(2008.3.2)


   

 

     

2007(平成19)年10月14日の鉄道記念日に、JR東日本の創立20周年記念プロジェクトとして、大宮駅の北方、さいたま市(旧大宮市)大成地区に「鉄道博物館」がオープンしました。

それまでは、秋葉原駅近くの旧万世橋駅跡地に、「交通博物館」というのがあって、1936(昭和11)年から2006(平成18)年まで、70年間にわたって多くのちびっ子や鉄道ファンに愛されました。

現在、鉄道ファンはかつてない拡がりをみせていて、「第3次鉄道ブーム」と呼ばれています。ちなみに、第1次は蒸気機関車(
SL)が全廃になる時期(昭和50年前後)、第2次は旧国鉄が消滅する時期(昭和60年前後)で、いずれも限られた人達が消えゆくものを追いかける……といった気味が強くて、あまり「市民権」を得るに至らなかったような気がします。

これに対して、第3次は、今までどちらかというとマイナーな存在だった鉄道趣味が、インターネットの普及という時代背景を得て、一気に表舞台へ飛び出してきたことと、それに乗じてテレビ、映画、出版といった多様なメディアがこれを採り上げた結果、急速にその裾野を拡げたのが大きな特徴で、それまで男性のものと思われていた鉄道ファンに、「鉄子」と呼ばれる女性のファンまで現れています。

第1次世代に属する管理人からすると、最近の盛り上がりには戸惑うことばかりですが、今や社会現象にもなった鉄道ブームを体感すべく、さっそく鉄道博物館を見学して、久しぶりに「鉄分」を補給してきましたのでご覧ください。

北海道初の鉄道である官営幌内鉄道の開業にあたり、1880(明治12)年に米国から輸入された蒸気機関車で、「弁慶号」の愛称で呼ばれています。鉄道記念物に指定されていて、旧交通博物館から移設されました。下の写真はその銘板で、ペンシルバニア州ピッツバーグ市のH・K・ポーター社(H. K. Porter & Co)の社名や、1880年の製番369号であることなどが見て取れます。ちなみに、弁慶号と同時に輸入された姉妹機(製番368号)は「義経号」といって、大阪の交通科学博物館で展示されています。

蒸気機関車の魅力の一つが、これらの走り装置が外から丸見え(!)のところにあります。「油のしみ込んだ鋼鉄の地肌の渋い輝きが……」と言いたいところですが、防錆用(?)の白ペンキで厚化粧されていてガッカリです。

鉄道博物館はJR東日本(正確には、東日本鉄道文化財団)が運営しているため、JR東日本管内で運転されていた車両が中心です。

この博物館は、JR大宮駅構内の一角という「地の利」を活かして、館内の展示線路が館外の営業線路と繋がっている(!)というのが大きな特徴です。下の写真の奥手方向にある壁の更に向こうまでレールが繋がっていて、展示車両の入れ替えが自在に行えるようになっています。

特急のヘッドマークの交換作業が再現されています。現在の特急列車はヘッドマークもLED表示が多いので、こうした風景は滅多に見られませんが、当時(東北新幹線開業前?)の上野駅では、日常的に行われていました。

冒頭に書いたとおり、鉄道博物館は旧交通博物館の後継施設ということになっていますが、展示ジャンルの限定(交通→鉄道)という部分を割り引いても、史料価値としての深みは旧交通博物館の方に軍配を上げたいと思います。

3階にあるビューデッキは、お弁当を広げながら目の前を疾走する新幹線が眺められ、ちびっ子には(大人にも?)堪えられないスポットです。

下の写真はオハ31型というわが国初の鋼製客車で、1927(昭和2)年から導入されたものです。車内は木製で、白熱灯の鈍い明かりと、木部のニスの香りをご記憶の方も多いかと思います。

下の写真はC57型という蒸気機関車で、これも旧交通博物館から移設されたものです。この135号機は、1940(昭和15)年に三菱重工業神戸造船所で落成の後、高崎機関区に新製配置されて首都圏の旅客列車を牽引、その後、1952(昭和27)年に北海道へ渡り、函館本線、根室本線、室蘭本線などで活躍、最後は岩見沢第一機関区に配属され、1975(昭和50)年12月14日、国鉄最後の蒸気機関車による定期旅客列車牽引の栄に浴した「由緒ある」機関車です。

このC57は転車台に乗っていて、毎日、11時30分と15時に汽笛を鳴らして一回転します。ご存じない方のために、念のため申し上げておきますと、テンシャダイというのは「展示のための台」(展車台)ではなく、機関車の方向転換をするための設備です。かつては日本中の機関区で普通に見られた光景ですが、今ではご覧の通り黒山の人だかりで、つくづく「昭和は遠くなりにけり……」です。

開館から4ヶ月経った今でも、館内はたくさんの見学者で賑わっていて、とくに人気の運転シュミレーターには長蛇の列でした。なかでも当館独自のSLの運転シュミレーターは、投炭の体験もできる本格的なものですが、中学生とおぼしき「鉄子」が熱心に挑戦していて、確かに「鉄(道ブーム)は来ている!」と実感しました。