(2003.-4.27)


甲斐・桃源郷

 

甲府盆地は、埼玉県境の甲武信(こぶし)岳を源流として塩山方面から南西に流れる笛吹川と、南アルプスの甲斐駒ケ岳を源流として韮崎方面から南北に流れる釜無川により形つくられた複合扇状地のため、盆地とはいうものの通常のそれとは景観を異にします。

(右の画像は地球観測衛星「ふよう」の画像を3D処理したものでNASDAから拝借しました)

中央線は笹子トンネルを抜けると甲斐の国に入りますが、勝沼を出た列車が大きく左にカーブしながら塩山(えんざん)・石和(いさわ)から甲府へ下って行くあたり(中央高速では勝沼ICから一宮御坂ICへ下っていくあたり)、左手車窓には南面に向かって緩やかな傾斜を描く甲府盆地が拡がり、とくにこの時期には桃の花がピンクの絨毯となって山肌を埋めつくし、桃源郷さながらの風景が展開します。

ちなみに、笛吹川と釜無川は甲府盆地南端の鰍沢(かじかざわ)で合流し、富士川となって70キロを一気に下り駿河湾に注ぎます。余談ながら、この富士川は本州を二分する糸魚川静岡構造線(いわゆるフォッサマグマ)に沿っていて、球磨川・最上川と並ぶ日本三大急流の一つに数えられています。

また、更に余談ながら、「鰍沢」という趣のある地名は、古典落語の題名にもなっていて、身延山参詣の帰途、雪の夜道に迷った旅人が山中の一軒家に宿を乞うたところ、所持金目当てに毒を盛られ、這々の体で逃げ出して、鰍沢から富士川を流れる筏に跳び降りて難を逃れる、という圓生の十八番……、

ですが、寄り道ばかりしていてもきりがないので、余談はこれくらいにして本題に進みます。



例によって、写真をクリックすると大きい画像が見られます。

桃の木というのは20〜25年は収穫できるそうで、この木で10年選手だそうです。込み入った枝振りに剪定の苦労が偲ばれます。
奥の道路の勾配でわかると思いますが、全体がこんな感じの傾斜地です。よく分かりませんが、この傾き加減が果樹園の立地に何か関係しているのかもしれません。  
枝を横へ横へと張らせるため、この枝を支えるため上から吊ったり下から支えたり、寄せたり上げたり(……これは失敬)、大変な手間がかかっています。
作業中の農家の方にお話を伺いました。それによれば、良い桃を収穫するためには摘花が必要、一つの枝に2〜3個の桃を結実させる、上を向いている花は落果しやすいので下を向いている花を残す、摘花した花から花粉を採取して受粉させる、何れも面倒な手作業のため最近の若い者(もん)は嫌がってやらない、お天気との競争で忙しくて花見どころではない、といいながら、丁寧に説明して下さいました。また、どの桃畑も撮影のための立ち入りを快く応じていただきました。皆さん今年の秋は「御坂の桃」をお召し上がりください。(笑)

右上の写真は摘花後の枝、右下の写真は受粉作業の様子です。(この2枚は拡大写真はありません)
「花鳥山」という高台から見下ろしたところです。桃の生産量が日本一というのも頷ける眺めです。
あいにくの曇天のため遠景がいまいちハッキリしませんが、遠くの山肌も一面の桃畑です。
あちこちに菜の花が植えられていて、ピンクの桃畑に春らしいアクセントを添えています。
御坂峠へ向かう途中で満開の山桜を見つけました。関東の桜は4月の第1週で散ってしまいましたが、この辺りは標高があるため名残の桜を楽しめました。背後の山影は御坂山塊で、その向こうは河口湖になります。今回は桃花の特集でしたが、「お口直し」に1枚、桜花をご覧いただきました。

  

このページの壁紙は [桜ガーデン] さんから拝借しました。