(2008.12.14)


   

 

   

奈良の古寺というのは、京のそれと違って、構えて妍を競うこともなく、微かに大陸の佇まいを湛えつつ、往時のまま其処にある。唐招提寺についても、今さら語るべきものは何もないが、何処か草深い面影を残す西の京にあって、天平の姿を今に伝えている


……と、またまた司馬遼太郎先生を思いっきり意識した書き出しになってしまいましたが(笑)、今回は所用で関西方面へ出かけたついでに唐招提寺へ立ち寄る機会があったので、その様子をご覧いただきます。


(画像にカーソルを重ねると平城京の条理が表示されます)
ここは池越えに薬師寺を遠望する有名な撮影ポイントで、若草山の山焼きが行われる日(2009年は1月24日(土)の予定)には、右のような写真を狙って、大勢のカメラマンで大混雑します。
(C)奈良県観光連盟
近鉄・西の京駅から唐招提寺へ向かう途中の様子です。(奈良の方には申し訳ないですが)こうした土塀は「崩れていれば崩れているほど」風情があって思わずカメラを向けてしまいますが、この「物件」は写材の趣という点では、まだまだ崩れが足りません(笑)。



右の写真は山門(南大門)に掲げられている扁額で、孝謙天皇の宸筆になる勅額ですが、本物は講堂に収蔵されていて、これは複製です。
2000(平成12)年から金堂(国宝・奈良時代)の解体・修復(いわゆる「平成の大修理」)が行われてきましたが、今夏には素屋根(覆い屋)が撤去されて「天平の甍」が姿を現しました。ご覧の通り、まだ仮設フェンスに囲まれているため近づくことはできませんが、8月〜9月にかけて国宝三尊も8年ぶりに無事お戻りになり、来秋(11月)には落慶法要が営まれる予定です。

解体前は奈良時代の鴟尾(しび)が載っていた大屋根の西端には、復元された「平成の鴟尾」が新たな威容をみせていますが、素屋根が外されるのを待ちかねたように鳩がフンをして、せっかくの「平成の甍」もご覧のように白く汚れて台無しです。

この辺りは唐招提寺の本坊から御影堂へ連なる一角で、土塀に沿った小径に紅葉が彩りを添えていました。
塔頭へ 手向けし枝の 紅葉かな  管理人謹吟