(2005.5.22)


   

 

  

JR奈良駅から若草山を正面に仰ぎながら三条通をどんどん上ってゆくと、やがて景色が開けて、左手に五重塔、右手に猿沢池が姿を現す。この辺り一帯は古くから興福寺の境内で、その穏やかで広闊な景観は、奈良の奈良たる所以として、天平の昔から少しも変わらない姿でそこに在る。

…と、何やら司馬遼太郎先生をずいぶんと意識した(笑)書き出しになってしまいましたが、その三条通をさらに進んでゆくと、正面に朱塗りの鳥居が見えてきます。これが一の鳥居(重文)で、ここから先が春日大社の神域になります。

春日大社は平城京守護のため創建された社で、藤原氏の氏神として大いに栄えたが、平安中期からは興福寺(こちらも藤原氏の氏寺)が管理、明治の廃仏毀釈により神社として確立したと縁起にあります。

現在は背後の春日山原生林とともにユネスコの世界遺産に登録されています。ちなみに、奈良の社寺・史跡では東大寺・唐招提寺・薬師寺・元興寺・興福寺・法隆寺・法起寺・平城宮跡が世界遺産に登録されています。

例によって前置きが長くなってしまい、「春日大社がどうしたというんだ」とお叱りをうけそうですが、今回はその春日大社にある「砂ずりの藤」というのを取材してきましたのでご覧いただこうというわけです。

春日大社の神紋が下がり藤(右図ご参照)というだけあって、随所で藤の花を目にしますが、いちばん見事なのが本殿に向かって左側にある「砂ずりの藤」です。この藤は樹齢7百年以上と言われていて、花房が地面に触れるほど立派なことから、この名前がついています。

下の写真は境内の神苑というところにある「藤の園」で撮影したものです。ここは回遊式の庭園になっていて、その中に藤をはじめ各種の「万葉植物」(←って何だ?)が植えられていて、四季折々の花を楽しめる趣向になっています。

もう一つの藤は、埼玉県春日部市の牛島というところの藤です。ここは、もとは真言宗の連花院という寺院だったそうですが、現在は実質個人の方が運営されている藤園で、藤の時期だけ(今年は4/16〜5/9)一般公開されています。

この藤は樹齢が1200年(!)という年代物で、国の特別天然記念物に指定されています。寒肥に酒粕を施すなど丹精の甲斐あって、見事な花房や花つきはとても1200歳の老木とは思えません。

こうして、先祖代々手塩にかけてこられた成果を目の当たりにすると、とても「入園料(1,000円)が高い」などと文句は言えない気持ちになります。なお、周辺には駐車場が少ないので、電車の利用(その名も「藤の牛島駅」(東武野田線)から徒歩10分)がお薦めです。