(2011.3.27)


   

     

 

  

3月初旬のシカゴは、ミシガン湖から吹き渡る冷たい風に、時おり小雪が舞う毎日で、街行く人たちはフード付きの分厚いコートを着込み、「春まだ遠し」といったところでした。

今回は、そんなシカゴへ出張する機会があり、仕事の合間に(…と言いながら、160枚も(!))撮ってきましたので、ご覧いただきます。

シカゴへ行ったら、シカゴ美術館(
The Art Institute of Chicago)と、ループ(Loop)と呼ばれる市内循環の高架鉄道を、ぜひ見学したいと思っていたので、重点的に取材してきました。
先ずはシカゴ美術館です。メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ボストン美術館(ボストン)とともに、アメリカの三大美術館の一つに数えられる美術館で、モネ、ドガ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、スーラなどの19世紀フランス印象派や、その周辺のヨーロッパ近代絵画では、世界屈指のコレクションを誇ります。

スーラの代表作「グランド・ジャッド島の日曜日の午後」(Un dimanche apres-midi a l'Ile de la Grande Jatte)です。当館の収蔵品のなかでも白眉というべき作品で、寄贈者の遺言により門外不出となっているため、ここでしか見ることができません。美術の教科書などでご覧になった記憶があるかと思いますが、その実物をこうして間近に見ることができるのは感動ものです。ちなみに、写真撮影もフラッシュを使用しなければ自由、というのも日本では考えられません。

この作品も有名なゴッホの自画像です。ガラスケースに納まっているわけでもないので、顔を近づけて絵筆のタッチを目の当たりにすることができます。

シカゴ美術館の近くにあるミレニアム・パーク(Millennium Park)というところから眺めた高層ビル街です。シカゴは個性的なデザインのビルがたくさんあって、街全体が建築博物館(Architecture Museum)とも呼ばれています。

ミレニアム・パークにあるクラウド・ゲート(Cloud Gate)というオブジェです。高さ10メートル×幅20メートル×奥行き13メートルのステンレス製で、その表面に周囲の高層ビル群を映し出しています。
クラウン・ファウンテン(Crown Fountain)というオブジェで、50フィート(約15メートル)のタワーが向かい合って建っていて、タワーの表面にはLEDで人の顔(動画)が映し出されます。

ジェイ・プリツカー・パビリオン(Jay Prizker Pavilion)という野外コンサート会場で、夏期には無料のコンサートや映画が毎日のように企画されて、シカゴの夏を満喫させてくれます。

シカゴ美術館とミレニアム・パークはこれくらいにして、「本題」(?)の高架鉄道へ移ります。

シカゴの中心部、東西500メートル、南北900メートルの区画に、環状に敷設されている高架鉄道がループ(
Loop)です。

右の路線図をご覧ください。ループには5つの路線が乗り入れていて、郊外から都心部へ、都心部から郊外へスムーズに往来できるように設計されています。

したがって、山手線のように、他線と相互乗り入れをせず、ただグルグルと回っているのではなく、どちらかというと、阪和線や関西線(大和路線)が乗り入れてくる大阪環状線のイメージに近いと思います。
ループの開業は1892(明治25)年とありますから、無骨な鉄骨の高架橋にも一世紀を超える歴史の重みを感じます。

列車の走行音が古びた高架橋の悲鳴と共鳴して街中に響き渡り、独特の雰囲気を醸し出しています。年代物のビルをかすめて通り過ぎるこの辺りは、有楽町や新橋付近の感じがしなくもありません。

車両は全て直流600ボルトで、線路脇の第三軌条と呼ばれる電源線から集電する仕組みになっているので、パンタグラフや架線は見当たりません。これは、東京メトロの銀座線や丸ノ内線、大阪市営地下鉄の御堂筋線などと同じ仕組みですが、集電用の第三軌条に覆いがなく、剥き出しになっているので(右写真)、ちょっとドキッとします。
これは非常階段の降り口ではありません。高架駅への入口です。エスカレーターやエレベーターが完備された最近の駅に較べると、とても「バリアフル(Barrier full)」(笑)ですが、何しろ駅全体が鉄骨剥き出しのワイルドな構造なので、妙に溶け込んでマッチしています。

駅舎も19世紀にタイムスリップしたような、実に「渋いっ!」佇まいです。冬場の凍結対策のためでしょうか、プラットホームも通路も、床はすべて木製になっています。

シカゴの中心部は道路が碁盤の目にように配置されていて、その上を高架鉄道が長方形に周回している(上記路線図ご参照)ので、四隅のコーナー部では、交差点の直上で90度方向を変えることになります。

いくらアメリカの道路は広いといっても、都心部では日本の道路とさほど違いません。路面電車ならともかく、4両編成の普通の電車が、銀座4丁目の交差点で右(左)折する光景を想像してください。

その様子が上の写真です。交差点上の急カーブを、身を捩らせるようにして通過していきます。(向かいのビルの上から撮らせてもらえるとベストアングルなのですが…)
さすがに車長は少し短め(15メートル程)で、台車も車端に寄せて、カーブを切り易くしてあるようですが、それでも車体の中央部では、(ご覧のように)高架橋からはみ出しています。

正確なことは分かりませんが、地図に物さしをあててみると、半径が約30メートル(30R)という猛烈な急カーブ(左写真)になっています。

ちなみに、30Rというのは、箱根登山鉄道に何ヶ所かありますが、一般の鉄道ではあまり見かけません。

遊園地などで園内を周遊している列車がありますが、ループもそれに通じるところがあって、「乗っても・撮っても」飽きない楽しさがあります。

「ループの急カーブ」はぜひ見てみたいシーンだったので、何時もに増して、くどくどしくなってしまいご無礼しました。
シカゴ川を渡る列車です。川の左手がリバーノース(River North)と呼ばれている地区で、ホテルや有名デパートといった商業施設が集中しています。右手はループに囲まれた地区で、(その名も)ループと呼ばれていて、政治・経済の中心地になっています。年代物の鉄橋と近代的なビル群が絶妙のコンビネーションを見せるシカゴらしいフォトスポットの一つです。

上の写真はシカゴ川に面して建つ「マーチャンダイズ・マート(Merchandise・Mart)というビルです。1931(昭和6)年の竣工で、当時は世界最大の商業ビルだったそうです。アメリカがまだ世界から尊敬されていた時代の建物らしく、いかにも「威風堂々」としています。かつては、ここでアパレルやインテリア関係の展示会が盛んに開催されていました。

大阪(天満橋)にも「大阪マーチャンダイズ・マート」(通称、
OMMビル)というのがあって、河畔(大川)に位置していることや、衝立のような横長の形状や、アパレル関係の催事が多いことなど、何から何までそっくりなので調べてみると、やはり本家の「マーチャンダイズ・マート」をモデルに作られたそうです。

こちらは、メトラ(Metra)といって、ループとは別系統の中距離路線で、シカゴ市内の4つの駅から郊外の諸都市を結んでいます。上の写真はシカゴ・ミレニアム駅(Millennium Station)を起点に、南方面へ伸びている路線で、奇妙な面構えの2階建て電車が運行されています。

ここからは、ご存知「ウィリスタワー(Willis Tower)」(旧、シアーズタワー)の展望室(103階・412メートル)からの眺めです。今では各国に高層ビルができたため、世界では第4位の高さになりましたが、アメリカ国内では今も最も高いビルです。

霞んでいてよく分かりませんが、ビル群の向こう側がミシガン湖になります。

2009(平成21)年にできた、「ザ・レッジ(The Ledge)」という名前の全面ガラス張りの展望コーナーです。ちなみに、Ledgeというのは、岩棚という意味です。