(2014.5.25)

 

 

「京都会議」というと1997(平成9)年に開催された地球温暖化防止へ向けての国際会議ですが、実はもう一つ「全国京都会議」というのがあって、こちらは全国の「小京都」を名乗る市町村が、イメージアップや観光客の増加を目的に、1985(昭和60)年に結成されたものです。

現在、全国京都会議に加盟している市町村は、青森県弘前市から鹿児島県知覧町まで全国に49あり、このほかにも自称他称を含めると100近い「小京都」があるそうですが、今回は「みちのくの小京都」と呼ばれる秋田県の角館(かくのだて)町を取材してきたのでご覧いただきます。

角館は秋田県のほぼ中央部に位置し、三方を小高い山に囲まれた町の西側を桧木内川(ひのきないがわ)が南流する静かな城下町で、江戸時代に秋田藩の支藩として町並みの整備が進み、今日の姿になったそうです。

町は内町(うちまち)と呼ばれる武家屋敷が連なる一角と、外町(とまち)と呼ばれる商家が軒を並べる一角とが判然と区分けされていて、藩政時代の町割りを今もそのまま見ることができます。

なかでも、鬱蒼とした木立と重厚感たっぷりの黒板塀が往時の姿を今に伝える武家町は、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)の指定を受けており、文化財として保護されています。

角館のこうした景観を利用して映画、テレビやCMの撮影が数多く行われていて、有名なところでは「たそがれ清兵衛」(2002年)や「隠し剣 鬼の爪」(2004年)、「釣りバカ日誌 第15話」(2004年)など(いずれも山田洋次監督)が角館を舞台にしています。

角館は四季折々に風情のある町で、年間250〜260万人が訪れる東北屈指の観光地ですが、やはり桜の頃が最も華やぐ時季で、桜祭りの期間(約2週間)だけで150万人前後が訪れ、大変な賑わい(=混雑)をみせます。
角館の桜には、武家屋敷通りにある枝垂れ桜と桧木内川左岸のソメイヨシノの2つがあります。武家屋敷通りの枝垂れ桜は歴史が古く、1664(寛文4)年に第2代所領佐竹義明公に京都から嫁いできた姫君のお輿入れ道具の中に、故郷を偲ぶ縁にと枝垂れ桜の苗が3本入っていたことがその始まりと言われています。現在約400本ある枝垂れ桜の中で153本が国の天然記念物に指定されています。
ここは角館小学校の跡地です。こういう素晴らしい環境で勉強できた子供たちは幸せです。

武家屋敷通りに面して築200年近い屋敷が建ち並び、黒板塀からこぼれる枝垂れ桜が圧巻です。
なかでも、「樺細工伝承館」前の枝垂れ桜(↑の写真)が最も見事で、早朝から大勢の観光客で賑わっています。管理人も大曲に前泊して、朝食も早々にこの場所へ急行しましたが、午前8時で既にこの状況で人の絶える間がありませんでした。

9時を過ぎると団体客が入り始め、9時半には東京からの最初の新幹線も到着し、あとは怒濤の人並みにのまれて、写真撮影どころではなくなりました。地元の方によれば「6時頃に来ればゆっくり撮れる」そうです(笑)。
町中が薄紅色に染まって、一年で最も華やかな季節を迎えます。
角館の町を見下ろす古城(ふるしろ)山へ登ります。
かつて、角館城が築かれたところで、山といっても標高165メートルの小さな高台のような場所ですが、ここを基点にして城下町の縄張りが行われたとのことです。
眼下を流れるのが桧木内川です。

商家が集まる外町まで足を伸ばす人は少ないため、武家屋敷の雑踏から逃れて、ゆっくりと散策することができます。
今なお盛業中の老舗や土蔵、見事な枝垂れ桜などがあって、見逃せない一角でもあります。

1853(嘉永6)年創業の安藤醸造元の座敷蔵には立派な襖絵が残っています。

桧木内川堤のソメイヨシノは、1934(昭和9)年に天皇陛下(当時皇太子)のご生誕記念として植えられたものが始まりで、1975(昭和50)年に国の名勝に指定されています。
現在では約1万本の桜が全長2kmにわたって植えられ、残雪の山々を背景に「北国の春」を彩っています。


以下は「付録」です。
田沢湖近くの刺巻湿原にある水芭蕉と、西木町にあるカタクリを取材しました。

最後に、秋田市内の千秋公園に立ち寄りました。秋田藩佐竹氏20万石の居城趾で、ソメイヨシノを中心に約800本の桜が植えられています。