(2012.11.11)


   

 




  

名だたる秀峰がひしめく北アルプスだが、西側の立山連峰と東側の後立山(うしろたてやま)連峰に分かれ、二つの山塊は黒部峡谷を挟んで対峙している。

後立山連峰は、立山や剱岳といった信仰の色濃い立山連峰の後に控えることから、そのように呼ばれている。

後立山連峰は、その山稜に沿って富山県と新潟県/長野県の県境が走っていて、北端は北陸道最大の難所とされた親不知の断崖となって日本海に落ち込んでいる。

一方、南方の稜線は、黒部川の源流に位置する三俣蓮華岳で立山連峰と合流し、槍ヶ岳、穂高岳、焼岳などを経て最南端の乗鞍岳へと連なりながら、岐阜県と長野県の県境を画している。

ちなみに、この後立山連峰の赤沢岳(2,678m)の直下を貫き、長野県側の大町市扇沢と富山県側の黒部ダムを結んでいるのが、全長5.4qの関電トンネルで、立山黒部アルペンルートの一部として、トロリーバスが運行されている。

深田久弥は「日本百名山」の後記に、その選定基準として山の品格/歴史/個性の三点をあげているが、北アルプスの山々は、いずれもそれらの基準を充たして余りある名峰揃いであり、百名山のうち、北アルプスだけで15座を占めている一事がすべてを物語っている。

…と、深田久弥まで引っ張り出して物々しい書き出しになってしまいましたが、どうもこういう大きい景観の話になると、肩に力が入りすぎて失礼しました(笑)。

今回は、その後立山連峰のうち、白馬山麓を中心に、一足早い紅葉を取材してきたのでご覧いただきます。

前半は「八方尾根」です。八方尾根は白馬連峰の主峰のひとつ、唐松岳(2,696m)付近の稜線から延びる約7.5km、標高差約1,900mのなだらかな尾根です。

八方尾根は古くからスキー場として開発されたところで、管理人も学生時代に何度か行ったことがあります。1998(平成10)年の長野オリンピックの際には、アルペンスキーの競技会場となったので、ご記憶の方もおられるかと思います。

麓から3本のゴンドラ/リフトを乗り継いで一気に標高1,830mまで上ります。
ここから標高2,060mの八方池までのコースが、「八方尾根自然研究路」として整備された約2.5kmのトレッキングコースになっています。

ルートは木道や階段等で整備されているので、特別な登山装備は不要ですが、終点近くはガレ場が続くため、足元はそれなりの準備が必要です。
ここは紅葉を楽しむというより、天空に開けるアルプスの絶景を眺めるところです。
麓(標高773m)を出発するときは、天気予報の通り快晴でしたが、気温が上がるにつれてガスがかかってきて、トレッキングコースの終点にある八方池へ着く頃には、すっかり視界が遮られてしまいました。
八方池は、背後の白馬三山(白馬岳/杓子岳/白馬鑓ヶ岳)を水面に映す秀麗な姿から、「天上の池」ともいわれるコースきっての絶景ポイントですが、残念ながら次回までのお預けとなりました。




後半は「栂池(つがいけ)高原」です。
栂池も古くからスキー場として開発されてきたところで、麓の「鐘の鳴る丘ゲレンデ」は緩傾斜のファミリー向けゲレンデで、管理人もスキーを始めた頃には大変お世話になった懐かしいところです。

麓からゴンドラとロープウェイを乗り継いで標高1,829mまで上がります。

麓は低い雲に覆われていましたが、雲上まで上がると眩しい朝陽に紅葉が輝いていました。上(↑)の写真はロープウエイの車窓から遠望する白馬三山(白馬岳/杓子岳/白馬鑓ヶ岳)です。

栂池高原は八方尾根の北側、白馬岳(2,932m)の山懐にひろがる総面積約100haの高層湿原で、標高1,900m〜2,000mの高地にいくつもの沼や湿原が点在して、これらを縫うように一周約5.5q(所要約3.5時間)の散策路が整備されています。

紅葉とダケカンバの白い樹皮がイイ感じに織り重なっています。
この辺りは初夏には水芭蕉が見られる湿原(1,860m)です。ロープウェイの山頂駅にも近く、バリアフリーの周回路もあって、車いすでも安心です。
正面奥に聳えているのが、後立山連峰の最高峰、白馬岳(2,932m)です。
この辺りは「ワタスゲ湿原」(1,870m)といって、夏期にはワタスゲやニッコウキスゲが咲き乱れますが、この時期には周囲の山々が錦秋の装いで彩りを添えます。
ワタスゲ湿原から先は登りにかかるため、ここで引き返す人も多いですが、散策路として整備されているので、履き物さえキチンと準備していれば、子供でも平気です。
さらに奥へ進みます。先ほど通過してきたワタスゲ湿原を見下ろします。その奥の赤い屋根のある辺りは、ロープウェイの山頂駅付近です。

昨日(八方尾根)の経験をもとに、ガスが上がってくる前に、撮影を急ぎながら散策路を進みます。
ここは「浮島湿原」(1,920m)といって、栂池高原の白眉ともいうべきフォトポイントです。後の山は左手奥が白馬岳、右手は小蓮華山(2,766m)から白馬乗鞍岳(2,469m)へ続きます。
ここは「もうせん池」という小さな湿原で、奥に見える尾根が散策路の最奥部になります。

ここは散策路の最奥部にある「展望湿原」(2,010m)で、正面に白馬岳の大雪渓が望める絶景ポイントですが、管理人が到達した時には、既にガスが先回りしていて、視界が遮られてしまいました。

展望湿原から急なヤセ尾根を下って帰途につきます。眼下に雁股池が見えています。

高地で一日中晴天に恵まれることは、よほどの幸運でもないかぎり難しいようで、なかなか簡単には撮らせてもらえません。


(C) 小谷村観光連盟
山の秋はとても短くて、ロープウェイの夏期営業も11月4日で終了しました。八方も栂池も冬リフトへ模様替え(上の左写真)が始まります。今回取材したのは10/9〜10でしたが、2週間後の10/24には早くも初雪が降り、2〜3p積もったとのことです。上の右写真はその時の「浮島湿原」の様子です。