(2019.5.19)

 

  

令和最初の更新()は、「10連休」が終わり行楽地の混雑が収まったのを見はからって、長野県を周遊してきたのでその様子をご覧いただきます。

「新緑の信濃路」をイメージして出かけましたが、山間部が中心だったこともあって、ほとんどの木々はまだ葉を落としたままで、残雪に足元をとられる場所もあったりして(!)、「春まだ浅し」といった佇まいでした。

それでは、奥蓼科の「御射鹿池」(みしゃかいけ)からスタートします。

御射鹿池は何の変哲もない農業用ため池ですが、東山魁夷画伯の「緑響く」のモチーフになったり、シャープAQUOSCMに利用されたりと話題豊富な池で、2010(平成22)年には農水省の「ため池百選」にも選定されています。

「新緑を映す深山の湖水」をイメージして行きましたが、標高が1,530mもあるため(雪こそ消えていたものの)ほとんどの木々はまだ葉を落としたままで、何とも寒々しい風景に不十分な事前チェックを悔やみました。



(C)蓼科中央高原観光協会

ということで、御射鹿池を早々に切り上げて、近くの横谷峡(よこやきょう)へ回りました。

横谷峡は八ヶ岳西麓に源を発する渋川が刻んだ渓谷で、渓流に沿って全長6kmの遊歩道が整備されていて、大小の奇岩や滝を眺めながら散策することができますが、今回はそのうち「おしどり隠しの滝」と「王滝」に立ち寄りました。

おしどり隠しの滝は遊歩道の最上流部にある滝で、落差こそありませんが小さな滝が折り重なって、渓流瀑ならではの変化に富んだ景観を見ることができます。

河床を覆っている緑の苔はチャツボミゴケ(茶蕾苔)といって、強酸性の温泉水が流れる場所に育ち、鉱山跡や温泉場などで生息が確認されている珍しいものです。


次に王滝へ回りました。

高台にある横谷観音から急坂を15分ほど下ったところの展望台から眺めます。

王滝は横谷峡で最大の滝で2段になって落ちています。落差は目測ですが2段あわせて2030m位です。

この辺りの河床は鉄分が多いせいか全体に赤茶色に変色しています。



横谷峡を切り上げて「蓼科大滝」へ移動しました。蓼科湖からビーナスライン(県道192号)を少し北上した別荘地区の奥にありますが、途中、図らずも名残の桜にも出合うことができました。

蓼科大滝は広い滝幅と豊かな水量から、落差(mほど)の割りには、とても風格のある美滝です。

岩をはむ清流の瀬音も清々しく、いつまで見ていても飽きません。
渓流釣りの人や、野鳥(カワセミ?)撮影の人も見かけました。


滝の近くには苔むした森もひろがっていて、滝と渓流と森だけで半日は遊べそうです()

さながら「もののけ姫」の世界です(笑)。

ここから今回の主題の鬼無里(きなさ)にある「奥裾花自然園」の様子です。

鬼無里というのは長野県の北部、長野市と白馬村を結ぶ国道406号の中間にある山村で、今でこそ道路が整備され長野市内から1時間足らずで行けるようになりましたが、昔は外界との往来もままならない山深い里だったことが容易に想像できるところです。

現地には鬼無里という地名の由来になった妖女の伝説や木曽義仲にまつわる伝承など、こうした秘境にありがちな物語とそれにまつわる旧跡や地名が残っています。

地区内を流れる裾花川を遡った源流部にあるのが奥裾花自然園で、明治百周年記念事業として1969(昭和44)年に開園、現在では鬼無里地区の貴重な観光資源として多くの来訪者で賑わっているところです。

ブナ林に囲まれた122.6haの園内に点在する大小5つの池や湿原と、これらを結ぶ水路に81万本(!)の水芭蕉が群生し、尾瀬をも凌ぐ国内有数の大群落を形成しています。

毎年ゴールデンウィーク明けが水芭蕉の見頃というので、「10連休」の混雑が終わるのを待ちかねて出かけてきました。

ここも水芭蕉の時期はマイカー規制が行われていて、シャトルバスで入りさらに10分ほど歩いたところが自然園の入口になります。

このあたりは標高が1,2501,300mあり、路肩には除雪された雪が積み上げられています。

立木の根元の雪が他に先立って丸く融けてゆく様子を見ることができます。

これは「根開き」(ねあき、ねびらき)といって、雪国に春の訪れを告げる現象で、春の季語にもなっています。

園内も湿地や水路を中心に雪解けが進んでいる一方、窪地や日陰の部分はまだ残雪がシッカリ残っていて、足元は長靴が欠かせない状況で、残念ながら「81万本の大群落」を一望にすることはできませんでした。



↓↓動画(2分30秒)も撮影したのでご笑覧下さい。↓↓



地元の人の話によると今冬はとくに積雪が多く、訪れた前日にも30cm程の積雪があったとのことで、雪が完全に消えるのは6月頃になりそう()とのことでした。

すでに開花している水芭蕉も、白い花(実際は葉が変形したもの)の先が茶色く汚れているものが多く、きれいな花を探すのに苦労しましたが、これも開花したあと降雪に見舞われて霜焼けしたためのようです。


しかし、雪が解けて沢になってゆく様子や、萌葱色の深緑と残雪の白といったこの時期ならではの自然の表情も見ることができ、ある意味「思いがけない」撮影行となりました。



帰途、奥裾花ダムでは残雪の山々を望みながら今年の桜を見納めることができました。



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