(2004.9.26)


   

 

 

伊勢志摩国立公園は、瀬戸内海国立公園や西海国立公園などとともに、数少ない「海の国立公園」として昭和21年に指定を受け、区域は2市8町の5万5千ヘクタール(他に、海域1万9千ヘクタール)に及びます。とくに志摩半島の海岸は、陸地が長い間に沈降したリアス式海岸で、岬や入り江の多い複雑な地形が独特の景観を見せています。

なかでも志摩半島の南部、大王町や志摩町の一帯は、波静かな英虞湾と黒潮洗う外海を2つながらに楽しむことができる潮の香たっぷりの観光スポットで、北部の伊勢市や鳥羽市とはひと味違った趣があります。

大王崎は志摩半島の東南に突き出た部分で、ここが熊野灘と遠州灘の境界になっています。付近には険礁・暗岩が散在していて、複雑な海流と相俟って昔から海の難所として恐れられていた場所のようです。下の写真は岩場に砕ける大浪を撮ったもので、原画を少しレタッチして絵画風にしてみました。

岬の突端の海岸段丘の上に22.5メートルの大王埼灯台があります。昭和2年10月の点灯で、映画「喜びも悲しみも幾年月」(木下恵介監督・昭和32年・松竹)のロケにも使われました。余談ながら、地名は大王「崎」と書きますが、なぜか灯台は大王「埼」と書きます。ちなみに、犬吠崎も塩屋崎も観音崎も御前崎も灯台はすべて「埼」と書きます。(←久し振りに蘊蓄を垂れてみました) なお、この灯台は上へ登れます。(入場料=大人150円)
下の写真は岩礁に寄せる波濤を狙ったもので、僭越ながら、東山魁夷画伯の手になる唐招提寺御影堂障壁画の「濤声」を強く意識しています(笑)。
灯台を望む高台に公園があって、写真やスケッチの絶好のポイントになっています。上の2枚の写真もその公園から撮影しました。大王町は海と石垣と漁港の風景が素晴らしい、見どころ・描きどころ・撮りどころが満載のところで、地元でも「絵描きの町・大王」をキャッチフレーズにしていて、この日もたくさんの「絵描きさん」が絵筆を振るっていました。
志摩半島の懐深く入り込んだ英虞湾は、複雑な海岸線と大小の島々が一幅の名画ともいうべき景観をつくりだしていて、伊勢志摩国立公園の白眉ともいえます。鏡のように穏やかな海面には真珠養殖のイカダが並び、荒々しい外海とは絶妙のコントラストをみせています。
上の写真は英虞湾の最奥部(東端)にある登茂山(ともやま)展望台から撮ったもので、これから晩秋にかけて夕陽の名所としてカメラマンで賑わうポイントです。また、右の写真は伊勢志摩国立公園協会のHPから無断で拝借した航空写真で、リアス式海岸独特の岬や入り江の多い複雑な地形がよく分かります。赤い丸で囲ったところから撮ったのが下の写真で、ここには志摩丸山橋という美しい斜張橋が架かっています。ちなみに、これら岬と入り江を突っ切るように通じている国道260号線は「日本の道百選」に選ばれています。
伊勢神宮にも参詣しました。写真の建物は内宮神楽殿で、銅板葺・入母屋造の見事な造形美に敬意を表して1枚謹写。ここでは御神札(おふだ)や御守の授与、御神楽などの御祈祷が行われています。
内宮の門前には江戸時代の街並みを復元した「おはらい通り」や「おかげ横町」という一角があって、飲食や買い物の人たちで大変な賑わいでした。