(2003.10.12)


 

   

草津白根山

 

白根山は群馬・長野両県にまたがる標高2,160mの活火山で、いまも山腹のいたるところで活発な噴気が見られます。白根山という名前の山は群馬県と栃木県の県境にもあって、こちらを「日光白根(2,577m)」、前者を「草津白根」と呼んで区別しています。ちなみに、両白根とも日本百名山に選ばれた名峰です。今回は草津志賀高原ルートを足場に草津白根周辺へ進出して紅葉を取材しましたのでご覧ください。

草津志賀高原ルートは、群馬県の草津温泉から志賀高原を抜け、長野県の湯田中・渋温泉郷に至る42km・約1時間の山岳ドライブウェイで、かつては有料道路でしたが現在は国道292号線として無料開放されています。県境の渋峠(標高2,152m)から少し草津寄りにこのルートの最高地点(標高2,172m)があって、ここは日本の国道の最高地点にもなっています。

ルートは白根山と横手山の尾根道を辿るため、左右の車窓には関東屈指の絶景がひろがり、4輪ドライバーにも2輪ライダーにも人気の高い路線ですが、冬の間は日本海からの寒気がもろにぶつかって除雪が追いつかないため、毎年11月中旬から4月下旬まで閉鎖されます。

  

 

例によって、写真をクリックすると大きい画像が見られます。

 

 

この日(10月5日)は中腹(殺生河原)付近では、東の空を赤く染めて昇る朝日を雲間に垣間見ることができましたが、白根から渋峠へ上るにつれて濃霧がひどくなり、雲の中を行くといった感じで徐行を余儀なくされるほどでした。

渋峠に着いた時は雪とも霜ともつかないものが舞って樹々は霧氷をまとっていましたが、陽が昇るにつれて気温が徐々に上昇し、9時過ぎになってそれまで視界を遮っていた霧がサッと晴れて、朝露に輝くクマザサの向こうに紺碧の秋天を背にした草津白根山が姿を現し、自然の巧まざる演出にしばし声を失いました。

 
渋峠からは眼下に芳ヶ平が望めます。ここは白根山と横手山の裏側に拡がる約10haの高層湿原で、尾瀬と同じように太古の火山(白根山)活動のなかで川(大沢川源流)が堰き止められて形成されたようです。アップの写真でご覧いただくと分かりますが、湿原の中にいくつかの池塘が点在して水面に青空を映しています。湿原のほぼ中央には芳ヶ平ヒュッテがあって、赤い屋根が点景として彩りを添えています。緑の草原はクマザサで、その中に赤く点在するのはナナカマド、湿原に黄色く色づいた木々はダケカンバです。山懐に抱かれた箱庭のような地形で、クマザサを牧草に置き換えるとスイスの景観にも似ているような……。
芳ヶ平を見下ろす展望台(=日本の国道最高地点)には未明から(前夜から?)下の写真のように多くのカメラマンが詰めかけて、「立錐の余地」ならぬ「立脚(三脚)の余地」がありません。(なお、この写真は拡大画像はありません)

渋峠から白根山へ下りてくる途中にある山田峠(標高2,048m)付近の風景です。正面のひときわ高い山が横手山(標高2,305m)で、道路は頂上直下を巻きながら湯田中方面へ下っていきます。この辺りにはカエデやモミジといった高木はなく、ナナカマドなどの低木が緑の絨毯の中に点在して独特の景観を作り出しています。

白根山の駐車場に車を置いて芳ヶ平へ向かいます。芳ヶ平へは渋峠・白根山・草津から3つのルートが通じていますが、何れも徒歩で入るしかありません(この点も尾瀬と同じです)。芳ヶ平の標高が1,835mのため、渋峠からは330m、白根山駐車場からは180mの標高差を上り下りしなければならないので、ふだん運動不足の身体にはちょっと堪えます。

白根山の荒涼とした山肌を見上げながら1時間ほど行くと、ナナカマドの群落がひろがる向こうに芳ヶ平ヒュッテの赤い屋根が見えてきます。煙突からはストーブの青白い煙がかすかに立ち昇っていてとてもいい感じ…。仰ぎ見ると、さっきまで写真を撮っていた渋峠が間近に聳えています。

池塘を巡る木道が整備されていて散策することが出来ます。湿原一帯には早くも晩秋の気配が色濃く漂っていました。

芳ヶ平から戻って白根山頂の湯釜へ立ち寄りました。エメラルド色の湖水をたたえた火口湖で、ここは行かれた方も多いと思います。この日も展望台へ登る道はすれ違いができないくらい観光客で大混雑でした。芳ヶ平はこの湯釜の向こう側(裏側)に位置することになります。機会があればぜひ足を伸ばされてください。