(2017.10.15)

 

 

  

長野県は我が国有数の山国ですが、単に山が多いというだけでなく、個性豊かな名峰が多く、なかでも日本アルプスに聳える山々はいずれ劣らぬ秀峰揃いで、アルピニストのみならず、多くの観光客を魅了して已みません。

深田久弥は「日本百名山」の後記で、その選定基準として山の品格/歴史/個性の三点をあげていますが、こうした百名山のうち29座(御嶽山を含む)が日本アルプスに居並ぶという一事がすべてを物語っています。

今回はそうした百名山のひとつで、中央アルプスの主峰ともいえる「木曽駒ヶ岳」と「千畳敷カールの紅葉」を取材してきたので、その様子をご覧いただきます。

中央アルプスは木曽山脈の別名で、木曽谷(木曽川)と伊那谷(天竜川)を画しつつ、南北約100km、東西約20kmにわたって連なる山塊です。

木曽駒ヶ岳は中央アルプスの最高峰(2,956m)ですが、途中の「千畳敷」(2,612m)までロープウェイで上がれるため、手軽な日帰り登山の山としても人気があるところです。
まずは伊那谷側の登山口である駒ヶ根からスタートです。ちなみに、木曽谷側は上松(あげまつ)が登山口になります。
ロープウェイの麓駅まではマイカー規制が敷かれているためシャトルバスで上がりますが、この日は好天のうえに千畳敷の紅葉が見頃とあって、まだ6時前というのにバスセンターには長蛇の列ができていました。

麓のしらび平駅から約7分で山上の千畳敷駅へ到着します。
ちなみに、このロープウェイの高低差(950m)と千畳敷駅の標高(2,612m)はともに日本一だそうです。

麓(南東方向)を振り返ると、眼下に駒ヶ根の市街地、その向こうに南アルプスの山々が遠望でき、さらにその向こうには富士山が頭を覗かせています。
千畳敷駅を出ると「千畳敷カール」が広がっています。
カールというのは氷河によって削られたお椀のような地形で、日本語では「圏谷」(けんこく)といいます。
初夏から夏にかけては高山植物が咲き乱れるお花畑ですが、この時期はナナカマドやダケカンバが色づき、緑のハイマツや白い岩峰と絶妙のコントラストを見せ、青空をバックに素晴らしい山岳風景を楽しむことができます。
カールは日本アルプスのいたるところで見ることができ、奥穂高岳直下の涸沢カールも見事な紅葉で有名ですが、上高地から片道6時間も歩く必要があるのに対し、ここでは手軽に大パノラマを楽しむことができます。

カールの底を回るかたちで遊歩道が整備されていて、ここを巡るだけでも十分堪能することができます。
遊歩道にある「剣ヶ池」というポイントです。薄氷が張っていました。
…で木曽駒ヶ岳はどこにあるのかというと、カールの底から稜線へ登り、さらに尾根伝いに中岳山頂を経て、木曽駒ヶ岳の山頂に至ります。右の地図に赤い破線で記入したのがそのルートです。
ガイドブックによれば、千畳敷駅~木曽駒ヶ岳山頂のコースは「初級」で、往復の所要時間は約4時間とありますが、管理人のように普段運動不足の者にとっては結構なハードワークです。
とくにキツイのはお椀(カール)の底からお椀の縁へ上る「八丁坂」という箇所で、先ほどの地図でも分かるように、約200mの高低差をほぼ直登するのでなかなか堪えます。
さらに、標高も2,650mを超えているため、高地に馴れていない管理人などは、たちまち息が上がってしまいます。
「蟻の熊野詣」という言葉が思い出される光景です(笑).
稜線の「乗越浄土」へ辿り着いたときはヘトヘトでしばらくへたり込んでしまいました。
ちなみに、「乗越」と書いて「のっこし」と読みます。山の鞍部を表す登山用語(?)のようです。
乗越浄土から中岳(2,925m)へ向かいます。画面右手の岩山は宝剣山(2,931m)です。ここからは尾根道を歩くので八丁坂のような急登はありませんが、中岳も木曽駒ヶ岳も大きな岩がゴロゴロしているところを登り降りするため足元から目が離せません。

中岳から見た木曽駒ヶ岳です。中岳からいったん60mほど下って鞍部にある「頂上山荘」(青い屋根)の脇を通り、あらためて100mほど登り返した先が木曽駒ヶ岳の山頂です。

木曽駒ヶ岳の頂上へ向けて最後の登りです。
ようやくゴールの木曽駒ヶ岳山頂に到着です。
頂上はなだらかで結構なスペースがあるため、大勢の人が360度の景観を楽しんでいます。
「木曽駒ヶ岳神社」の奥宮です。里宮は麓の上松町にあります。
頂上にはもう一社、「伊那駒ヶ岳神社」の奥宮もあることを帰ってから知りました(残念!)。

正面が中岳、その右奥が宝剣岳です。

木曽谷方向です。
右手奥に雲が懸かっているのが3年前に噴火した御嶽山(3,067m)です。
乗鞍岳から北アルプス方向を望みますが、雲が懸かってよく分かりません。

山頂からの眺望を1時間ほど堪能して、もと来た道を帰途につきます。
正面の中岳への最後の登りが堪えます(笑)。
画面奥の左手に富士山が少し頭を覗かせています。

ヘロヘロになりながら中岳を越えて乗越浄土へ戻ってきました。
千畳敷カールを見下ろしながら八丁坂を慎重に下ります。
午後の斜光に紅葉が映えて疲れも吹っ飛ぶ絶景です。
朝に眺めた剣ヶ池を見下ろします。
無事、千畳敷駅へ戻ってきました。
写真を撮りながらではありますが往復7時間の行程になりました。
よく頑張りました、疲れました(笑)。

ハイシーズンには午後の下りロープウェイが混雑します。この日(9/29)は平日(金曜)だったので1時間待ちで済みましたが、翌々日の10/1(日曜)は最大3時間半待ち(!)になったようです。


次号では乗鞍岳の紅葉をご覧いただきます。
次回の更新は11月5日の予定です。