(2020.9.27)

   

  

埼玉県の南部、綾瀬川と中川に挟まれた春日部、越谷、草加、八潮の一帯は中小の河川が幾条にも分かれて南流し、さらに江戸川と荒川の大河川に囲まれた皿のような地形になっているため水が溜まりやすく、古くから洪水被害の絶えない地域でした。

これら中小河川の洪水を抑止するために建設されたのが「首都圏外郭放水路」で、5箇所の立坑に集めた洪水を国道16号の地下50mを貫く総延長6.3kmのトンネルで春日部市の庄和排水機場へ送り、そこから治水容量の大きい江戸川へ放流するというものです。
1993(平成5年)3月に着工し、総工費2,350億円と13年の歳月をかけて、2006(平成18)年6月に全通しています。稼働回数は毎年5〜10回前後で、周辺自治体の洪水被害軽減のみならず、葛飾区や江戸川区といった下流域の防災にも貢献しています。

前置きはこれくらいにして、今回はその庄和排水機場にある「調圧水槽」という設備を見学してきたのでその様子をご覧いただくことにします。  
資料によれば、調圧水槽というのは5箇所の立坑から地下トンネルを流れてきた洪水を、排水ポンプへ送る前に水勢を弱めたり、ポンプが緊急停止した際の波動を抑えたりするための巨大なプール、とあります。難しくてよく分かりませんが…。(笑)
調圧水槽は芝生広場の地下22mにあってこの入口から入ります。

116段の階段を降りていくと長さが177m、高さが18m、幅が78mの巨大な空間(ほぼサッカー場の大きさ)が広がっていて圧倒されます。

長さ7m、幅2m、高さ18m、重量500t (!)の柱が59本林立している様子がパルテノン神殿(?!)を想起させることから「(防災)地下神殿」と呼ばれています。
奥に見えるのが第1立坑で、各立坑から流れてきた洪水を集めて調圧水槽へ送り込む役割を担っています。
直径が30m、深さが70mあり、写真に写っているのは上部の20mほどです。

このような特異な空間を活かして、特撮作品のロケなどにも利用されているそうです。
見学者が立ち入る区域の床面はキレイに掃除されているので足元が汚れることはありません。
画面の奥がポンプ室になります。

調圧水槽はこの芝生広場の地下にあります。奥の建物がポンプ棟です。
この建物は第1立坑の上屋です。

管理棟の2階が展示室(龍Q館)になっていて、設備のメカニズムや機器の模型などを見学することができます。
ガスタービンで駆動するポンプが4基あって、フル稼動すると毎秒200立方メートル(小学校の25mプールの水量に相当)を14mの高さに揚水する能力があるそうです。

ガラス越しに中央操作室を見ることができます。首都圏外郭放水路の情報が集められ、雨量や水位の監視、ポンプやゲートの遠隔操作を行っています。

地下トンネルを掘削したシールドマシンのカッターヘッド(径12.14m)が展示されていました。