撮影してきたのでその様子をご覧いただきます。

また、今まで山中湖や河口湖方面へは何回も出かけながら、なぜか一度も立ち寄ったことがない富士吉田の町も取材してきました。さらに、途中の都留(つる)市にあるリニアモーターカーの実験線も見学してきました。

いささか詰め込みすぎてテーマに統一を欠きますが(笑)、最後までご笑覧いただければ嬉しいです。



先ずは山梨県立「リニア見学センター」に立ち寄りました。

メインロビーには2003(平成15)年12月に当時の有人走行世界最高速度581kmを記録した実車がシンボル展示されています。その後、2015(平成27)年4月には営業仕様の車両で603kmを記録しています。
最近なにかと「話題」の多いリニア中央新幹線ですが、資料によればリニアモーターカーの研究は旧国鉄時代の1962(昭和37)年にスタートしたとあるので、もう60年を超える(!)長大プロジェクトということになります。
宮崎実験線での実証試験を経て、1997(平成9)年から山梨実験線での走行試験を開始し、現在は42.8kmの区間で実用化へ向けた各種の確認試験が繰り返されています。
体験試乗会も開催されていて、なかなかの人気で高倍率のようです。ちなみに、料金は一区画(2座席)4,400円です。ご興味のある方は<こちら>をご参照ください。


見学センターにはリニア中央新幹線開業後の山梨県をイメージした大型ジオラマも展示されています。
見学センターのテラスからは走行試験の様子を間近に眺めることができますが、5両の短編成なので現行の新幹線の方が迫力があります。
リニアモーターカーというのは磁気浮上して走行するので静かなものかと思っていましたが、ものすごい轟音(風切り音?)とともに通過していくので驚きました。


見学センターの裏山には展望台も整備されていて、開業後の景色をよりリアルにイメージしながら眺めることができます。
意外と短い間隔で頻繁に走行するので効率よく撮影できますが、見学センターが開館日でも走行試験がお休みという日もあるので注意が必要です。
↑↑動画(35秒)も収録したのでご覧下さい。↑↑
(2走目と3走目はどうみても500kmは出ていませんね)

本題のダイヤモンド富士の時刻が近づいてきたので山中湖へ移動します。
この時期、太陽が沈む方向は南から北へ移動していて、春分の日には真西に沈みます。それにつれて、ダイヤモンド富士が見られる場所は日に日に北から南へ移動していて、今日はここがそのポイントのため、まだ日没まで1時間半以上ありますが、既にたくさんの三脚がずら〜っと並んでいます。

山中湖畔は富士山を正面に望む好立地に加えて、1月下旬から2月の下旬まで、湖畔を徐々に南方へ移動しながら、毎日ダイヤモンド富士を狙えることから、数あるスポットのなかでも「聖地」()ともいうべき人気抜群の場所で、遠来の人も少なくありません。

風景写真は「待ち時間」がつきものですが、同好の皆さんと情報交換やカメラ談義をしながら過ごすのも、こうした場所での楽しみのひとつです。
そうこうするうちにどんどん日が落ちてきてダイヤモンド富士の時刻が近づいてきました。
この日は湖面が結氷していたため、逆さ富士に沈む夕日、いわゆる「ダブルダイヤモンド富士」は見られませんでした。
夕日があっという間に沈むことを「つるべ落とし」といいますが、太陽が山頂に接してから完全に没するまで僅か2分ほどで、(大袈裟ですが)地球が自転していることを実感する瞬間です。
日没後も夕焼けを期待して小一時間粘りましたが、この日は空が赤く染まることなく暮れました。それでも、このところずっと不安定だったお天気からすると、今日は夕方まで雲ひとつ懸かることのない絶好のコンディションでした。


2日目は朝から富士山山頂に「だけ」厚い雲が貼り付いて、夕方までずっと離れることがありませんでした。
富士山は独立峰のためこういうことが珍しくなく、それだけに昨日の晴天が貴重で好運なワンチャンスだったことをますます実感したものです。


富士山麓は何度も周遊しながら、富士吉田は通り過ぎるばかりだったので、今回はじっくり見学することにしました。
ここは下吉田地区の商店街から富士山を望むスポットで、この日も朝からたくさんの人がカメラを向けていましたが、私以外はほとんどがアジア系の外国人観光客で、どうしてこの場所を知ったのか聞いてみると、やはりインスタグラムで紹介されていたとのことでした。
このように最近は日本人でもよく知らないような場所で外国人観光客に出くわすことが少なくなく、今さらながらSNSの威力に驚かされます。


これは上吉田地区の入口にある「金鳥居」(かなとりい)で、国道139号を跨ぐように立っています。「金」というのはゴールドという意味ではなく、金属(青銅)製という意味です。
吉田口登山道の入口にあって、霊峰富士の「一の鳥居」とも呼ばれています。富士山へのゲートウエイにあたり、信仰世界と俗界を分かつ結界でもあります。


金鳥居から先の上吉田地区はかつては富士講のお世話をする御師(おし)が集まっていた一種の「社家町」のようなところです。
今も何軒かは現役の御師として活動されているそうです。
「御師旧外川家住宅」というのが公開されていて見学しました。世界遺産富士山の構成資産になっていて、国の重文にも指定されています。
御師というのは各地からやって来る富士講の人々に、自宅を宿所として提供しながら登拝のサポートをするツアーコンダクターのような機能と、富士の心霊を体して加持祈祷などを行う宗教者のような機能を兼帯する特異な存在です。


特定の御師が世話をする富士講のことを檀家といって、外川家の場合は千葉県(木更津市、君津市、市原市、袖ケ浦市など)に多く分布していたほか、
都内(港区、台東区など)にも有力な檀家を抱えていて、こうした先から寄進された調度類や什器が今も現存しています。
この日はアメリカ人(?)の団体も観光バスで来館していて、昨年末まではアジア系の観光客を散見しただけだったのと較べると、ここへきてインバウンドもじわじわと復活してきたのを実感します。


次に富士浅間神社へお詣りしました。
こちらも世界遺産の構成資産で、境内のほとんどの建物が国の重文に指定されていて、巨樹に包まれて神さびた佇まいは、富士山信仰の中心的存在としての風格を感じさせる古社です。
西宮本殿(国の重文)の右手奥に見える鳥居が吉田口登山道の入口になります。


お隣の富士河口湖町は観光やリゾートといったイメージが強いのに対し、富士吉田市は歴史と信仰が今なお色濃く残っていて、まことに趣のある味わい深い町でした。


夕方から更に雲が拡がってダイヤモンド富士は望むべくもなかったですが、今日は「アイスキャンドルフェスティバル」というイベントが開催されるので、もう一度山中湖へ向かいました。
このイベントもご多分に漏れず「3年ぶりの開催」とのことで、既往最多の約1万人(主催者発表)の来場者で賑わいました。
富士山を望む運動広場に並べられた約3,000個のキャンドルに点灯していきます。
スカイランタンも打ち上げられました。台湾が起源の「天燈上げ」に由来するようですが、こちらはヘリウムガスを詰めた風船を和紙で包んだもので、灯りはLEDライトで照らしています。
折角のロケーションですが、厚い雲に遮られて富士山が見えずに残念でした。
18時からは打ち上げ花火がフィナーレを飾りましたが、手持ちでの花火撮影(←三脚使用禁止)はなかなか厳しいものがありました(笑)。


最後まで長々ご覧いただきありがとうございました。m(_ _)m