(2003.-5.18)


シャクナゲ咲く室生寺

 

関西の方ならご存じと思うが、奈良盆地を淡々と駆けてきた近鉄大阪線は、桜井を過ぎた途端に山中へ分け入る。奈良県と三重県を隔てる山塊の始まりである。なかでも、榛原から県境を越えて名張に至る区間は、さっきまでの長閑な大和路が嘘のような、険しい山路をレールがうねる。この辺りは太古の昔に火山の噴火で形づくられた複雑な地形で、今回ご紹介する室生寺は、こうした室生火山群の急峻な一峰に伽藍を配した古刹である。



室生川に架かる朱塗りの太鼓橋
室生寺の開基はハッキリしないが、平安期に至り弘法大師が入山して真言密教の道場としての堂塔が整備され、江戸時代には女人禁制の高野山に対し、女性に門戸を開放したことから、「女人高野」と呼ばれるようになった、とある。有名な五重塔をはじめ、本堂、金堂、ご本尊の釈迦如来立像、などの国宝・重文が境内を埋め尽くし、圧巻と言うほかない。



例によって、写真をクリックすると大きい画像が見られます。

清らかな室生川に沿った小径を境内へと向かう。山紫水明の地に四季折々の装いを見せる室生寺だが、なかでも4月〜5月にかけては、シャクナゲがいたるところに咲き乱れて、新緑をバックにピンクの花が匂い立つ。
とくにゴールデンウイークの頃は、近隣の長谷寺のボタンも見頃を迎え、両寺を周遊する団体客で大変な賑わいを見せる。  
金堂へ登る鎧坂。坂の両側には一面のシャクナゲ…、の予定だったが、今年は少し開花が早かったようで、この日は花より人の方が多かった。
本堂を取り囲むカエデの大木。緑の木漏れ日が眩しい。若葉を透過してくる新緑の透明感というのは何回トライしても上手く撮れない。眼で見た印象が強いだけに、写真になったときの落胆が大きく、今回もまた「落胆の1枚」となった。
有名な五重塔。女人高野に相応しい小体(16.1メートル)な塔だが、室生寺山中で最古の建造物。平成10年9月の台風7号による倒木で大きな損害を蒙ったが、政府・文化庁の支援も得て、平成12年10月に無事修復が完了した。

なお、余談ながら、同台風では管理人の実家(奈良県)も納屋が全壊する被害を蒙ったが、翌年に無事復旧した。ただし、こちらは「政府・文化庁の支援」なし(笑)