(2018.4.29)

 

  

関東地方の桜はすっかり葉になってしまいましたが、今回取材した4月の上旬は南東北を桜前線が北上中でした。

ちなみに、今号をご覧いただいている4月末からゴールデンウィークにかけては、松前や江差といった道南地方が見頃を迎えている「はず」です。

今回は福島県郡山市の近傍を周遊し、三春の滝桜と周辺の枝垂れ桜などを取材してきたので、その様子をご覧いただきます。

三春滝桜は、郡山の東方、田村郡三春町にある、樹齢推定1,000年超(!)の紅枝垂れ桜で、1922(大正11)年10月に国の天然記念物に指定されています。

資料によれば、樹高=13.5m、幹周り=8.1m(地上高1.2m)、根回り=11.3mの巨樹で、三春町の滝地区にあることと、枝垂れた枝と桜花を滝の流水に見立ててこの名がついたとあります。

日本三大桜(山梨の山高神代桜、岐阜の根尾谷淡墨桜)のひとつだけあって半端ない混雑で、平日の早朝にもかかわらず駐車場はご覧の状況です。車で行かれる場合は9時までに現地へ到着されることを強くお奨めします。


また、(↑の写真のように)滝桜を正面から見る(撮る)場合は西の方角になるため、午後からは(半)逆光になるので、この点からも早い時間の観覧がベストです。


取材日は満開から2〜3日経った頃で、満開を10分咲きとすれば11〜12分咲きといったところでした。

咲き揃ったばかりの可憐な姿も清々しくて気持ちがいいですが、散り始める寸前の絢爛な景色も別趣の味わいがあります。

たしかに、間近で仰ぎ見るとその迫力は一見の価値あり、よく手入れされた見事な枝振りは、滝となってほとばしる流水の趣があります。

樹冠の一枝が何ともチャーミングです(笑)。


滝桜を取り囲むように散策路があるので、全周から眺めることができます。
滝桜の背後の丘にも桜が満開で、梢の間から残雪をいただく安達太良山を遠望することができます。
桜と残雪の2ショットは東北ならではの景観です。



三春町や郡山市(中田地区)には、滝桜のほかにも、見事な一本桜が随所にあって、一日掛けても撮りきれないほどです。
こちらは、「紅枝垂れ地蔵桜」という名前の枝垂れ桜で、滝桜の娘といわれる名木で郡山市の天然記念物に指定されています。
樹齢は約400年、濃い紅色の花や、長く枝垂れた枝ぶりが美しい木です。
地蔵桜という名前は、木の下にある地蔵堂に因んで名付けられたもので、昔から赤ちゃんの短命や夭折の難を逃れるため願をかけたと言われています。
そういえばこの日もお母さんが幼子の手を引いてお参りされている姿を見かけました。

地蔵桜の駐車場近くに咲いていた無名の山桜です。



(C) 郡山観光交通
ちなみに、当地には「枝垂れ桜花番付」というのがあって、滝桜と地蔵桜が東西の両横綱として並んでいます。


こちらは、地蔵桜の近くある「伊勢桜」という紅枝垂れ桜で、樹齢推定250年といわれています。
「番付」では西前頭三枚目になっています。




三春町の中心部にもたくさんの枝垂れ桜を見ることができます。

これは「浪岡邸の桜」(西の大関)です。
「舞鶴城」と呼ばれた三春城址に咲く3本の桜で、別名「お城坂の枝垂れ桜」とも呼ばれています。
この桜は三春藩で代々別格家老職を世襲してきた浪岡家の敷地内にありますが、観桜客の立ち入りが許されていて、お庭から見学することができます。


これはかつての藩講所「明徳堂」の表門で、1947(昭和22)年に現在の場所に移され、三春小学校の校門(!)になっています。
ちなみに、小学校のある場所は藩主の住居や政庁が置かれていた場所とのことです。
城山の中腹にあって勉強には申し分のない環境です。
それにしても学校に桜はよく似合います。


これは「福聚寺(ふくじゅうじ)の桜」(東の大関)です。
現在、庫裡の修復工事中のため桜の近くには寄れませんが、樹齢推定450年の紅枝垂れ桜は遠目にも圧巻の迫力です。


福聚寺は臨済宗の古刹で、戦国時代に三春城主だった田村氏三代の菩提寺でもあります。
ちなみに、作家の玄侑宗久氏は当寺が生家で当寺の第35世住職です。
福聚寺参道脇の民家にも見事な枝垂れ桜が満開でした。


ここは郡山市の西部、JR磐越西線の喜久田駅近くにある「藤田川の桜」です。
今上陛下のご成婚を記念して植樹が始まったとあり、両岸約3kmにわたってソメイヨシノの見事な並木があります。
 
滝桜のように全国的に有名な観光地ではないので、満開の桜を静かに鑑賞するにはうってつけの場所ですが、こんな所(…といっては地元の方に失礼ですが)まで外国からの観光客が来られていて驚きました。



次号では宮城県柴田郡の柴田町と大河原町にかけて広がる「白石川堤一目千本桜」の様子をご覧いただきます。
次回の更新は5月13日の予定です。