(2007.2.25)


   

 

     

遠く那須連山を源流とする那珂川は、茨城県の大洗で太平洋に注ぐ全長150kmの関東屈指の大河ですが、下流域の茨城県内では大規模な河岸段丘を随所に形成していて、県都の水戸も右岸(南側)に沿って東西に伸びる馬の背状の段丘上に展開した市街地です。

段丘の反対側(南側)は古代海進の名残りである千波湖に面し、三方を水面に囲まれた天然の要害ともいえる段丘の突端に築かれた城郭が後の水戸城で、今回ご覧いただく偕楽園もその一角にあります。

偕楽園の話をするのに、那須連山から書き出してどうしたの、と心配された方もおられると思いますが、今回は「崖」が舞台になるため、こうした位置関係を先ず鳥瞰しておいた方が、話が早いと思い(久しぶりに)大上段に振り被ってみました。
ちなみに、「水戸」という地名は、海水や湖水の出入り口を意味する「水の戸」に由来しているといわれています。……ということで、ウンチクが暴走しないうちに、先へ進ませていただきます。

さて、偕楽園では毎年この時期になると「梅まつり」が開催され、今年も2月20日からスタートしました。梅花祭の類は全国にありますが、偕楽園のは明治29年に上野・水戸間に鉄道が開通したのを機にスタートしたもので、今年で何と第111回(!)という老舗中の老舗です。
約4万坪の園内に3千本の梅が植えられていますが、今回はとくに「南崖(なんがい)」と呼ばれる南側の斜面を彩る紅梅白梅をご覧いただきます。「崖」といってもちゃんと遊歩道が整備されていて、お年寄りや子供でも安心して散策できるようになっています。

偕楽園のある段丘の南側は比高20メートル程の崖になっていて、千波湖へ向かって落ち込んでいます。現在、千波湖はほとんど埋め立てられて、往時の面影はありませんが、かつては南崖の裾までさざ波が打ち寄せていたと思われます。

梅林の本体は段丘上にあって、本格的な開花は3月に入ってからになりますが、南崖は北風が当たらず陽あたりが良いため、毎年2月に入ると一足先に花を付け始めます。また、梅林の本体は、平地に整然と植栽された梅畑といった趣のため、やや変化に欠けますが、南崖のほうは、頭上に覆い被さるように咲く花を青空をバックに仰ぎ見るような格好になるため、構図が立体的で絵になります。

正岡子規の句碑があります。

崖急に 梅ことごとく 斜なり

子規21歳の作といわれています。俳句のことはよく分かりませんが、何か「そのまんま」のような気がしないでも……。
南崖の裾をなぞるようにJR常磐線が通っていて、梅まつり期間中の毎週末には、「偕楽園臨時駅」(ただし、下り線のみ)が開設され、特急を含め全ての列車が停車します。

黄門様ご一行も観光PRのためにお出ましです。両端のキレイなお姉さん方は「水戸の梅大使」で、全部で10人の「大使」が園内で記念撮影に応じてくださいます。