(2005.8.28)


   

 

  

  


十和田湖は四季折々の装いで観光客を魅了してやまない屈指の景勝地ですが、今回はその十和田湖から流れ出る唯一の河川である奥入瀬川を中心にご覧いただきます。

奥入瀬川は十和田湖の東端にある子ノ口(ねのくち)から流出し、十和田市を経て八戸と三沢の間で太平洋に注ぐ全長63キロの短い河川ですが、このうち子ノ口から蔦川との合流部である焼山(やけやま)までの14キロの区間をとくに「奥入瀬渓流」と呼び、国の特別名勝・天然記念物に指定されています。
十和田の魅力を広く世に紹介した明治の紀行作家の大町桂月が、「住まば日の本、遊ばば十和田、歩けや奥入瀬三里半」とうたっている通り、奥入瀬の魅力を堪能するためには渓流沿いの遊歩道を歩くにかぎります。

焼山→子ノ口の全行程を歩くと5時間かかるので、時間がない場合や、ハイライト区間を効率よく見たい場合は、途中の石ヶ戸(いしげど)→子ノ口(8.9キロ・3時間)だけでも十分楽しめます。ちなみに、管理人はこの区間を写真を撮りながら3.5時間で歩きましたが、幸いお天気に恵まれ、マイナスイオンをたっぷり浴びながら、至福のひとときを満喫することができました。

もっと端折りたいという忙しい人には、石ヶ戸→銚子大滝(7.3キロ・2時間強)、更に端折りたいという我が儘な人には、石ヶ戸→雲井の滝(2.6キロ・1時間)というのもあります。どうしても歩きたくないという横着な人には、渓流に並行する国道102号を走るJRバスの車窓から鑑賞するという手もありますが……。

渓流といっても遊歩道が完備されているうえに、緩傾斜(全区間14キロで200メートルの落差しかない)のため、子供やお年寄りでも大丈夫です。なお、歩く方向としては、できるだけ川上に向かって、すなわち子ノ口に向かって、遡行する方がより景観を楽しめます。

下の写真は発荷峠(はっかとうげ)展望台からみた十和田湖です。十和田カルデラの外輪山を秋田県側から国道103号線で上り詰めた場所で、標高631メートル・湖面まで250メートルあって、遠く八甲田山まで望めます。

十和田湖畔の観光基地になっている休屋の周辺です。観光船の発着場や土産物店や旅館などが集中しています。有名な「乙女の像」まで歩いて10分ほどです。

静かに湖水をたたえる十和田湖に対し、奥入瀬は清冽な渓流が瀬となり淵となって林間を下る躍動美を楽しむことができます。

奥入瀬川は一年を通してほとんど流量が変わらないため、渓流が洗う大小の岩々にはツツジやカエデの若木が根付き、飛沫を浴びる倒木は緑鮮やかな苔に覆われています。また、渓流と車道・遊歩道がほぼ同じ高さにあるため、山腹から渓谷を見下ろすのと違って、とても親しみやすい景観で、渓流の繊細な美しさを一層引き立てています。

下の写真は「阿修羅の流れ」というところで、苔むした岩を洗い倒木の間を白く泡立ちながら奔流となって下る様子は、奥入瀬渓流のなかでも絶景のひとつといわれています。

渓流には両岸の岩壁から大小の滝が落ちていて、それぞれに趣ある名前がつけられています。下の写真は雲井の滝といって、奥入瀬のなかではいちばん豪快な滝です。木立の奥から25メートルの落差を2段になって落ちています。

下の滝はいちばん上流にある銚子大滝です。奥入瀬川の本流に懸かる唯一の滝で、落差7メートル、幅20メートルあります。かつて十和田湖に魚が棲息しなかったのは、この滝が遡上を妨げていたためで、別名「魚止めの滝」と呼ばれています。この滝が見えてくると渓流散策もそろそろ終盤です。

 

 

次回は北東北紀行の後編として、角館(秋田)の武家屋敷をご紹介しますので、お立ち寄りのうえご笑覧ください。