(2019.7.7)

     

  

今からちょうど3年前の2016(平成28)年6月、ツアーのタイトル風にいえば「北辺の花紀行」と題して、利尻島/礼文島を巡る旅に出かけました。

…が、折悪しく980hPaという台風並みの低気圧に狙い撃ちされ、とりあえず礼文島へ渡って濡れネズミになりながら散策したものの、ついにフェリーが欠航になるというので、あわてて稚内へ退散した苦い思い出があります。

詳しい様子は2016/7/10付の「初夏の北海道(前編)」をご覧いただければと思いますが、HP上でも

「倍返しだ!」

とか

I will be back !!

などと息巻いていたように(笑)、その後もずっと捲土重来を期してきました。
今回、ようやく再訪の機会に恵まれ、3年前の宿題を片付けに行ってきたのでその様子をご覧いただきます。

果たして「リベンジ」は成ったのか?

「初夏の北海道Season2」のスタートです。


…と、元気よく始まりましたが(笑)、今号では往路のフェリーと小樽から稚内までの道中を中心に「前編」としてご覧いただき、

本題の利尻島/礼文島については、7月21日に更新予定の次号で「後編」としてお目にかける予定です。

無闇に引っ張るようで申し訳ありませんが、編集作業に些か時日を要するのでご容赦ください。


 
それでは、今回も新潟港から出発進行! 

前回同様、新潟港〜小樽港は新日本海フェリーのフェリーで往復しましたが、新造船が投入されていて、とても快適な船旅を楽しむことができました。

往路の「らべんだあ」(14,173トン)で、2017(平成29)3月の就航です。

車両甲板は(たぶん)3層になっていて、乗用車やバイクなどは上層に搭載されるようです。

甲板に銅鑼の音が鳴り響いていよいよ出航です。 

フェリーですから(大型)トラック等の航送がメインですが、旅客輸送にも力を入れているようで、(客船並みとはいきませんが)船客関係の設備が一段と充実していました。


↑は復路の「あざれあ」の船内です。

いまやLCCを利用して安いチケットを探せば2万円台で成田〜新千歳を往復することも可能ですが、近海フェリーといえども船旅の魅力の一端を味わうことができるので、管理人のように「ご用とお急ぎでない方」()には海路を強くお奨めします。

そうこうするうちにも船はドンドン進んで、能代市(秋田県)の沖合辺りで夕日が日本海に沈み第1日目が終了です。
「どうかこのまま晴天が続きますように…」と夕日に祈りました(笑)。
翌朝、定刻の4:30に小樽港へ着岸し、さっそく札樽道から道央道を一路北上、先ずは「増毛」に立ち寄りました。 

「ぞうもう」ではなく「ましけ」と読みます(←手垢のついたギャグで恐縮です)

ここはJR留萌本線の終着駅でしたが、2016(平成28)125日をもって留萌〜増毛(16.7km)が廃線になり、現在、旧駅舎は開業時の姿に復元改修され、観光・交流施設として利用されています。

画面奥左手の人物は増毛町出身の三國清三シェフで、当地には氏が監修された「オーベルジュ増毛」があります。
廃止時の乗降客は1日20人前後とのことで、もはやJR北海道の企業努力でどうこうできるレベルではなかったといえます。

道内の鉄道事情についてはあとでも少し触れますが、引き続きなかなか厳しい状況にあります。

高倉健が主演した映画「駅 STATION(1981年、東宝)では、増毛駅とその周辺が舞台の中心になり、駅前の「風待食堂」(現在は、観光案内所)や木造三階建ての「旅館富田屋」(昭和8年築、現在は休業中)などの風雪に耐えた味わい深い姿を見ることができます。

また、増毛には我が国最北の酒蔵として有名な「国稀(くにまれ)酒造」があります。

資料室ではかつて使われていた酒造道具や酒器、古いラベルなどが展示されていて、明治から続く酒造りの歴史に触れることができます。

もちろん試飲コーナーもあって好みの銘柄を利き酒できますが、運転中のためお土産に買い求めることにしました。

カツラを被って記念撮影ができるようですが…(笑)。

こちらの建物は「旧商家丸一本間家」の建物で、道北随一の豪商といわれた本間泰蔵氏が築き上げたものです。

本間家は国稀酒造の創業者でもあり、かつてはこの建物に同社の本社がおかれていました。

現在、国の重要文化財に指定されているほか、隣の国稀酒造や駅前の風待食堂、旅館富田屋などとともに、「増毛の歴史的建造物群」として北海道遺産にも選定されています。

大通りから外れるとすぐ日本海です。
エゾタンポポ(日本在来種)をあちこちで見かけました。
このあたりで増毛を切り上げて「日本海オロロンライン」を一路北上し稚内へ向かいますが、オロロンラインのことは、3年前の「初夏の北海道 (前編)でも触れているのでここでは端折って、その代わりに、かつてオロロンラインに沿って伸びていた国鉄「羽幌線」のことについて少し寄り道させてください。


日本線は2015/1から災害のため鵡川〜様似(終点)116kmが運休中のほか、札沼線も2020/5をもって北海道医療大学〜新十津川(終点)47.6kmの廃止が決定しています。
首都圏というか大都市近郊では、鉄道路線の廃止というのはめったに見かけませんが、北海道のそれは凄まじいものがありました。

上の路線図は、ほぼ最盛期の1968(昭和43)年と現在を比較したものですが、札幌近郊や観光地周辺はまだしも、道東や道北においては見事なまでにきれいサッパリ無くなってしまいました。

羽幌線もそうした線区のひとつで、留萌と宗谷本線の幌延を結ぶ全長141.1kmもの長大ローカル線でした。

1958(昭和33)年に全通し、沿線の炭鉱開発や運炭、ニシンの輸送などで賑わったものの、炭鉱が閉山になり、ニシンが去り、それに伴って沿線人口が減少する一方、並行する道路(国道232号)が整備されるにつれ、鉄道はその存在意義を失い、全通からわずか29年後の1987年(昭和62)年3月30日をもって廃線となりました。

ちなみに、2日後の4月1日にはJRが発足しているので、国鉄最後の廃止路線ということになります。

あれから30年以上経った現在、廃線跡は深い草に埋もれて自然に還りつつありますが、それでもトンネルや橋脚といった構造物ははっきりと見て取ることができ、今回も道路脇に車を止めて手軽に撮影できる2箇所を見学しました。

こちらの写真(↑↓)は初山別村にある「金駒内川橋梁」で、国道脇の急斜面に桟道のように張り出した連続陸橋で北進してきた線路が金駒内川を渡るところです。連続陸橋は既に取り壊されて跡形もありませんが、日本海を見下ろす車窓からの眺めは羽幌線の白眉だったことと思われます。

こちらの写真(↑↓)は遠別町にある「旭川橋梁」で、7径間の堂々としたコンクリート橋は、今にも列車がやって来そうな佇まいです。

今や鉄道趣味はすっかり「市民権」を得た感があり、関心の対象も「乗り鉄」や「撮り鉄」というように多岐にわたっていますが、そのなかに廃線跡を専門に探訪している人達がいます。

都市部では廃線跡は道路や建物などに置き換わっていることが多く、古地図を頼りに線路や駅の痕跡を探って歩くのがその楽しみのようですが、

北海道についていえば、もともと人跡稀少の地に鉄道を敷いたため、ひとたび廃線になるや忽ち草木が密生して覆い尽くし、そこにかつて鉄道があったことさえ無かったことにするかのような大自然の猛威を感じます。

それだけに、トンネルや橋梁といった遺構は、貴重な歴史の証人として、かつてそこに鉄道があり、人がいたことを強く訴えかけているような気がします。

これは北海道でよく見かける風景で、「麦稈(ばっかん)ロール」といいます。刈り取った麦藁を丸めたもので、牛の寝床になるそうで、大きい景色の中では小さく見えますが、直径が約1.5m、重さが約350kgもあります。
牧草をロールにしたものもありますが、これは黒や白のラップで包まれています。かつてはサイロに詰めて発酵させていた代わりにラップで包むとのことです。
北海道のバス停はシッカリした「建物」になっているものが多く、これがないと冬場はバスを待つのも命懸けなのでしょう。
オロロンラインはずっと日本海を眺めながら北上しますが、なかでも稚咲内(わかさかない)以北はひときわ最果て感が強く、いやがうえにも旅情がかきたてられます。
海岸近くの砂丘には色とりどりの花々が道北の短い夏を彩っています。
利尻富士が厚い雲に覆われてるのが気懸かりですが…(笑)。
ご存知「ハマナス」です。バラ科の植物で枝にはトゲがあります。ちなみに、ハマナスは雅子皇后陛下のお印でもあります。
「エゾカンゾウ」です。朝に開花した花弁は夕方には枯れてしまう一日花で、ニッコウキスゲと同じ仲間です。
「エゾスカシユリ」です。花弁の根元が細くなっていて隙間があるのが「スカシ」の由来です。
(たぶん)「エゾノヨロイグサ」と思います。シシウドの仲間です。
さらに北進を続けると、笹や低木に覆われた丘陵が何処までもうねる地形が現れてきます。
これは宗谷地方独特の地形で、氷河期の名残といわれています。
まもなくオロロンラインの終点、稚内に到着です。

稚内公園は市街地を見下ろす丘の上にあります。

樺太(サハリン)にまつわる慰霊碑やモニュメントが集まっているため、何ともいえない独特の雰囲気があって、この日も抜けるような青空とたっぷりの日差しに恵まれたにもかかわらず、吹き抜ける風が妙に肌寒く感じられたものです。


…、ということで2日目の日程を終了し、いよいよ明日から島へ渡ります。

「後編」は7月21日に更新の予定です。

どうぞお立ち寄りのうえご笑覧ください。
(笑)


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