(2002.-7.14)

写 真 館

アジサイ電車


箱根の玄関口である箱根湯本から強羅(ごうら)まで赤い登山電車に揺られて登った方も多いかと思いますが、今回はこの登山電車の沿線に咲き乱れるアジサイをご紹介します。



強羅から80/1000を下ってくる電車
箱根登山鉄道は小田原から箱根湯本を経て早川渓谷を遡り強羅に至る路線で、全長約15キロをかけて標高差約500メートルを登り詰めるため、平均勾配が1000分の33(1キロ進むうちに33メートル登る)、最急勾配は1000分の80というわが国唯一の本格的山岳鉄道です。80/1000といってもピンとこないと思いますが、3両編成の場合で先頭と最後尾では約3.5メートルもの高低差を生じることになります。

アジサイは沿線のあちこちに見られます(というか、植栽されています)が、なかでも大平台駅と宮ノ下駅の間がとくに見事です。シーズン中は要所要所でライトアップされ、これを鑑賞するためのアジサイ電車が夜間に臨時運行されます(今年は6月15日〜7月14日)。アジサイ電車についての詳細は[こちら=箱根登山鉄道のHP]をご覧ください。



大平台は谷間に開けた緩斜面で一帯は温泉旅館や保養所を中心とした集落になっていて、この斜面いっぱいに雄大な3段スイッチバック(アルファベットのZを裏返した形)が配置されています。アジサイは大平台集落のいたるところに植栽されていますが、なかでもスイッチバックの折り返し場所(上大平台信号所)と大平台隧道入口の間がとくに見事です。
アジサイの花を揺らして電車が登ってゆきます。モーターの音が聞こえません? 今回の管理人イチオシです。 
大平台隧道を抜けて宮ノ下駅へ至る途中に仙人台信号所(行き違い設備)があり、ここにも見事なアジサイの群落が見られます。大平台駅から宮ノ下駅にかけては崖っぷちを巻くように線路が敷設されていて、半径30メートルという遊園地の汽車顔負けの急カーブが右に左に連続し、鉄道ファンには「こたえられない…」区間です。
宮ノ下駅は構内にもアジサイが群生していてホームから手軽に撮影できます。現在、箱根登山鉄道には5車種21両が在籍していますが、写真のモハ2型は昭和32年製ながら今も元気に活躍中の車両で、根強い人気を集めています。

一方、上の車両(2000系)は平成元年製で、姉妹鉄道のスイス・レーティッシェ鉄道(
Rhatische Bahn)にちなんでサン・モリッツ号の愛称がつけられています。
地元の人も車窓のアジサイにうっとり。早朝の下り電車なので車内も閑散。写真は仙人台信号所付近を走行中の車内(モハ1型)。

右の写真はアジサイとは関係ありませんが、箱根登山鉄道を特集するうえでどうしても外せないカットなので、「おまけ」として掲出します。

箱根の山は新旧2つの外輪山に囲まれていて、新旧外輪山の間には早川が深い渓谷を刻んでいます。麓の箱根湯本は旧外輪山、終点の強羅は新外輪山に位置するため、湯本から強羅へ向かうにはどこかでこの渓谷を跨ぐ必要があり、箱根登山鉄道の建設でも最も難航を極めました。

電車は塔ノ沢駅と大平台駅の間にある早川橋梁(通称「出山(でやま)の鉄橋」)で幅60メートル・深さ43メートルの渓谷を渡ります。現存するわが国最古の鉄橋(明治17年に鉄道院・天竜川橋梁の一部として建造)として、平成11年に国の有形文化財に指定されました。(←コメントが長〜ぃ!!)