(2011.5.8)


   

 

 

  

群馬県には「上毛かるた」(初版=昭和22年)というのがあって、「つ」の札(ふだ)は「鶴舞う形の群馬県」となっています。右の地図をご覧の通り、鶴が右下(南東)に首を向けて、上下(北東〜南西)に翼を拡げたような形をしています。

今回はその鶴の嘴(くちばし)に位置する館林市へ出かけて、「県立つつじが岡公園」を取材してきましたのでご覧いただきます。

一般に県境線というのは、主要河川や山の尾根筋に沿って走っていることが多いため、このように尖った形になっている箇所は、河川の合流部によく見られます。

館林の場合も、利根川と渡良瀬川の合流部に位置しています。ちなみに、千葉県の北西部も、利根川と江戸川に挟まれる形で、埼玉県と茨城県に割り込んでいます。

こうした河川の合流部は、古くから交通の要衝や物資の集散地として栄えたところが多く、館林の場合も、一帯の特産品であった大豆や小麦などを商う穀物問屋が多く、なかでも上州きっての豪商といわれたのが「正田家」です。

現在では「正田醤油」の名前で醸造業を盛業中で、キッコーマンなどのナショナルブランドには及びませんが、それでも関東地方では一般の店頭で普通に見かける名前です。また、この正田醤油の分家筋にあたるのが、館林製粉(現、日清製粉)を興した正田貞一郎氏で、皇后陛下の祖父君にあたります。

…と、畏れ多くも止ん事無い方面へ脱線しそうなので本題へ戻ります。ここは古来より野生のヤマツツジが密生していたところで、歴代の藩主・城主により手厚い保護・育成が図られてきた結果、1934(昭和9)年には「躑躅ヶ岡」の名前で国指定の名勝に指定され、現在では約5万uの園内に約1万株のツツジが妍を競っています。

ちなみに、「躑躅」という難しい漢字は、どこか禍々(まがまが)しい雰囲気ですが、「てきちょく」と音読し、辞書によれば「ためらい立ち止まること」とあります。毒性のあるレンゲツツジを食べた羊が「足踏みしてうずくまってしまった」という中国の故事から、ツツジの漢名に転用されたとの説明が一般ですが、わが国植物学の泰斗である牧野富太郎博士は、躑躅という漢字をあてるのは誤用であると言われています…と、またまた脱線しそうなので先へ進みます。

園内では50余種のツツジが植栽されていますが、公園の成り立ち(前記)からして、ヤマツツジが多く、とりわけ他所ではあまり見かけない巨樹や古木が目を惹きます。

つつじが岡公園の近くには、童話「ぶんぶく茶釜」で有名な茂林寺があります。表紙の可愛いタヌキも茂林寺の境内で「撮り押さえた」ものです。


今年は1枚も桜を撮らないうちに、気がつけば季節は春から初夏へ移りつつあります。3月の大震災から間もなく2ヶ月、今年も陽光降り注ぐ野山に季節の花々が咲き揃いました。毎年撮り続けてきた風景ですが、今年ほど季節の確かな巡りに心洗われることはありません。