(2014.3.23)

     

 

関西には50q圏内に大阪国際空港(伊丹空港)、関西国際空港(関空)、神戸空港の3空港(八尾空港を含めると4空港)が近接していて、首都圏以上に空港密度の高い地域ですが、今回はそのなかで最老舗の伊丹空港の周辺で取材してきたのでご覧いただきます。

伊丹空港は、1994(平成6)年に関空が開業してから国際線の就航がなくなりましたが、大阪市内からのアクセスが抜群ということもあり、発着回数でも利用旅客数でも関空を凌ぎ、東の羽田に対する西の基幹空港として、今なお輝きを失なっていません。

関空との関係も、開港当初は一部の国内線を関空に移管されるなど競合関係にあり、伊丹の廃港を主張される向きもありましたが、2012(平成24)年からは両空港会社が統合され、伊丹の利用促進と再活性化を推進し、その収益で関空の国際競争力を強化する、といった方向に変化しつつあるようです。

伊丹空港は周囲を住宅地が取り囲む立地条件から、国内空港の中でもかなり早い段階から厳しい騒音の規制と運航の制約が課せられてきました。空港の運用時間(7時〜21時)や、一日の発着回数(370回)の規制は1970年代に決定されたまま、現在もまったく変わっていませんし、四発機の乗り入れも2006(平成18)年から全面禁止になっています。

その後、ジェットエンジンの改良により騒音が格段に小さくなったり、運航コストの削減から四発機自体が日本の空から退役したりで、空港を取り巻く運航環境が往時に較べて改善してきたことから、周辺自治体とも今では共存共栄の関係にあるようです。技術革新や経済環境の変化により、ようやく時代が規制に追いついてきた、とみるべきかも知れません。

…ということで、おさらいはこれくらいにして(笑)、本編へ移ります。

伊丹空港は北西から南東方向に長短2本の滑走路が並行していますが、今回はその長い方のB滑走路(3,000m)の南端近くから、離発着する飛行機を撮影しました。

ここは、飛行場の南東縁をなぞるように流れる千里川の護岸上(土手)で、航空ファンの間では「千里川土手」と通称されています。滑走路端から60m(!)という超至近距離にあり、着陸寸前の大型機が頭上20〜30m(!!)を飛び越えていく迫力満点の撮影ポイントで、「ヒコーキ撮影の聖地」(笑)ともいわれています。ちなみに、伊丹空港は敷地のほとんどが兵庫県伊丹市に属しますが、このあたりは大阪府豊中市(原田中)になります。

もちろんここは所定の見学場所ではありませんが、川の両岸にフェンスが設置されていて、安全に飛行機を見学できるため、アクセスには苦労する場所(最寄りの阪急宝塚線曽根駅から徒歩20分)ですが、週末はもちろん平日でも、地元はもとより、(管理人のように)遠来の来訪者(笑)もふくめ、たくさんの航空ファンや家族連れで賑わっています。
海外では似たような場所として、カリブ海のプリンセス・ジュリアナ国際空港(→の写真)が有名ですが、国内でこれほど間近に飛行機を撮影できる空港は他に知りません。

(C) Wikipedia
さすがに「西の基幹空港」だけあって、飛行機はひっきりなしに飛んでくるので、退屈するということはありません。
B滑走路から出発する飛行機も間近に眺めることができます。↑の飛行機は羽田行きのB-767です。

空港の北側には宝塚方面の山が迫っているため、離陸機はこのあと上昇しながら左へ旋回していきます。手前のプロペラ機は松山行きのDHC-8で、これから離陸へ向けて位置につくところです。

伊丹空港では発着枠=1日370回(前記)のうち、ジェット機は200回(プロペラ機は170回)までと定められているため、近距離路線を中心にこうしたプロペラ機が多用されています。
この飛行機はボンバルディア社(旧、デ・ハビランド社)のDHC-8といって、伊丹空港で最もよく見かけるプロペラ機ですが、今ではこのプロペラ機よりさらに低騒音(!)の中型ジェット機が出現してきたため、2015年までにプロペラ機の発着枠を低騒音ジェット機へ振り替えることになっていて、(発着回数はそのままで)輸送力の向上と空港利用者の増加が期待されています。

B737-800(↑の写真)やE-170(↓の写真)やA-320(→の写真)といった低騒音中型ジェット機は、今まではジェット機枠で就航していたのが、これからは比較的余裕のある(旧)プロペラ機枠で就航できるようになるため、プロペラ機からの転換が進むとともに、既に満杯になっているジェット機枠の捻出にも寄与することになり、両面から輸送力の向上が図られることになります。

(C) Wikipedia
ここは、空港の南側に隣接する「伊丹スカイパーク」というところで、(千里川土手とは違って)国が造成した全長約1km、総面積9haの立派な展望施設です。ターミナルビルや駐機場が正面に遠望でき、駐車場や売店なども完備していて、JR/阪急伊丹駅からバスで10分程度の便利なところです。
B滑走路に沿った小高い場所にあり、離着陸の瞬間を至近距離で撮影できることから、千里川土手と並ぶ人気スポットです。
沖縄から到着したB-787です。

羽田から到着したB-777です。


次号はいつもの通り「ネイチャーフォト」でご覧いただきます。

新しい号で「羽田空港」も採り上げています。
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