(2004.10.17)


   

 

 

昨年10月、志賀草津ルート(国道292号線)の渋峠・芳ヶ平・白根山を中心に取材し、N's TOWNでも紹介させていただきました。抜けるような秋天をバックに拡がるスケールの大きな景観と、ナナカマドやダケカンバに彩られた高原の秋に眼を瞠りましたが、時間的な制約もあって心ゆくまで撮り尽くせなかったため、私かに再訪を期していたところです。


このあたりは上信越国境にあたり、標高が2,000メートルを越すため、9月下旬から紅葉が始まります。しかし、今年は週末を狙ったようにやってくる台風と秋の長雨に祟られてなかなか取材の機会に恵まれず、紅葉情報をにらみながら気を揉むばかりの毎日でしたが、関東南部を直撃した台風22号が駆け抜けた翌日、台風一過の晴天を当て込んでついに「出動を決心」(?)しました。


右の地図の赤いピンを打ってある所が今回の撮影地です。
が(!)、麓の草津温泉(標高1,200メートル)まで来ても10メートル先が見えない霧雨。前夜の天気予報では「スッキリと晴れるでしょう」と聞いていただけに、すっかり当てが外れてしまいました。こういうときの落胆は小さくないのですが、自然を相手にしている以上は仕方がないと思い直して、ともかく渋峠(標高2,152メートル)まで進出して天候の回復を期待することにしました。
視界の悪い志賀草津ルートをそろりそろりと上ってゆくと、標高1,800メートル付近から徐々に明るくなって、霧の切れ目から白根山が顔を覗かせてきました。尾根筋まで上がってみると、西側の長野方面はスッキリと晴れているのに、東側の草津方面は台風が運んできたと思われる湿った空気が雲霧となって谷を埋め尽くしています。

それでも、何とかカメラを出せる状況になったので気を取り直して撮影を開始。下の写真が最初のポイントで、志賀草津ルートから万座温泉方面への道路が分岐する箇所を見下ろしたものです。昨年はこのポイントの撮影場所が分からず撮り残していた所です。写真の奥へ向かう道路が草津方面、右へ分岐して下って行く道路が万座温泉方面です。吹き上げてくる霧が途切れて薄日が射す一瞬を待ちました。
次のポイントは山田峠(標高2,048メートル)周辺です。ここは渋峠から草津方面へ3キロほど下ったところで、横手山と白根山の鞍部にあたり、正面には横手山を仰ぎ、右手は草津・左手は湯田中へ至る谷が両側に落ちていて、背後には白根山を望む、という絶景ポイントです。それだけに風当たりも強く、冬季には4〜5メートルの積雪になるそうです。

下の写真は草津方面を撮ったもので、正面の谷は大沢川の源流にあたります。大沢川は芳ヶ平や大平湿原などの湿原を潤して、長野原で吾妻川に注ぎます。また、すぐ右手は白根山の山腹になるため、火山性の硫化水素ガスの影響で立ち枯れした木々も見られます。
下の写真は湯田中方面を撮ったもので、斜面を覆う熊笹の緑と、ナナカマドの赤やダケカンバの黄色が(自分で言うのも何ですが)絶妙のコントラストを見せています。草津方面からの山霧が尾根を乗り越えて間断なく流れ込み視界を遮ります。
下の写真は横手山方面を撮ったもので、頂上直下の急峻な山腹にへばりついているのが志賀草津ルートです。この辺りで標高2,100メートル位あります。それにしても、よくこんな険しいところに道路を通したものと感心します。


ということで、ここまでの写真は昨年の撮り残し、というか「おさらい」としてご覧いただきました。今年は更に渋峠を越えて長野側まで少し足を伸ばしたので、これから後の写真が本題の「志賀高原」の写真ということになります。
渋峠は群馬と長野の県境になっていて、県境をまたいで渋峠ホテルが建っています。余談ですが、こういう場合は固定資産税や地方税はどちらの県に納めるのか…、他人事ながら気になるところです。
長野側は群馬側に較べて谷が深くて急なため、渋峠を過ぎて横手山を交わすまでの間は、岩壁に張りつくようなルートで、落石除けや雪崩除けが連続します。それだけに、この区間から眺める景観は抜群で、深い谷を隔てた対岸の急斜面を埋めるナナカマドの群落は見事という他ありません。
渋峠から急坂を1.5キロほど下ったところに横手山ドライブインがあり、ここから「動く歩道」とリフトを乗り継いで横手山頂(標高2,305メートル)に登ることができます。好天に恵まれれば富士山から佐渡島まで(?!)一望できるそうですが、この日は風ばかり強くて視程はいまひとつでした。
山頂には横手山頂ヒュッテがあり、自家製のパンが有名とかで、レストランはパンを目当ての人達でごった返していました。ま、パンはともかくとして、冬の樹氷や夏のニッコウキスゲなど、一年を通じて写材の豊富なところで、今回は駆け足になりましたが、いずれ腰を据えて撮ってみたいスポットのひとつです。
下の写真はリフトの頂上駅付近から撮ったもので、中央の雲がかかった山が笠ヶ岳、眼下正面奥が熊の湯温泉、その先が蓮池・湯田中方面になります。今回は時間の関係で横手山で取材打ち止めとなりましたが、次回(来年?)は丸池・蓮池から奥志賀方面を中心にじっくり撮ってみたいと思っています。