(2007.9.23)


   

 

     

前回は層雲峡から摩周湖までご覧いただきました。今回は後編として、知床から阿寒湖まで(右の地図の黄色実線部分)をご覧いただきます。

それでは、川湯温泉の南側にある「硫黄山」からスタートです…。
硫黄山は標高512メートルの小高い活火山で、茶色の地肌がむき出しの山麓から山頂にかけて無数の噴気孔があり、遊歩道で噴気地帯まで入ることができます。この硫黄山の噴気に熱せられた地下水が、水蒸気とともに地表に自然湧出したのが川湯温泉の「源泉」で、最高65℃の湯の川が温泉街の中心を流れています。このため、湯量の豊富なことは言うまでもなく、また強酸性(Ph1.6〜1.9)のため循環装置がもたないこともあって、ここでは源泉かけ流しが「当たり前」(笑)です。ちなみに、酸性度が強いといわれている草津温泉(群馬県)でも、湯畑源泉部分でPh2.1です。

管理人は取材の途中で各地の温泉に立ち寄ることが多いのですが、湯の量といい質といい川湯温泉はピカイチで、湯治のための長期滞在客が多いというのも頷けます。また、これだけ素晴らしい温泉にもかかわらず、落ち着いた雰囲気と鄙びた佇まいを大切にしているのが、とても好感がもてました。

斜里から国道334号(通称、知床国道)をウトロへ向かう途中にある「オシンコシンの滝」です。落差80メートル、滝幅30メートルとさほど大きな滝ではありませんが、紺碧のオホーツク海を借景に岩壁を滑り落ちる様子は、知床の玄関口を飾るに相応しいダイナミックな景観です。ちなみに、オシンコシンとは、アイヌ語の「オ・シュンク・ウシ・イ」が訛ったもので、「川尻にエゾ松が群生するところ」という意味だそうです。

知床の観光拠点は、オホーツク海側のウトロと、根室海峡側の羅臼(らうす)ですが、観光スポットはウトロ側に集中しています。知床観光船もウトロ港を拠点に7社12隻が運航していて、管理人が乗船した道東観光開発のオーロラ号(490トン)以外は、すべて右の写真のような小型船(クルーザー)です。

小型船は海岸近くを航行するので、奇岩や野生動物を間近に見ることができますが、文字通り「波濤を越えて」ゆくので、船酔いしやすい人やゆっくり写真を撮りたい人には大型船がお奨めです。なお、オーロラ号も冬場には母港の網走で流氷見物の観光砕氷船として活躍しています。

知床半島は日本に残された最後の原生環境といわれ、2005年7月には世界自然遺産に登録されました。半島の大部分は、いまも陸路でのアプローチが不可能で、海上から遊覧船でその一端を窺うという格好になります。

200メートルを超す断崖には、オホーツク海の荒波や流氷に削られた奇岩や海蝕洞などが連続し、まさに「地の涯て」(アイヌ語のシルエトク)といった趣があります。

これは「カムイワッカの滝」です。背後にある知床硫黄山(1,563メートル)を源流とする湯の川で、いくつもの滝が連続し、最後は写真のようにオホーツク海へ直接落下しています。また、途中の滝壺は、野趣溢れる天然の露天風呂として人気を集めています。

知床岬の突端まで向かう遊覧船(1日1便・所要3時間45分)以外は、途中のカムイワッカの滝で折り返して、ウトロ港へ戻ります(所要1時間30分)。

左奥の崖上に小さく見えているのがウトロ灯台です。

ちょっと日陰になって見にくいですが、正面の崖の途中から滝が落ちています。「フレペの滝」といって、後ほど、この崖の上から撮った写真をご覧いただきます。

ウトロ港近くにある「プユニ岬」です。崖上に見える橋から撮ったのが下の写真で、ウトロ港が一望できます。ここは夕陽の名所で、冬は流氷の名所でもあります。ちょうど、私たちを下ろした遊覧船が、次便の観光客を乗せて出港してゆきました。

こちらが崖上の展望台から見たフレペの滝です。入り江の奥(写真右手の方向)の断崖の途中から流れ出ています。これは知床山系に降った雨や雪が伏流水となって湧き出し、100メートルの断崖をオホーツク海めがけて流れ落ちているものです。河川の流水ではないので流量はありませんが、はらはらと流れ落ちる様子から「乙女の涙」という別名がついています。

フレペというのはアイヌ語で「赤い水」という意味で、夕陽に染まった赤い滝からその名がついたといわれています。崖の上の灯台は先ほど観光船からの写真でご覧いただいたウトロ灯台、崖の向こうに頭を覗かせているのは、これも先ほどカムイワッカの滝の写真でご覧いただいた知床硫黄山です。ここは今回の道東取材のなかで、一番印象に残る絶景でした。

フレペの滝からさらに奥の知床五湖へ向かいます。

車が入れるのは知床五湖までで、更に奥のカムイワッカの滝へは、環境保護のため専用のシャトルバスのみ乗り入れが認められています。

知床五湖では、知床連山や原生林を水面に映す素晴らしい風景をみることができます。一周約3キロの探勝路(木道)が整備されていますが、周辺はヒグマの密生地のため、この日も3湖から先は立ち入りが禁止されていました。

幸いヒグマには遭遇しませんでしたが、エゾシカは至るところでフツーに(笑)見かけました。近年は爆発的に増殖していて、知床半島だけでも1万頭以上生息しているといわれ、食害による農林業への被害や、列車・自動車との衝突事故など、地元では深刻な社会問題になっているそうです。下左の写真は知床五湖へ向かう国道の脇で食事中の一家(?)、下右の写真はフレペの滝へ向かう草原で見かけた一頭です。先方は全然警戒心が無いのですが、こちらはあまり見慣れていないので、このようにバッタリ出くわすとギョッとします。

斜里町の一帯にはカラマツの防風林に囲まれた広大な畑が広がっています。澄み切った青空と斜里岳の端正な稜線が印象的でした。緑の畑(下の写真)はこのあたりの特産の甜菜(ビート)で、別名「砂糖大根」とも呼ばれています。

ここから阿寒湖周辺の写真になります。湖畔に散策路があって早朝の清々しい空気を満喫できます。

有名なマリモは、沖合いのチュウルイ島にある「観察センター」に展示されていて(下の写真)、観光船(右の写真)で渡ります。
最後に雌阿寒岳の麓にある「オンネトー」に立ち寄りました。ここは、湖を取り囲む原生林と雌阿寒岳の眺望が見所で、とくに紅葉の頃が見事のようですが、この日は初日から続いた好天が尽きて、雲が拡がってきたため、陰影に乏しい絵になってしまいました。


(足寄国道)


前回・今回の2回にわたって道東紀行を特集させていただきました。長々ご覧いただき有難うございました。管理人は久しぶりの北海道旅行を堪能しましたが、目の前の絶景に気圧されて、こなれていない写真が多く、「絶景の道東」と銘打ちながら、「タイトル倒れ」となった部分はご容赦願います。次回は時季を変えて、是非再訪したいと思っています。


「絶景の道東(前編)」はこちらからどうぞ →


【謹告】
2007年8月12日号「裏磐梯高原」でご覧いただきました「月明かりの桧原湖」が、月刊「デジタルフォト」の月例コンテストに入選し、同誌10月号 (9月20日発売) に掲載されましたので、謹んでご報告申し上げます。